表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
474/1407

神様ー出ておいでー


 とりあえず神様が有する攻撃手段の中でもっともオーソドックスなあの破壊光線をどうにかしようと、アイテムボックスの出入口を同時に二つ、合わせ鏡のように設置することでアイテムボックス内から放たれた攻撃を同アイテムボックスに返却し「攻撃は無駄である」ということを分かってもらおう作戦を決行した。


 その結果。


「……リンゼちゃん。この神様殺意高すぎない?」


 開くと同時に発生した、アイテムボックスの出入口間を繋ぐ光の柱をひたすらにぼーっと眺め続け、既に十分が経過。

 その間にも光には何の変化もなく、ただ破壊の力を無駄打ちし続けていた。


「……シンは、もっと人間想いの優しい子だったはずなんだけど……」


 リンゼちゃんにもこの事態は予想外らしい。明らかに困惑したご様子である。


 私も困惑したいわ。


 どーにもリンゼちゃんに聞いた神様像と現実との乖離が酷すぎる。


 だってこれ、今のとこ私にとっての神様って、破壊光線を撒き散らす災厄の魔物以上の危険物で、かつ女神の関係者だから手出し厳禁とかいう果てしなくめんどくさい存在でしかないんだよ?

 リンゼちゃんのお願いじゃなかったらこんなの、間違いなく再封印して寝直してるわ。


「どうする?」


 このまま続ける? という意味を込めて確認すれば、リンゼちゃんは困り果てたように。


「どう……しましょうか……」


 と途方に暮れていた。


 どうしましょうかって、私が聞いてるんだけどなー。

 でもレアなリンゼちゃんの表情は良いものだ。記憶のメモリーにパシャリしとこう。パシャリ。


 うーん、でも実際このままじゃ埒が明かないし、なんとか矛先を収めて欲しいんだけど……。


 神様って魔力切れとかあるのかな? 私ですら無尽蔵なんだからそんなもんないか。


 やっぱりこの光線をなんとか無力化して――とか考えているうちに、今までに全く変化の無かったその光線に、待望の変化が訪れた。


 アイテムボックスの出入口のサイズとずっと同じ太さだった光が、僅かに細くなったかな? と思った瞬間からみるみるうちに細くなり、やがて完全に消失した。


 部屋がだいぶ暗くなった印象を受けるが、これが正常だ。今までが異常だったんだ。

 ていうか無駄な行いだと気付くの遅すぎィ。神様って実はおバカキャラなのかな。それはそれでかわいい……いや、破壊光線撒き散らすのはかわいくないな。


「出て来た後は任せていいの?」


 とりあえずこれで目的は果たせそうだ。


 女神様からの依頼を済ませればリンゼちゃんも満足。私も安眠が約束される。


 できれば女神様には二度と同じことが起こらないように、神様の手網をしっかりと握っていて欲しいものだ。


 私とお兄様なんて危うく殺されかけたからね! あ、あと天井にも穴空けられたからね!

 いくら女神様とはいえ、飼い主としてペット粗相の責任は取ってもらわなければ。後でリンゼちゃんに賠償請求してもらおう。


「ええ、私が話すわ」


 神様の方は、後はもうリンゼちゃんが受け持ってくれるらしい。


 正直助かる。……てか、神様やっぱり会話できるんだね。


 まあぬいぐるみがある日突然喋り出す世界だし、神様系わんこが喋るくらいは普通なのかもしれない。


 ……でも一応、無事に話し合いが済むまではリンゼちゃんを守れる立ち位置にいようかな。


 ほら、この神様やたら攻撃能力高いし、相手は神様とはいえ獣だし。

 もしかしたら戦いでしか語れないタイプの神様かもしれないからね。もちろんきちんと会話で穏便に話ができるならそれが最善なんだけど。平和的解決って素晴らしい。


 役割分担も決め、リンゼちゃんと二人でアイテムボックスを注視する。


 リンゼちゃんの横に控え、いつまたあの破壊光線が至近距離で飛んできても対処出来るように、《思考加速》もレベルを高めで保持しつつ、注意深くアイテムボックスを見つめる。


 ……いや、ホント早く出てきてくんないかな。


 あのね、さっきの破壊光線だって、まさかあんなに長く続くとは思わなかったから念の為にと《思考加速》発動してたんだよね。いきなり爆発とか起きても平気なように。


 でも思考を加速するってことは、言わば体感時間を長くするってことと同義なわけで。

 つまりね、感覚的にはもう数時間もずーっと同じ光景見せられてたみたいな感じで、集中力とか眠気とかがもういい加減辛いんだよね。

 しかもその前だってお母様に散々精神的に虐められて、その後寝てるところを叩き起されたんだよ? 自分で言うのもなんだけど、私ちょっと頑張りすぎだと思う。


 ――とかなんとか考えながら時間潰してる間に、アイテムボックスからにゅっと白い手が出てきた。


 手に続いて、腕、肩。そして頭。


 金髪碧眼のその男が私とリンゼちゃんを視界に捉えると、すぐに手のひらをこちらへと向けて、そして。


「消えろ」


 淡々とした言葉と共に放たれた白い光が、視界を染めた。


驚きで一度目が冴えようと、身体は疲れているんだ!

……何もしない時間が続くとね、眠気ってほら、波があるから……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ