表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
486/1407

落ち着かない授業中


 真面目モードのカイルはダメだ。面白くない。



 次の授業中、私は真面目に授業を聞くふりをしつつ、内心で頭を抱えていた。


 どうしてこうなった。


 ただカイルをおちょくって遊ぶつもりが、何故かお母様の愚痴を言う流れになり、最後にはカイルの意外と真面目に将来を考えてるところを見せつけられて、好き勝手に生きてる自分が恥ずかしくなったなんて……。こんなマイナス方向の気分転換、望んじゃいなかったよ。


 カイルにはネガティブになってたのをバレなかったと思うけど、なんか、真剣に悩んでるのって、困る。真剣に悩んでない私が悪いみたいに思えて、困る。


 嫌だってぇ、精神的には十年以上大人のはずの私の方がその実、見た目相応にみんなよりも精神年齢が下だなんて事実、受け入れたくないぃ。


 みんなあんなこと悩むの? どーせ親の敷いてくれたレール乗るだけじゃん。貴族なんて将来が約束されたコネでお仕事貰えて楽々ルートじゃん。自分も幸せ、親も周りも大助かりのいいとこしかないじゃん。悩む必要ないじゃん。


 カイルだって小さい頃からお父さんの真似して剣振って頑張ってたわけだし、貴族のお家ってそーゆー幼い頃からの教育も含めた仕組みがあって将来の悩みとか必要ないんじゃないかと思ってたんだけど、実はそうでも無いのかな? みんな意外と悩んでたりするのかな?


 うーーーむ。

 みんなが悩んでるのに自分だけ悩んでないのが悪く思える、この日本人的な感性が問題なのだろうか。


 それともやっぱり、カイルだけが特殊とか?


 昔からザ・普通の基準点としてカイルを参考にしてきてたけど、案外カイルも普通とは違って、あれこれと悩むタイプだったのかもしれないね。


 真実はどうあれ、どちらにしろカイルはもう私の愚痴なんか聞いてくれそうな雰囲気じゃないし、かといってカイル以外にお母様の悪口を触れ回るわけにもいかない。

 私の愚痴タイムは不完全燃焼が確定したのだ。お母様の悪口を言ってはいけないという世界の強制力を感じる。ぐぬぬ。


「――という神の直接の御言葉により、神殿をはじめとする神を崇めるための施設は新設されることが無くなり、徐々に数を減らす事となったのです。『神に頼ることなかれ。人を頼り、共に助け合うことをこそ神は望まれている』。この言葉を広く知らしめるために尽力した人物が、当時の大司教である……先日聖女になったソフィアさんなら、もちろんご存知ですよね?」


 にっこりと笑顔で指名されたので、私もにこにこ笑顔で返す。


「ゴルド大司教ですね。大司教は当時かなり裕福な暮らしをしていたそうですが、神がご意思を示されてからは私財を投じていくつもの互助組織の設立に貢献したとか。その後も生涯清貧を貫いた高潔な人物として有名な方です」


 私の返答を聞いて、リチャード先生も笑顔で続ける。


「ええ、その通り。完璧な解答をありがとうございます。流石は聖女様ですね」


「いえいえ、そんな」


 うふふ、ははは、と嘘くさい笑みを交わす私とリチャード先生。はあん、疲れる。


 リチャード先生、私が聖女になってからやたらと気にかけてくるっていうか、授業内容も急に宗教関連やらに寄せてきて何故か私ばっかり指名するんだよね。お陰様でろくに内職(よそごと)もできん。


 学院にある宗教関係の本は二冊しかなかったので、この範囲が終わればもう集中的に当てられることもなくなるだろうけど……何故だろう、何故だか範囲を抜けてもリチャード先生にロックオンされたままな予感がするのは。


 やっぱあれかな、これはリチャード先生に特別に目をかけてもらってるってことなのかな。


 リチャード先生、授業も聞きやすいし良い先生ではあるんだけど、生徒を良い、悪いで二分してるようなとこがあるんだよなぁ……。あれだけはちょっと肌に合わない。


 かといって、自ら先生のお眼鏡から外れるように不真面目を装うってのも、なんかヤだし。


 結局私は、いつ先生に当てられても困らないように予習を欠かさないことくらいしか出来ないのだ。


 とはいっても、さっき先生も言ってた通り、昔のえらーいゴルド大司教様が私財という名の歴史的価値のある品々を手放しちゃったが為に、それ以前の神殿の実態が分かる文献とかが極端に少ないんだよね。保存状態の悪化とかで軒並み失伝してるの。


 覚えることが少なくて助かるよーな、そうでもないよーな……なんとも微妙なとこだよね。


 ……それにしても、あのシンって神様。


 昔は割と真面目なことも言ってたんだなー……、なんて。今もアイテムボックスの中に封印してある存在を思い浮かべながら、歴史に思いを馳せてみたりして。


 出会い方が違えば、案外リンゼちゃんとの関係みたいになれたのかもね。なんて想像をしつつ、残りの授業をやり過ごした。



 ――その、授業の終わり際。


 お昼休み直前の時間に、()()は突然やってきた。


先生だって人間ですから、お気に入りの生徒のひとりやふたりくらいはいるものです。

あ、勿論ロリコンとかではないですよ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ