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女神を見たクラスメイトの反応


 教室に女神が降臨した。



 美人さんの正体が女神様だと明かされると、それまで静まり返っていた教室内は一転、天地をひっくり返したような騒ぎになった。


「女神ってなに! 女神ってなに!? うそあたし神様と会っちゃったの!?」


「バカ! 女神様とお呼びしろ! いやその前に平伏しろ! 頭が高いぞみんな!!」


「神々しい……お姉様……♪」


「あの足で踏まれたい……」


「……神とはこれほどに、美しいものなのですね」


「……女神、すごい」


「それよりさっきソフィアのこと呼んでなかった!? 呼んでたよね!?」


 すごい。

 なにがすごいって、彼女を女神だと信じた上でこれだけ騒げるのがすごい。


 私はリンゼちゃんを通して女神様の性格についてはあらかじめ知っているから、彼女がこの程度で怒ることはないと知っているけれど、みんなはそうじゃない。初対面の神に対して純粋な好奇心を隠しもせずに接してる。ぶっちゃけ失礼極まりない。


 相手、王様より上の存在じゃないの? それとも、案外神様ってフレンドリーな存在として親しまれてるの?


 自分の中の常識を疑いたくなる様な光景を前にして自信が揺らいでいたが、リチャード先生が顔面を蒼白にしている姿を見て、私の心配は間違っていないのだと悟った。

 悟ったと同時に、頭を抱えた。


「どうすんのこれ……」


「いやお前のせいだろ」


 声に顔を上げると、カイルが呆れた目で私を見下ろしていた。その横にはカレンちゃんと、帯剣したミュラーもいる。


 ……その剣どこから持ってきたの?


「あの、ソフィア。あの人が女神様って、本当なの?」


 カレンちゃんの疑問に、改めて問題の人物を観察する。


 長い黒髪の美しい女性は私へと宣言した後、狂乱の渦へと陥った教室を興味深そうに眺めている。その人間離れした美貌を差し置いても、彼女が自称するとおり、彼女が女神である可能性は極めて高いと思う。


 話の内容とかアイテムボックスに酷似した移動方法とか魔力量とか、考えられることは色々とあるけれど、私が「彼女がそうだ」と直感した一番の理由としては、どこかリンゼちゃんに似たその身にまとった空気だった。


 雰囲気がもう完全にリンゼちゃんのそれ。

 さっきは無意識に「興味深そうにしている」と思ったけれど、客観的にはむしろ興味無さそうな顔で、しかしジッと見つめることはやめないその態度とか。視線に気付いた相手が居心地悪そうにしていても、全く気に留めずに目でジィーーッと凝視し続けるところとか。挙句には地面に這いつくばって震えながら許しを乞う姿を晒してるのに、眉一つ動かさずにそれを……ってちょっとちょっと、私のクラスメイトをいじめてるんじゃないよ女神様。見ていて楽しいのは完全に同意するけど、その子軽そうな外見に反して女の子に全然慣れてないんだから。女神様みたいな美人さんが見てたら失神しちゃうよ。


「あの、女神様? ここではなんですから、とりあえず場所を移したいと思うのですが、構いませんか?」


 見てられなくてつい助け船を出したけど、この女神様、オーラがヤバいわ。神様オーラがすんごい。


 なんか近付き難い雰囲気を感じ取っちゃうっていうか、背もかなり高くて威圧感あるし……と思ったら、机で見えなかっただけで、この人浮いてるじゃん。身長詐欺じゃん。いや人かは知らないし詐称してたわけでもないんだろうけどさ。

 リチャード先生並みの背丈はまやかしだったにしても、それでも私から見れば背が高いことには違いないし……。


 それにしても靴も黒いのね。なにこれ、ガラスの靴? 夜空から作ったガラスの靴なの?


 白く光るおみ足を縁取り、透き通るような夜色の中に煌めく星々の輝きが、魂ごと吸い込まれそうな魅力を放って……と綺麗な靴に見蕩れているうちに、彼女の視線がこちらに向き直っていた。


「それは構わないけれど……随分と話し方が丁寧なのね? いつもあの子と話す時みたいに、もっとぞんざいに扱ってくれてもいいのよ?」


「いえこのままでお願いします」


 ぞんざい? ノーノー、あれは親しみを込めた話し方と言うのですよ?

 雑な話し方は仲良しの証なんだと今度リンゼちゃんにもよく言い聞かせておかなければ……。


「ソフィアって……すごいね……」


 カレンちゃんたちの驚愕の視線が痛い。私の株価が急速に下降している気がする。


 カイルのジト目? それはもう慣れたよ。はは。


「リチャード先生。大変申し訳ありませんがこちらの方と話をするために授業を早退させてもらえませんか? ……あと、その。この様な事態になってしまい……」


 とりあえず場所を移そうと先生に許可を求める。


 自分で言いつつも、もはや授業の(てい)をなしていない教室の惨状に責任を感じて謝罪しようと下げた頭を、先生が押し留めた。


「いや、いい。謝罪は不要だ。ここは任せて、すぐに行きなさい。……大変だろうが、頑張れよ」


 ボソッと付け加えられた一言に、ソフィアちゃんうっかり泣いちゃいそうになっちゃったよ。


 先生……、お互い頑張ろうね!!


普段は自らを律しているクラスメイトたちもまだまだ子供。

好奇心と中二心をこれでもかと刺激する美人の登場シーンに、理性の糸は吹っ切れたようだ。

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