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好奇心の瀑布


 お兄様と別れ、クラスへと着いた私を待ち受けていたのは、クラスメイトたちの質問責めだった。


「待ってたよソフィアー!」


「さささ、こちらへ。ほら早く座って。そしてハキハキと知ってることを全部吐いて」


「ごめんなさいね。でも、私たちも気になるから……ね?」


 あっ、という間に捕獲されて、流れるように連行された。


 そして追加の尋問人員がどん。


「ソフィアっ! 女神様の胸は、あのご立派なおっぱい様にはどんな秘密があるんだっ!? 気になりすぎて寝不足なんだっ、頼む! 教えてくれぇぇえぶしっ」


「あんた必死すぎ! ねね、ソフィア。私には、私には教えてくれるよね? ねっ?」


 なんか、想像以上にヤバい。みんなが必死すぎて怖い。


 一日時間を置いたってのにこの反応は明らかに異常だ。


 大して効果があるとも思わないけど、とりあえずはみんなに声を掛けて、昂りの沈静化を図ることにした。


「ね、みんな一旦落ち着こう? 大丈夫、私は逃げないから」


 逃げないっていうか、逃げ出せないんだけどね。座らされた時点で包囲網が完全に閉じてたし。


 しかも左手は手錠よろしく、恋人繋ぎでがっちりとホールドされている徹底っぷり。


 私が女の子の手を力任せに振りほどいたりしないと理解している、見事な拘束方法だった。


「それで……? えっと、これはなんの騒ぎなの?」


 たぶん女神様関連のことではあるんだろうけど……とアタリはつけつつ、「ソフィアなんにもわかんなーい」とばかりにすっとぼけてみた。

 わりと驚いてるのも事実ではあるしね?


 しかし、考え無しに発したその言葉が、悲劇の始まりだった。


「もちろん、昨日の事よ」


 と私の手を封じた女の子が口火を切れば。


 それから先はもう、言葉が怒涛のように氾濫していた。


「そうだよー! 昨日はびっくりしたよね! あたし女神様なんて見るの初めてでびっくりしちゃった!」


「ソフィア、女神様と仲良くなったんだろ!? また来るって言ってたりしなかったか!?」


「昨日はあれから大変だったんだからー。噂を聞き付けた他のクラスの子達が集まって来てさー」


「女神様の胸がなんなの!? なんでお前ら誰も教えてくれないわけ!!? 俺が昨夜、ベッドの上でどんだけあのたわわ様のこと考えて妄想膨らませてたか教えてやろうか!?」


「あの後女神様とお話したんでしょ!? どんなこと話したの!? ミュラーもカレンも全然教えてくれなくってー!」


「おい、そんないっぺんに言っても答えられるわけないだろ! ここはまず質問をまとめてだなぁ!」


「ぐえ……いたい」


 みんながみんな我先にと話し出すばかりか、話を聞いてもらおうとでもしてるのか私の正面に人が密集。


 結果、人と机に挟まれて押し潰される子まで出てきてしまう事態に陥っていた。


 うわーい、阿鼻叫喚……。


 ひとまず潰れた子を救い出しつつ、やいのやいのと騒ぎ立てる周囲をどうするべきかと考える。


 うーん……。むー……。


 ……やっぱ順番に聞いてくのが一番なのかなぁ。でもそれだと答えたくない質問が……むぅ。


 一斉に話されて、私、混乱してます。という雰囲気を出しながら、頭の中ではこの状況を円満に収める方法を模索していた。


 ……ていうか、さあ。

 いま気づいちゃったんだけど。


 ――こんなときこそカイルが助けてくれるべきなんじゃないか?


 お兄様から私を守るように言われているはずのカイルくんは何処で油を売ってるのかなあと魔法で探せば、なんとすぐ横にいたらしい事が判明した。


 突っ伏して寝てるわコイツ。


 まあ、なんだ。思いのほか近くにいたっぽい。死んだように寝てるせいか、人垣で見えないけど……って、そうか。今更ながら分かった。私を取り囲んでる人達が、今までどこに固まっていたのか。


 これだけ女神様に興味津々なクラスメイトがいて。


 ……私が来るまで、カイルが無事で済むわけないよね。


 合掌。


「ねーソフィアー。女神様に口止めとかされてるの? それとも、昨日リチャード先生に連れてかれたのに関係ある? ねってばー」


「やっぱ勢いで誤魔化されちゃくれないか。なあソフィア、俺らも他のやつらに聞いて来いってせっつかれてんだよ。なんでもいいから教えてくれねえ?」


「あっ、私お菓子持ってるよ。はいソフィア、あーん。……それ食べたら、私の質問に答えてくれる?」


「おっぱい……胸……。たわわな……ぽよんぽよんの……」


 自ずとカイルの現状が理解できた。できてしまった。もぐもぐ。


 きっとみんなに詰め寄られて疲労困憊バタンキューなんだな。それならまあ、許そう。カイルの死は無駄にはしない。安らかに眠ってくれたまへ。ごっくん。ん、これ美味しいな。


 ……ともかく!


 私はカイルの屍を乗り越えて、暴徒と化したクラスメイトに立ち向かうと誓おう!


 そう決意した私は、さっさと切り札を切ることにした。


「あのね、昨日はリチャード先生と国王陛下に会いに行ったんだけどね」


 ……話しながら、分かる。


 まだ本題には入っていない。それでも。



 ――効果は、劇的だった。


ソフィアが生け贄にする前に自ら生け贄の職務を全うした理想的な生け贄、ここに眠る。

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