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ラスボスこわい


 いつもとは何かが違う、そんな呼び出しを受けた先で待ち構えていたお母様は、びっくりするくらいラスボスだった。


 間違えた。


 ラスボスかと見間違うほどに、びっくりするくらい剣呑な雰囲気で私を待ち構えていた。


 泣いていいかな?


「ソフィア……貴女はやっていいことと悪いことの分別がつくと、そう思っていました。だからこそ、ある程度の自由は認めてきたつもりです。……ですが、どうやらそれは間違いだったようですね」


 しかも開口一番、話を始めると同時にお得意の無言の魔法でフィールドを作り、どれだけ貴族として相応しくない罵倒をしても外には聞こえないようにするほどの念の入れよう。


 どうしよう。

 ガチギレお母様が怖すぎて何に怒ってるのかも聞けない。


 わ、私は確かに悪いこともするけどぉ。でもそれはちょっとしたお茶目っていうかなんていうかそのぉ。


 お母様がそこまで怒るような事はしてないと思うんですうぅぅぅ私小心者なので!!! きっと何か誤解があると思うんですよぉぉおお!!


 とは思うものの、ひりつく様な空気に呑まれて言葉が出ない。


 冤罪ってこうやって生まれるんだなと実感した。


「まずは聞きましょう。貴女が王国に不満を持ったのは、その魔法の力が認められないせいですか?」


 不満とか持ったことないです。


 学院は楽しいし、美味しい食べ物も沢山あるし、住民はみんな優しいし。


 魔法の力が認められないって言っても、そんなの魔力視ができる一部の大人が「魔力が見えない!? なんだこの子供は!?」って勝手に驚くのが面倒なくらいで、そもそも私の魔法を誰かに認めさせようだなんて思ったことない。


 誰に認められなくたって好き勝手に使ってるし、「お前はもう二度と魔法を使うな!」とか強制されたらそりゃ対策を考える必要はあるとは思うけど、今のとこ誰かにとやかく言われたりはしてないので不満を持つ理由もない。


 ってかこれ何の話?

 そもそもこの世界って王国以外に国あんの? 他の国に出奔もできないのに不満持ったからってどうなるもんでもなくない?


 お母様の質問の意図をどう理解するべきかと熟考していたら、その沈黙は別の意味に解釈されたようだ。


「……話す気はありませんか。そうですか」


 ゾックゾクするぅ〜〜ッ!!


 なんだ今の声。一瞬で心臓が凍ったかと思った。

 死神に魂を掴まれたってあそこまでヒヤッとはしないでしょマジヤバ。


「いえあの、王国に不満を持ったことはないです。ハイ」


 考えるのは後だ、後回し! 逐一返事しないと即死する!


 今日のお母様は激ヤバが極まっておられる。こんな状態で悪い子認定を食らったら話を切り上げられて問答無用で断罪されるんじゃないか?

 私のいい子成分を今こそ結集させねば今日が命日になるかもしれない。頑張れ私の演技力。死にたくなければお母様の理想の娘になりきるしかないのだ!!


「『王国に不満を持ったことはない』。そうですか。いえ、貴女なら本当にそういった認識なのかもしれませんね。現状を自分の理想通りに塗り替えられる貴女ならば、生きていく上で不満な事など何一つないのでしょう」


「いえ、そんなことは……」


 って言うしかなくない? さっきから何の話なのこれ。


 不満とかめっちゃあるよ。ありまくるよ。

 なんなら今こうしてお母様に理不尽に責められてる事が正に最大級の不満だよ。口が裂けても言えないけど。お母様が怖すぎて顔にすら出せないけど!


 そもそも不満なく生きてる人とかいないでしょ。私だって普段からそこそこ文句言ってるつもりなんだけどただのポーズだと思われてた? 実際には何の悩みも不満もない脳内お花畑って?

 お母様にそんな風に思われてたんだとしたら、それこそ特大級の不満なんですけど。不満の権化になるのも辞さない……けど、今のお母様と言い合える程の不満パワーではない、かな。

 見られてるだけであらゆる反抗心が挫けていくよぅ……。


 それに『理想通りに塗り替える』ってリンゼちゃんが言ってた私の魔法の特殊性の話? あれって他の人には話さない、話せないってリンゼちゃん言ってたのに。


 リンゼちゃんの裏切り者め〜……と思ったけど、お母様とリンゼちゃんってリンゼちゃんの方が立場が上なんだよね。だとしたらあの事は話してないって考えるのが自然だ。


 なら、なんだ? お母様は何に怒っている?


 私が、王国に不満を持って、好き勝手にした? お母様の怒りを買うような悪事を?


 うーむ、心当たりがない。やっぱり誤解なんじゃないかなあと思うんだけど。


 そんな言葉が果たして、怒り心頭のお母様に聞き入れて貰えるだろうか……と思い悩む私に、予期せぬ光明が差し込んだ。


「……私の怒りは筋違いだ、という顔をしていますね」


 まさかお母様の怒りが緩むとは!!


「えっと……、……はい」


 その通りだ! と飛び付きたい衝動を堪えて「実はそうなんですぅ」とばかりに弱々しく答えた。



 ここからの返答次第で私の処遇は決まるだろう。


 折角掴んだチャンスだ。慎重に行かねば……!


怒られてる最中にも常に「このお説教は見当違いな気がする……」と素直に反省しない系女子のソフィアさん。

叱る側の苦労が偲ばれる……。

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