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貴族の義務


 カイルの悩みはなんだろなー!


 どうにも勿体ぶるカイルに「……心配なんだよ、カイルの事」なんてちょっと真剣な雰囲気を出してやったらコローッと騙されて口を割ってやんの。やっぱり美少女って得だわ。前世とは男の反応が全然違う。


 カイルも生意気だけど所詮は男。まだまだ扱いやすくて助かるねー。


 はてさて、そんな純情少年カイルくんの今回のお悩みはなんと、貴族としての在り方がどーとかいうとてつもなくド真面目なものだった。


 面白さの欠片もなくて辛い。


 そーゆー真面目系なのはご両親にでも相談すればいいと思う。

 まあ、無理に聞き出したのは私だけどさ。


「お前が言ったんじゃんか。貴族の義務とか、男の責任とか。それなのに、お前が貴族の義務を放棄するって聞いて、俺、なんか分かんなくなっちゃって……」


 しかもなんだか私に責任があるような言い方をしてくるんだもんなあ。(たま)ったもんじゃないですよ。


 悩みはいつだって君自身のものだよっ☆ 人のせいにしないでねっ☆ って感じなんですけど。


 てか私、そんなこと言ったっけ?

 記憶にはないけど、言ってそうな気はする。


 カイルとそんな真面目な話をした覚えはないから、どうせそれ学院に入る前の頃の話でしょ。しつこく付き纏って来る時代のカイルを引き剥がす為に適当に言い含めた時のとかそんなトコじゃないかな。


 嘘は言ってないとは思うけど、そんな真剣に受け止められても困る。

 人の意見を鵜呑みにするのは良くないよ? と当時の私は……言ってないだろうなあ……。


 それに、貴族の義務を放棄ってなんだ?

 私はこう見えても優等生で通ってるんだ。それに関しては本気で身に覚えがない。


 貴族の義務っていうと、市民の生活を守る、とか?

 市民の生活を豊かにする活動なら間接的にはしてるんだけど、そーゆーのじゃだめなのかな。


 悩む私に気付かないまま、カイルがその答えを教えてくれた。


「聖女は結婚しないって聞いた。……本当なのか?」


 ああ、それね。


 貴族として生かされながら、貴族の役割を放棄して聖女になることを決めた。


 確かに私、貴族の義務放棄してたわ。

 結婚して子供を産むのだって貴族の役割のひとつだもんね。


 ……まあ、聖女になった今、私はもう結婚とは無縁になっちゃったんだけどさ。


「うん。本当みたい」


 わけわかんないよね。それでこそ宗教関係の決まり事って感じもするけど。


 軽く説明された「神に仕える者は清らかでなければならない」なんて理由よりは、まだ「男性経験の無い女神様が嫉妬するからお世話係は恋愛禁止」とかの方が納得しやすい。というか、どちらかと言えばそっちの方が真実に近い気がする。じゃなきゃ聖女の条件に処女とか付ける性格じゃないもん、リンゼちゃんって。女好きってわけでもないだろうし。


 そもそもお母様含め、みんな女神って存在を神聖視しすぎてると思うんだよね。


 みんなが思うほど女神様って慈悲深くないよ。前に人間増えすぎたからそろそろ減らさないとーみたいなことも言ってたし、むしろ人類の敵側だと思う。


 あ、ちなみにそれを救ったのが聖女である私なんだけどね! えへへ、誰か褒めてくれてもいーよ! 聖女を讃えよ、なんてね! あはっ!


「ソフィアは、貴族の枠組みから外れるって知ってて、その道を選んだんだよな? 後悔はないのか? 聖女なんて、その……大昔にしかなかった、よく分かんねぇ役職なんだろ?」


 心の中で自画自賛してたら、真面目トーンのカイルが冷や水を浴びせてきた。


 カイルの空気を読まないスキルがついに心の声にまで対応し始めてきてやばい。

 何がやばいって、私の羞恥心がやばい。我に返すタイミング絶妙すぎでしょ。ホント勘弁して欲しい……。あはっ、ってなんだよ……。


 こいつホントに私の心の声聞いてたりしないよね? ただの偶然だよね? 相談のフリしつつ私を弄んでたりするわけじゃないよね??


 ……読心の対策に綻びは見られないけど、念の為にもう変なこと考えるのはやめとこ……ぐすん。


 で……なんだっけ? 後悔がどうとか……ああ、はいはい。


「えっと……後悔はないよ。聖女って、確かによく分からないお仕事だけど、私にしかできないみたいだから。ならやってみようかなって」


 殊勝な言葉を選んではみたけど、その言葉にだって嘘はない。


 まあ当然、聖女になった理由の半分以上は家族の聖女推しが凄かったからってトコなんだけどね。


 あとはその、特典の魅力というか、餌に釣られたというか……。

 あ、そういえばお給金の話とか聞いてないな。今度お母様にでも聞いておこう。


「そっか……。お前は納得してるんだな」


 私の話を聞いたカイルは、それでもまだ何か悩んでいるように見えた。


 まーそりゃそうよね。人の話をいくら聞いたって結局最後には自分の進路は自分で選ばなくちゃならないもんだ。とはいえ貴族に生まれたならその進路もほぼ決まってるようなものだけどね。


 ……貴族の義務、か。


 真剣に悩めるカイルはきっと、いい貴族になるんだろうな。


真面目な空気にソフィアの悪戯心は敗北しました。

少年の純粋な心は、彼女には眩しすぎたのです……。

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