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ロランド視点:引けない理由


 母上が僕に辿り着いた道筋は、はっきり言ってめちゃくちゃだ。


 全ての道は途絶えている。辿り着く為に必要なピースが足りていない。


 だというのに、結論だけは間違えない。


 これが直感だというのなら、女の勘というものは中々馬鹿にできないものだと気をつけるべきなんだろうね。


「ソフィアの為だというのは分かっています。けれどやりすぎはいけません。ましてや他人を巻き込むなどと――」


 情報が足りなければ、真実は知り得ない。

 母上から見た僕はどのように見えているのだろうか。


 ソフィアを結婚から遠ざける為だけに国王を操った、なんて思われていたら少しショックかもしれない。


 口に出して確かめた訳では無いけれど、僕と母上は共にソフィアを守る為に行動する同志のようなものだと思っているんだ。


 肩書きの少ない僕の方がしがらみは少なく、その分取れる選択肢が多いのは事実ではあるが、だからといってどんな手段でも用いて良いと考えている訳では決して無い。


 ――もしも裏で工作していた事がソフィアにバレたとしても、ソフィアの精神的負担にはならない範囲で動く。


 これは絶対条件だ。


「認識の相違ですね。やり過ぎないために、今のうちに予防したと考えてはもらえませんか? 彼らを放置していれば近い未来には必ずソフィアへと無理な要求を突き付けられた事でしょう。その前に彼らの支配下から脱する必要があった。僕の行動は絶対に間違ってはいなかったと今でも断言出来ます」


 無茶をした自覚はある。しかし、それでもする必要があったんだ。


 代替案があるならまだしも、ただ彼らの立場が()()()()ソフィアよりも高いというだけの理由で非難するなら、それは聞く価値の無い言葉でしかない。


 ソフィアがつい先日討伐に成功した災厄の魔物だって、本当なら王都が危機に瀕してから討伐して欲しかったくらいだ。


 だが、心優しいソフィアを想えば、その方法は選べなかった。


 災厄の魔物が王都に着くまでの道中にある村が。そこに住む人々が、恐らく命を落とす。

 王都にだって多大な被害が出る。それがソフィアの友人、またはその親族、関係者の可能性だってある。


 ソフィアが「私がもっと早く動いていれば」と心を傷める事になる。そのような選択肢は選べなかった。


 ……だがそのせいで、ソフィアの認識は「凄いと噂の少女」止まりだ。


 災厄の魔物と対峙した僕には分かる。

 アレは正に「人類を破滅させる為に産まれたモノ」だと。


 ソフィアの魔法による精神の保護を受けてもなお本能が鳴らし続ける警鐘、恐怖心、絶望感。

 実践で魔物を何体も討伐し、優秀だ有望だと褒められたところでそれらが何の役にも立たないと一瞬で理解させられる圧倒的な存在としての格差。


 近い将来、確実に王国を滅ぼしたであろうソレを、ソフィアは僕の身を守りながら必死に討伐したというのに……城で報告を聞くだけの者たちに、その偉業は伝わらない。ただ「恐ろしい魔物を討伐した」との一文で処理される。


 ソフィアはその結果に、不満はないようだけど……僕には納得できなかった。


「ロランド。急激な変化は周囲へと与える影響が大き過ぎます。もっと長い目で見ることは出来ませんか?」


「母上。ソフィアの価値は、他の誰よりも高い。これは僕の主観の話ではなく、女神から目をかけられた事などから判断される純然たる評価だ。周りがソフィアに合わせるべきなんだ。ソフィアは正しく特別であると、周りが理解しないといけない。その理解が広まるまでの居場所を僕が用意したに過ぎないんだ」


「あくまで必要な事だったと?」


「ええ」


 身を削って世界を救い、けれど誰にも理解されない。


 そんなのは人の役目ではない。それこそ女神や神に類する超常の存在が担うべき役割ではないのか。


 ソフィアがなすべきことでは無い。

 だというのに、周りはそれをソフィアに求める。


 力があるのだからと、愚かしくも無責任になすりつけ……ソフィアはそれに、応えてしまう。


 止められないんだ。ソフィアが優しすぎるから。


 全てを理解した上で、何の見返りもないというのに、目の前で救いを求める声を見過ごせない。ソフィアは自ら全ての責任を被りに行く。


 なら、もう、仕方がないじゃないか。


 僕なりにソフィアの助けになる。そんなことしかできない。

 その為には、なりふりなんて構ってはいられなかった。


 せめて、ソフィアに安らげる空間を。

 ソフィアが傷ついた時には弱さを吐き出せる場所を作ろうと思ったんだ。


 ソフィアを責める者は誰もいない。ソフィアが大好きな、ソフィアを甘やかしてくれる人だけが揃った空間。


 ――【神殿】。


 ……やっとここまで来たんだ。僕だって止まるわけにはいかない。


「母上とはこれからも良い関係でありたいと思っています。質問があれば答えますよ。もちろん、答えられる範囲でですが……」


 母上とは、きっと相入れることはないのだろうけど。


 それでも、ソフィアの幸せを願う気持ちだけは、絶対に同じはずだから。


ソフィア編との温度差が酷い。

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