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侵される安息の地


 ミュラーにとんでもない約束をさせられてしまった……。


 素直に応援できないの、つらい。


 私の罰ゲームを決行する為に私が頑張るのっておかしくない? 明らかに何かが間違っていると思うの。


「キュッ」


「キュイー」


 ああ、身振り手振りでお話するうちの子たちかわいい。癒される。癒されたい。


 本当なら、今すぐベッドにダイブして二匹まとめてわしゃしゃしゃーってかわいがってあげたい。なのに……ッ!!


「あら、そうなの? ふふ、あなた達もこちらで楽しい日々を過ごしているみたいね」


「ええ、そうね。ソフィアは割と色んなことに首を突っ込む(たち)だから、見ていて退屈しないわ」


 私の部屋にー。小女神とー。大女神がー。揃ったー。


 いやおかしくない? 普段から女神様の分身をメイドとしていい様に使ってる私が言うのもなんだけど、おかしくない??


 この女神様、私が夕食から戻ったら既に当たり前のように部屋にいて、フェルとエッテを侍らせながら「あらあらうふふ」とかやってたんだよおかしくない? おかしいよね?? ここ私の部屋なんですけどお!??


 なんでここにいるのかとかフェルたちが懐きすぎだとかなんでまた胸増量してきてんだとか色々言いたいことがありすぎてパニックになっていたら、遅れてやってきたリンゼちゃんが「そこに立っていられると邪魔なのだけど」とか言いながら食後の紅茶の用意をし始めたんだよね。それも普段は一人分なのに、何故か今日に限っては二人分を用意して。

 そして女神様も当然の様にリンゼちゃんの奉仕を受けてるっていうね。


 釈然としないものを感じつつ促されるまま同じ席には着いたものの、女神様は私なんかそっちのけでフェルたちと楽しくおしゃべり継続中。イマココね。


 現実逃避したくなるのも仕方ないと思いませんか?

 女神様って存在はもうちょっと威厳を持って振舞ってくれないと、私もどう接したらいいのか分からなくなるよ。


 許されるならこの女神様、女神を自称する人が不法侵入してたとか言って騎士団にでも突き出してやりたい。お母様が怖くて出来やしないけど。


「ああ、そうそう。今日はソフィアに用があって来たのよ」


「あ、ハイ」


 うわぅ、急に話を振られたよ。びっくりしたぁ。


 てか私の部屋にまで来てて私に用がなかったらそれこそびっくりだけども。


 ……いやもちろん、用があるからって勝手に部屋にまで押しかけられたら誰だってびっくりはするだろうけどさ。って、これも違うな。普通は用があるからって他人の部屋には不法侵入なんてしないんだよ。ちゃんとアポ取ってから来てください女神様。受付はお母様です。


「この間、シンが迷惑を掛けたじゃない?」


 なんて心の中で文句を連ねている間に、女神様が「本当にもう、あの子ったら……」と言わんばかりの憂い顔を見せた。


 この間っていうか、つい昨日なんですけどね。


 女神様にとっては時間の概念って曖昧だったりするのかな?


 まあ確かに、迷惑を掛けられてた期間で考えると、この間でも合ってる、とも、言えるよーな……んん?


「その件で、シンに謝らせようと思って」


「はあ」


 それでわざわざ来たと。天井も直ったから別にいいのに。


 正直面倒な予感しかしないから、早く帰ってくれると……とはさすがに言えないので、自然と曖昧な返事になった。


 現時点でもかなり面倒な事態になってきてるし、もう諦めはついたから、なんでもいいから早く済ませてほしい。私はここに座ったままでいいのかな?


「こうして連れて……んっ」


 そう言いながら、どこぞの女スパイのように胸の間に手を突っ込み、何やら取り出す女神様。


 もう突っ込むのも面倒くさい。あー、紅茶おいし。


「シン」


「……はい」


 しかし、続く光景には流石に驚かされた。

 思わず飲みかけの紅茶を吹きそうになったのを慌てて堪える。


 女神様が胸から取り出した白い粒を絨毯の上に落とすと、なんとそこから神様(シン)がにょきにょきと生えてきたのだ。


 そのにゅるっと人型になる工程がキモすぎて、ちょっとフリーズしちゃったよ。


 そして完全な人型になった神様は、無表情に言いました。


「この間は殺そうとして悪かったな」


 あ、ああうん。ちゃんと謝れて偉いね……って違う。


 改めて見ると、思ったよりも美形で、どこぞの王子様みたいに綺麗な顔で……。


 こんな顔した男が、さっきまで女神様の胸の谷間に埋まってたのかとか……昨日は生首になってたのかとか……もう……なんとも言えない。


「……もう攻撃してこないのなら、助かります」


 ……え? ホントに女神様の胸から出てきてないよね?


 実際はあの白いのが落ちた地点を基点に転移してきたとかそっち系だよね? でも、白……神様の、色……。


 私は深く考えるのをやめた。


「それで、ご用件はそれだけでしょうか?」


 それだけならもう帰って? と、言葉にはしなくとも間違いなく伝わるように、私は笑顔で突き放した。


 間違いなくまだ何かあるはずだと、現実からは逃れられないと告げる、自分の思考を誤魔化して。


女神様のソフィア弄りが止まらない。

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