表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
478/1407

人に見えても神様なので


 神様的存在の盛モリ殺意体験をしに行ってたお母様がリンゼちゃんと一緒に戻ってきて、開口一番。


「あれはダメですね」


 と敬意の欠片もなくバッサリ言い切った。


 わかって貰えたようでとても嬉しいです。



 そしてこれまでずっと説得を試みていたリンゼちゃんも、どうやらこれは難しそうだと語り始めた。


「シンは今まで人間を庇護してきた立場だから、庇護対象より劣る自分の存在を認められないみたいね」


 リンゼちゃんに神様より優秀だって言われちゃったよ。照れるぅ。


 確かに災厄の魔物を狩りに来てたっぽいことを思えば、本来人類の為に行動してる神様なんだろうさ。

 アイテムボックス内に一緒に閉じ込めてる間にあのデカブツも退治してたみたいだし、出会い方さえ違えば協力関係とまではいかずとも、敵対する理由なんかなかったはずだ。


 それがうっかり監禁しちゃっただけでこれ。

 俺様に恥をかかせた人間を絶対許さない系神様の誕生である。


 とても心が狭い。


「神とは慈愛に溢れているものだと思っていました」


「僕は神に対する先入観は無かったつもりだけど……。大きな力を持つ神が感情的に行動するというのは、人間にとって良くない未来に繋がっている気がするね」


 お母様もお兄様も「あの神様はちょっと」という意見で同意している。さもありなん。


「……普段は、人間には優しいのよ?」


 リンゼちゃんだけが最初からシンに対して友好的だけど、今のところその言葉に信憑性はない。


 私らだって神様を悪者となんて思いたくないのよ。

 私に危害を加えようとするのをやめて大人しく帰ってくれれば、ホントそれだけでいいのに。


 欲を言えばそりゃ、災厄の魔物をどうやって倒したのかとか聞きたい事もないではないけど、それよりも現状が面倒臭すぎてもう割とどうでもいいっていうか、せめてごねるなら日中の暇な時間にしてくれないかーとかそーゆー話でね。

 お母様もお兄様も顔には出さないけど結構眠いはずだと思うんだよね。


 人間に優しいっていうなら、まず我が家の安眠の為に早くおうちに帰って欲しい。神様に家があるのかは知らないけど。


「私達はその人間に優しいところを見てないからねー……」


 もうリンゼちゃんを説得してシンをアイテムボックスに再封印する事を認めさせた方がいいんじゃないか、と疲れた頭で考えていたところで、ふと違和感を覚えた。


 ずっと私を睨んでいた生首の根元、アイテムボックスから生えているはずの部分が、不意に浮かんだ……ように見えた。目の錯覚かとも思ったが、何かが違う。


 眠過ぎて固定化が緩んだかと確かめた、次の瞬間。


 宙に固定していたはずの生首が転げ落ちた。


「うわああああああ!!!」


 戒めから解き放たれ自由落下を始めながら、その目は私だけを見て、何かを――しそうな予感がしたので、すぐさま後を追わせたアイテムボックスで回収。急いで出入口を閉じて再封印した。


 ……心臓がバックンバックンいってるよぅ……。


 あれは無理だ。予想外すぎた。唐突な真夜中ホラー怖い。


 閉じる時に改めて確認したけど、首の位置のアイテムボックスは間違いなく開いたままで固定されていた。眠さのあまりうっかり閉じて首ねじ切っちゃった♪ とかしたわけ断じてない。


 つまりあれは、信じられないことだけど。

 何らかの手段を用いて自らの首を落としたということになる。


 頭がおかしい。


「ソフィア!?」


「なに? どうしたの?」


「……今のは、心臓に悪いね」


 私の悲鳴に驚いて声を上げた二人に、お兄様と一緒に今見た事をありのままに話す。


 神様が本物の生首になったと聞いて居心地悪そうにし始めたお母様に比べて、リンゼちゃんの反応は落ち着いたものだった。


「心配しなくても大丈夫よ。シンは私と違って肉体は持っていないから、首が離れたって死んだりしないわ」


 言われてみれば、あれでも神様なんだからそう簡単に死んだりはしなさそう……って、いやいや。心配してるとかじゃなくてね。

 見てる方がびっくりするから首を落とすなって話ですよ。殺っちゃったかと思ったじゃん。


「なら、いつでも拘束は抜け出せたと? わざわざ捕まってる振りをしていたのはなんでかな」


 リンゼちゃんの発言に、お兄様から疑問が飛ぶ。


 ……お兄様の言う通りだ。


 慌てて部屋に異常がないかをあらゆる魔法を使って確認したが、天井に穴が空いてる以外は何も変わりない、いつも通りの私の部屋だ。そのはずだ。


 例の破壊光線の残滓っぽいものはあったりもしたけど、私の部屋って普段から色んな魔力やら魔素やらが飛び交ってて、正直、見分けがつかないっていうか……。


 まあ心配していた罠的な置き土産とかは無い。と思う。多分。


 一応部屋の魔力を全て私の制御下にしたから万一の事態も起きないだろう。


「シンが拘束から抜け出せなかったのは事実だと思うわ。シンはあの姿になってから、私の知る限り一度も別の姿になったことが無いもの」


 そうして私が保険をかけてる隙に、リンゼちゃんが過去語りを始めていた。


ソフィアの叫びを聞いて目を覚ましたフェルは、ソフィアの傍にエッテがいることを確認してそっと寝直す体勢に入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ