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暗い魔力と優先順位


 やっぱり普段の行いって大切だよね。


 常日頃から善行を積む事でいざって時に幸運が舞い降りるっていうの?


 因果応報。情けは人の為ならず。


 人に優しくした分だけ自分にも優しさが返ってくるっていうか、世界は優しさで満ちているっていうかさ。


 その優しい世界の象徴がシャルマさんなわけ。


 ヘレナさんの研究成果たる暗い魔力を持ち帰って調べようとしてた私を見逃してくれたばかりか、普通に許すだけじゃ姑息な手段を見咎められた私が気まずかろうと「ではお願いしてもよろしいでしょうか?」なんて私の心情にすら配慮した言い回しまでしてくれちゃってさ。感動で震えるよね。


 もしかしたら、シャルマさんは神とか仏とかの生まれ変わりなのかもしれないね。

 だってシャルマさんが優しい笑顔浮かべると後光が差して見えるもん。


 有難く魔力塊の持ち帰り許可もいただけたので、私の中でのシャルマさんの評価を「美味しいおやつをくれる優しい人」から「気配りもできてお菓子作りも上手な気遣いの神」へとランクアップさせたりもしつつ、ほくほく笑顔でヘレナさん宅を去ったのでした。めでたしめでたし。



 ……とまあ、そんなわけで。


 ヘレナさんの危機と聞いた時にはどうなることかと思ったけど、結果的には今もらって一番嬉しいレベルのお土産も頂けたし、とても良かった。


 でもでもいくら嬉しいからって欲求のままに馬車の中(ここ)で弄くり回すわけにもいかない。ここで始めたら絶対止まらない自信がある。なのでこれは、おうちに帰ってからのお楽しみなのだ。


 ああ! 今日の夜がとても楽しみ~♪ というか、今から既にうきうきでそわそわ~♪ と挙動不審ソフィアちゃんになったりもしているが、何も問題は無い。同乗者のいない馬車は車内のひとり遊びなど関係なくガタゴトと進む。


 やがて当初の約束通りミュラーの家にお邪魔する頃になれば、浮ついた気分はある程度落ち着いていた。これからすべき事を考えてたら、自然と意識のスイッチが切り替わったとも言う。


 ミュラーの件も割と危機的状況だからね。


 直接的な生命の危機はなくとも、将来の危機とか、家族不和の危機とか、あと貴族的立場としての危機とか?

 どれも無いとは思うけど、絶対に無いとは言いきれない微妙なライン。


 もはやこれは状況次第であらゆる危機に繋がりかねない重要案件ですよ。早急に解決せねば危険が危なーい……かもしれない。


 でも正直なところ、勉強できるできないって案外才能頼りなトコあるからね。


 転生してから何度も実感しておりますもの。

 ソフィアの身体が物覚え良くて、本当に助かってるなーって。


 ……今度時間のある時にでも、本物のソフィア、じゃなくて、アネットの先生さんともゆっくりお話とかしたいなー、なんて。そんなことを考えている間に。


「どうぞ、こちらです」


 ミュラーの家のメイドさんに案内されて、運命の時間がやって参りました。


 はてさて、ミュラーはちゃんと勉強してるだろうか?


 カレンちゃんを信用していないわけじゃないけど、ミュラーの勉強嫌いは筋金入りだ。期待は薄い……かもしれない。


 しかしそれでは困るのだ。


 勉強なんてね、本人にやる気がなきゃどうしたって無理なのよ。


 私という厳しめのお目付け役がいない状況で、ミュラーはどれだけやる気になっているのか。


 もしもまだ十問も解いていないようなやる気のなさを見せつけられたら、私はこの件から手を引く……なんて可能性もあるかもしれない。


 別に早く帰って暗い魔力の研究をしたいとかじゃなくてね。

 そんなんじゃなくて、単に失敗前提の泥舟に乗るつもりは無いっていうか、本人が望んでない事を無理にさせるのもどうかなって。私たちはあくまで協力する、って立場だからね。


 ごほん。


 まあ、なんだ。全てはミュラーのやる気次第ってことですよ。


 ミュラーが頑張ってるパターン。だらけきってるパターン。カイルたちをも巻き込んで遊んでいるパターン。


 様々な可能性を考慮しつつ、みんなの待つ部屋の扉を、開けた。


「遅れてごめんね。勉強、どこまで進んでる?」


 期待半分。不安半分。


 果たして、ミュラーは――。


「あっ、ソフィア。ミュラーね、ちゃんと頑張ってるよ」


 ――ああ、なんということでしょう!!


 あのミュラーが、前回勉強会をしたときは勉強を中断する口実を絶対に見逃さなかったミュラーが、私の方を見もしないで問題に向き合っているとは!!!


 どうしよう、ちょっと泣きそうかもしんない。


 ミュラーもやるときはやるんだって、それが証明されただけでこんなにも嬉しい。


 これが母性か。


「おー、ソフィア来たか」


「結構遅かったな。ほら、ミュラーの頑張りを見てやってくれ」


 うわ、うわ、なんだこれ。本当に嬉しい。おかしい。私はミュラーの母親とかじゃないのに!


 疲れきった顔で手を振るミュラーから目が離せない。


「――それじゃあ見せてもらおうかなっ」


 ああ……早く褒めてあげたいっ!!


何度挑戦しても再現できなかった謎の魔力。


――ソフィアは暗い魔力塊を手に入れた!!

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