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研究室にお邪魔しよう


 今日はお母様に連れられて学院に来た。


 少し前までお姉様も通っていた学院。

 私もそのうちここに通うことになっているから、今日は朝からわくわくしていた。


 今は授業中みたいで、静かな廊下を歩いていると教室から先生の声が聞こえてくる。


 次第に静かな方へと進んで行く。

 同じような扉が並んでいる辺りで一枚の扉の前に止まった。


 覗き窓もないから部屋の中の様子は窺えない。


 お母様から聞いた話によれば、今日は私の魔法の検証をするそうだ。


 研究室の主はヘレナ女史。

 私の魔法開発に携わってきたお母様が書いた資料を元に色々調べていたのがようやく目処がついたので、次の段階に進むために本人に会いたい。ということになったらしい。

 私も興味があったので了承したのだ。


「ヘレナは気のいい人ですから。気楽にしていていいですからね」


 お母様に促されて部屋に入れば、メガネをかけた女性が迎え入れてくれた。


「初めまして、ソフィアちゃん。私はヘレナ。貴女のお母さんと一緒に魔法の研究をしているのよ」


 お互いに挨拶を交わして自己紹介。

 このやり取りにも慣れたものだ。


 フェルとエッテのことも知っていたようなので一緒に挨拶したらかわいさに悶えてた。

 ふふ。また一人、虜にしてしまったか。


 かわいいを共有する仲間としてフェル達の芸を見せてあげようとしたらお母様に止められてしまったので、お母様がヘレナさんと話している間、大人しく出されたお菓子を食べて待つことにした。


 ビスケットの上に謎の白い欠片が振りかけられたお菓子。これは初めて見るやつだ。


 毒味じゃないけどフェルにあげてみたらあっという間に食べちゃった。

 そんなフェルと私を交互に見てたからエッテにもあげた。ぺろりと食べきった。


 美味しかったみたいなので私も食べてみる。


 うおっ、噛んだ瞬間香りがすごい!

 なんかぶわって、ぶわってきた! なんだこれ!?


 甘みもあるけど独特の匂いの衝撃が凄い。

 口に入れるまでは仄かに薫る程度だったのに、白い欠片を噛んだ途端に閉じ込められていた芳香が解き放たれたように広がる。

 見た目とは逆にビスケットが完全におまけだ。謎の果実、強い。


 あまりの香りの強さに紅茶に手を伸ばした。


 さっきまでは感じ取れた紅茶の香りが全然分かんない。鼻が白い果実に蹂躙されて戻ってこれない。


 口の中をリセットしようと紅茶を口に含めば、また新たな香りが溢れた。しかも今度は強すぎない、紅茶の香りがしっかりと優しさを保ちながら、白い果実が時折ふわり、ふわりと薫りに華やかな彩りを添えている。


 これは間違いなく紅茶と一緒に楽しむお菓子だ。


 それにしてもすごいなこれ。

 なんて果物か分からないけど……びっくりした。こんなお菓子初めてだ。


 香りを最大限に楽しむお菓子なんて、お菓子の概念覆しちゃうんじゃない?


「それ、気に入った?」

「はい! こんなお菓子があるなんて知らなくて、感動しました!」


 私の返事を聞いたヘレナさんが嬉しそうに笑う。


「喜んでくれて嬉しいわ」


 そう言って微笑む顔は、男だったら恋に落ちそうなほど綺麗だった。


 これはメガネの奥の瞳が鋭くて怖そうとか思ってたのを訂正せねばなるまい。


 ごめんなさい。


第二の天才ヘレナさん。独身。年齢不詳。

恋人も欲しいけど研究も止められないらしい。

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