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自分の部屋なのに圧倒的アウェー感


 女神様と一緒に暮らす。


 そんな未来も、あったのかもしれない。


 ……でもッ!!


「そう? 残念ね」


 ――私は頑張った!!


 この平穏を侵されるわけにはいかぬと、踏ん張った!! 結果!!


 ヨルとリンゼちゃんという最凶タッグの要求を見事突っぱねる事に成功したのだッ!!!


「……良くやった、人間」


「……ソフィアです」


 ついでにシンとちょっと仲良くなった。


 同じ戦場をくぐり抜けると、ってやつだね。



 と、いうわけで。


 私の部屋に住むとかゆー気紛れ発言で精神力をガッツリと削り取ってくれちゃった悪の女神様は、その後大人しく帰っていった。……わけではなく。


 未だ私の部屋に我が物顔で居座っていた。


「プリンかぁ。いいわよね。私も昔はこういった物が好きだった気がするわ」


「ソフィアは意外と料理が上手なのよね」


 しかもリンゼちゃんが、今までに見たことがないレベルで反抗的なんですけど……?

 私の秘蔵のプリンを無理やり供出させるリンゼちゃんなんて、私の知ってるリンゼちゃんじゃないよっ!


 リンゼちゃんの甘いおねだり+ヨルの「私も昔は……」な憂い顔コンボ。


 あんなの勝てるか。


「……それにしても、あなたは本当に人らしくなったわね。繋がりがなければ分霊(わけみたま)とは気づかなかったかもしれないわ」


「分かたれてからもう何年も経っているのよ? それに、この身体は人間そのもの。私はもうあなたとは別の存在と言えるでしょうね」


 ベッドの上でゴロゴロしながら二人の会話を聞き流す。


 いーけどねーべっつにー。私の部屋でリンゼちゃんが誰と仲良くしてよーとー。


 ご主人様をほったらかして自分の知り合いと長話ししようとー、それ自体は別に構わないんだけどー。


 リンゼちゃんが私と話す時よりもなんだか楽しそうなのが、ちょっぴりジェラシィ。


 ご主人様、寂しくて泣いちゃうよ?


「はーあ。フェルー」


「キュー」


 ああ、もふもふ……。……ちらっ。もふ、もふり……。


 …………お土産の鑑定でもしよ。


 うじうじしてても一向にリンゼちゃんが慰めにくる様子がないので、諦めて今日の予定を消化することにした。


 夜の楽しみにしていた予定。即ち、ヘレナさんの魔力の解析である。


「キュウ? キュッ」


「あ、こーら。いじっちゃダメだよ」


 とりあえず五分の一ほどの欠片に分割してみたけど、相変わらず安定感がパない。一度構成した形を崩したってのに自壊する様子もなく、安定して欠片として存在している。


 扱いやすくて助かるけど、油断し過ぎていると手痛いしっぺ返しを喰らいそうでもある。気をつけないと。


「あら、それはなぁに?」


「あ」


 フェルからとりあげた欠片をじっくり観察していると、上から伸びてきた手にヒョイっと奪われてしまった。もーーなんでこっち来るのぉ。


「それは知り合いから貰った変わった魔力で」


 これから調べようと思ってたところ、と続けようとした言葉が途切れる。


 振り向いた私が見たのは、ヨルが私から取り上げた欠片を口の中に放り込む瞬間だった。


「何してんの!?」


 もぐもぐ、ごっくん。


 なぜか咀嚼までして魔力の欠片を堪能し尽くしたヨルは、唇をペロリと舐めあげると、


「悪くないわね」


 などと(のたま)った。


 魔力って味あるの!? なんて少し気になりはするものの、問題はそこではない。


「ねえ、ヨル。何してくれてるの?」


 人の部屋に勝手に上がり込んで、人の物を勝手に取り上げて、やりたい放題し過ぎじゃないかい?


 いくら温厚なソフィアさんだってね。怒る時には、怒るよ?


 と剣呑な雰囲気を出しながら少し強めに睨みつけると、ヨルも少し真剣な顔になって、私を見つめ返してきた。


「これ、もっと無いの?」


 ヨルさん。女神様さーん。人の話を聞いてくださーい。

 暗い魔力ってそんな顔しちゃう程美味しいのかってちょっと気になっちゃうからやめてくださーい。


「ないよ」


「あるわよ」


 とりあえず否定した瞬間にリンゼちゃんに裏切られた。


 なんで今日のリンゼちゃんはそんなに私に厳しいの。しまいには泣くぞ。


「出しなさい」


 そしてリンゼちゃんの密告を聞いた途端に命令してくるこの人はなんでこんなに偉そうなんだ。人じゃないからか? 女神様だからか?


 女神様の横暴が酷すぎて自分の部屋なのに居心地が最悪すぎるのでどうにかしてください神様。と一時共闘関係にあったシンに視線を向ければ、諦めろとばかりに瞼を閉じて視線をカットされた。


 この神様はダメだ、頼りにならん。


「……つーん」


 出したらまた奪い取られると分かっていながら誰が出すかと無視を決め込むと、ヨルは気に入らなそうにムッと表情を変えた。そして。


「……確かソフィアは、母親に弱かったわよね」


「!?」


 なんだかとてつもなく不穏な事を言い出した!


「そうね。私やあなたが彼女に嘆願すれば、ソフィアに罰を受けさせることは容易でしょうね」


「……!?!?」


 リンゼちゃんが不穏どころじゃない、極悪非道な計画を立て始めた!!?


 それだけは、それだけはやめてくださいお願いします!



 こうして私は、邪悪に屈した。


ソフィアが最凶タッグの要求を退けたのではない。

彼女たちはあの時、まだ本気ではなかった。

これはただ、それだけの話なのだ……。

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