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お兄様の敵は私の敵


 今日以降、女神様が出没したら、私には王様に報告する義務が生じるそうです。


 いや、いーけどね。別に。

 お母様が許可するんなら隠す事は何も無いし。


 ただ女神様に対する温度差っていうかさ。


「我らの世界を守護して下さっている女神様に目を掛けて貰える事は大変な名誉であり――」的なあれが、ひたすらにだるかったっていうか、長かったっていうか。


 その女神様と話した事もなく、見たことすらない人が何言ってんの的な?


 もちろんそんな考えはおくびにも出さず、元気良く了承しておいたけどね。


 実際の女神様がどれだけお茶目だろうと、王様が神聖視している以上、女神様の価値は絶対なわけで。

 その女神様がわざわざ会いに来て親しく会話を交わす相手である私の価値も、当然高く見積もってくれるだろうから。女神様にはいつまでも王様とは会わないで、王様の理想であり続けて欲しい。


 そうして私はいつしか、圧倒的な偉い立場になるのだ。


 ――目指す地位は、お母様の上。


 お城でもかなーり偉そうな無言の魔女様を、いつの日にか私があごで使ってやるのだー! ふははは!




 ――みたいなテンションで乗り切ってきました。


「お疲れ様」


「おつかれたよー」


 やっぱりお城って疲れるね。

 偉い人に報告するって状況がもう、無駄に緊張する。


 これだけの労力を支払わされてるのに未成年ってだけでお給料も出ないとかやってらんないよねー。って思ってたら、出るんだって! 聖女のお給料!!


 そういうことなら私のやる気だって段違いですよ。


 これからはもっと真面目に聖女として頑張るよ! 女神様のお話相手くらいならどんとこいだ! という気分になったけど、私がまだ未成年ということで、お給料は全てお母様預かりになるらしい。

 一瞬湧き上がったやる気が秒で最底辺まで下降したのは言うまでもない。


 私だってもうすぐ十三歳だよ? 前世で言ったら中二だよ? お小遣いくらい自分の好きに使いたいよ。


 魔石の大量購入に制限が付けられてるのはまあ理解もできるけど、街に出ての買い食いが許されてないのはちょーっと納得いかないよね。

 未だにはじめてのおつかい未経験とか箱入りすぎて我ながら恥ずかしいわ。


 ……と、その辺の愚痴だったらいくらでも出てくるんだけど。


 こんなのリンゼちゃんに言っても仕方ないんだよね。

 というか、リンゼちゃんとの癒しの時間に愚痴なんか持ち込みたくない。こんな負の感情は丸めてポイだ。


 今日私がリンゼちゃんと話したいのは、もっと別の事なのである。


「ところでリンゼちゃんさー」


「何?」


 今日もクールなリンゼちゃん。


 こんな真面目そうな子が勤務時間中にお昼寝してた件もかなり気になるけど、それをからかうのは後にする。


「今日、お兄様が倒れたんだけどね。エッテが言うには、それって別の人の悪意を取り込んだ影響だったらしいんだよね。……元が誰の悪意だったかって、分かったりしない?」


 そう、これが今リンゼちゃんに一番聞きたいこと。


 お兄様が何故、倒れるなんて事態になったのか。


 お兄様に別人の悪意が混じった事は、果たして偶然の出来事だったのか。……あるいは、故意だったのか。


 もしも、万が一、誰かが狙ってやった事なのだとしたら……。


 ……それは、どれほどの返礼(報復)でもって返せばいいのか。


 必要なのは、情報だ。


 誠に残念ながら、私は魔力を()て誰の魔力かを判断することは出来ても、悪意を視て誰から生じたものかを判別することは出来ない。

 悪意を視て分かるのは、それが嫉妬や憎悪など、どういった種類の悪意なのかという事だけだ。


 私がエッテから知り得た情報を話すと、リンゼちゃんは何か心当たりがあったようで、鷹揚に頷いた。


「それはきっと、()()のものね」


()()?」


 アレってなんだ。私の知ってるアレか? しかし家から出ないリンゼちゃんでも知ってるアレとなるとかなり限られる気がする。


 一体アレがどのアレでアレ、私のお兄様に害を及ぼした以上報いは当然だよね。


 アレアレ言い過ぎてちょっと楽しくなってきたけど、お兄様関係で手は抜かない。ただ、殺意増し増しも良くないから、程々でね。


 そうして心の中で茶化しながら溢れ出そうになる殺意を薄めつつ、「アレって一体なんだろな〜♪」とアレこれ予想を立てていると、リンゼちゃんによる正解発表の時間がやってきた。


 果たしてその真実とは。


「アレっていうのは魔物の事よ。彼、たしかあなたが災厄の魔物退治に行く時に同行したのよね? その時にでも混ざったんじゃないかしら」


 犯人は人外でした。そして、討伐済みでした。


 アイテムボックス内であのめんどくさ過ぎるデカブツを処理してくれた神に初めて感謝に近い感情を抱いたね。


 今度会う事があったら、つい閉じ込めちゃってた事を謝ってもいいかもしれない。



「でも、それだと時期が合わないんじゃない?」


「いいえ、合っているわよ。そもそも悪意の特性として――」


 それからは、いつもの様に。


 リンゼちゃんによる女神知識のコーナーが始まった。


身内がやられたらやり返すのが当然と思っているソフィアさん。

神様による悪行(お兄様への攻撃)は善行(お兄様の仇討ち)により許す方向へと向かいそうです。

神様を許す許さないとか、何様のつもりなんでしょうね。

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