表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
472/1407

真夜中の託宣


 お母様からの長いながーい尋問を受けた末、力尽きた私はその後、ベッドで目覚めた。


 いや、この言い方は語弊があるね。


 はっきり言おうか。

 疲れきって眠っていた私は、それを知っているはずのリンゼちゃんに無理やり叩き起こされた。


 時間? 深夜の二時だよ。まだ二時間くらいしか眠れてないよ。冗談じゃないよ。


 あのね。人ってね。食べてるところと眠ってるところを邪魔されると、ものすっごい不機嫌になるんだよね知ってた? ねえ? リンゼちゃんは元女神様だから知らなかったかなあ? まあどっちでもいいけど。


 たださあ、これだけは知っておいて欲しいんだ。


 ――今の私は、たとえ相手がリンゼちゃんだろうと物理で怒ろうかと迷うくらいには怒っていますよ、ってね。

 つまらん用事で起こしてたら即叩き出すから覚悟してよね。



 そんなわけで、真夜中に無理やり起こされた私は大変に不機嫌です。


 脳内で正確な時を刻み続ける架空の時計が示す時間は深夜二時を少し回ったところ。


 草木も眠る丑三つ時、ってやつである。


「………………なんのよう?」


 無理やり起こされた反動か、お母様に長時間拘束された疲れが残っているのかは知らないが、どーにも頭が重い。思考がぼやけている感じがする。眠い。


 ってゆーか侍女だろ。時間考えろよバカなの。てか警備とかどうなってんだ、なんて様々なことが頭をよぎり、遅れて追いついた思考が疑問に解答を導き出す。

 私の身体は寝てる時が一番頑丈だから警備なんかいらないし、いざとなればフェルたちがいる。ならば警備は不要と考えて、夜はみんなで休むべきだと他ならぬ私が強く訴えていたのだった。


 ……深夜の見回りがあると、割と頻度の多い深夜のひとり遊びをする時に、覗かれたり声を聞かれたりといったリスクが……という真の理由は、誰にも知られてはいけない秘密である。


 それはともかく。


 深夜に起こすならそれなりの理由があるのだろう。というかなかったら怒る。


 ベッドに寝たままの姿勢で見上げたリンゼちゃんは、珍しく慌てているように見えた。


「ソフィア、以前に災厄の魔物が空から光を降らせてきたと言っていたわよね? あれがシンだった可能性があるの。今すぐに確認して貰えない?」


 これは間違いなく慌ててますわー。


 私がまだちょっと寝惚けてるにしたってこれは分かるぞ。

 リンゼちゃんが慌てるあまり、なんか変な事を言っているって。


「……シンってなに? どうやって確認するの?」


 あの日、あの光を凌いで帰った後。話が違うとリンゼちゃんに改めて確認した時だって「そんな攻撃手段は持っていないはずよ」って自信満々に言ってたのに。


 ああ、もしかして女神様本体との連絡がやっとついてわざわざ確認してくれたのかな? そこで何か言われた感じ?

 リンゼちゃんの方から女神様に連絡できないのって地味に不便だよね。大抵の事はリンゼちゃんが知ってるからあんまり困ることもないけど。


「シンは神よ。確認はアイテムボックスを開いて……」


「え? いやだ」


 神? 神って神様の神?

 よく分かんないけど、あの化け物をもう一度解放してわざと攻撃させろなんて言ってるなら丁重にお断りさせてもらおう。


 断固として拒否を示し、わがまま言うなと迫るリンゼちゃんと何度も会話を重ねた結果、どうやら言葉足らずのリンゼちゃんのせいで私は勘違いをしていたらしい事が判明した。


 つまりだね。

 リンゼちゃんが今日のお仕事を終えて眠りについたら、夢の中で女神様本体から接触があったと。

 その話によれば、シン(という名の神様)の気配が突然消えて、世界のどこにも存在しなくなってしまったと。

 どうしたんだろうと過去の事象を確認してみたところ、災厄の魔物目掛けて超高々度から蹴りを喰らわそうと飛び込んで、しかし何故か接触間際に忽然と消える姿を見たと。

 神をも消滅させる魔物が生まれたのかと恐々と災厄の魔物を見守っていたら、その災厄の魔物も忽然と消えたと。空気に溶けるようにして巨体がみるみる内に消えてしまったと。

 初めて見る事象に何が起こったのかと戦慄していたら、魔物の消えた空間の近くからこれまた突如、不自然な魔力の乱れを感じたと。

 よくよく目を凝らしてみれば、そこには周囲の風景に溶け込むようにして、どこかで見た事のあるような銀髪の女の子がいたと。若い男と空でイチャイチャしている場面であったと。そういうことらしい。



 それ私ですね。


 や〜〜〜そうかぁ〜〜〜お兄様とのイチャイチャ見られてたか〜〜〜。


 これを機に「女神公認カップル」ってことにしてなんとか……いや、無理かな……。でも……。


 お兄様との仲をなんとか公認にできないかと画策してたら、痺れを切らしたリンゼちゃんに迫られた。


「分かったら早くシンを解放してくれない?」


「解放?」


 シンって行方不明の神様だよね? 確か災厄の魔物に飛び込んで……、って……。


 一気に目が覚めた。


 もしかして、あの光って、まさか……?



 ………………私、神様誘拐しちゃった?


ソフィアが睡眠時には防護魔法を強化している事を知っているリンゼの「叩き起こす」は文字通り顔面を思いっきりバシバシひっ叩くらしい。惨い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ