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うちの子かわいい


 あんまりにも可愛らしい反応をするアーサーくんの頭を撫でてあげようと手を伸ばしたら、びっくりするくらいの超反応で距離を取られた。ソファの端までずざざざっと後退してった。なんという逃げっぷりか。


 あんまり追い詰めて嫌われても困るし、さっきのイチャイチャで大分満足したからいいけどさ。こうもあからさまに拒絶されると傷付くよね。


 ……まあ、つい興が乗ってやり返しちゃったのが、ちょぉーっとだけ苛烈だったかもしれないけど。


 でもいくらアーサーくんが幼いとはいえ、男の子が女の子の身体に気軽に触れるのはそれだけ罪の重いことだったと思うんだ。


 だってあの時、私が反撃しなかったらアーサーくん、こしょこしょするの止めてくれなかったでしょ?


 反撃もせずにあれ以上くすぐられていたら、私だって我慢できた自信はない。女の子にあるまじき声を上げて、はしたなく暴れる羽目になっていたかもしれない。


 アーサーくんへの反撃は、いわば女の子の矜恃を守るために避けては通れない道だったのだ。


 そうとも、私は悪くない。

 むしろアーサーくんに活躍の機会を上げたと言えるかもしれないね。


 女の子としての譲れない一線。

 私という女の子に恥をかかせない為に、アーサーくんは尊い犠牲となる道を選んだのだ……って、私が選ばせたんだけどね。てへり。


 まあ、もっとも。

 そんなことになったのも、最初に脇腹をつんつーんってしてきてそのまま調子に乗ったアーサーくんのせいなんだけどさ。


 ともあれ警戒心バリバリのアーサーくんをこれ以上愛でるのは難しそうなので、代わりにさっき呼び出したフェルを愛でることにした。


 この世全ての「かわいい」は愛でられるために存在するのだ。


 ソファの背に乗って鼻をスンスンと鳴らしているフェルにおいで〜と手を伸ばせば、腕を伝ってきて膝の上で丸まる愛しきマイペット。


 スカート越しに感じるぬくぬくの体温と、いつまでも撫でていたくなる手触り抜群の毛並みがもお最高。


 はあ〜〜〜かわいい。うちの子かわいい。天国はここですよ〜。


 夢見心地のままに、フェルは本当にかわいいね〜とひたすらに愛でていたら、突然手の中から逃げ出されてすぐに我に返った。


 いけない、無神経に撫で過ぎたかな? と思ったけど、どうやら杞憂だったようだ。


 私の膝上から抜け出したフェルはテーブルにでんと置かれたクッキーの大皿にいち早く飛びつき「これ食べてもいーい? ねえこれ食べてもいーの!?」と言わんばかりのキラキラした眼で私を見上げていた。この食いしん坊さんめ。


 許可を出した瞬間には食べ始めてるその目にも留まらぬ早業。お母様が見てたらはしたないって叱られそう。


 でも顔より大きいクッキーを両手で掴んで食べる姿がちょーかわいいから許しちゃうかもね!


 正にかわいいは正義。いつまでも見ていられる愛らしさである。


 でねでね。こーんなかわいいフェルの姿に魅了されてるのは当然、私だけじゃなくってさ。


 お菓子を用意してくれたシャルマさんも微笑ましそうに見てるし、ヘレナさんもいつの間にか手が止まってじーっと見てるし、何よりアーサーくんがさ! さっきからフェルのこと触りたそうに手をうずうずさせてんの!


 その可愛らしい姿を見れただけでおねーさんはもう満足ですよ。

 今なら不意打ちで抱き締めるのも簡単に出来そう。しないけど。


「その子、ソフィアちゃんのペットよね? 学院に連れて来ていたの?」


 見ているだけで幸せ空間に浸っていたら、興味深そうにフェルを見ていたヘレナさんからなんとも困る質問が飛んできた。


 別にねー、ヘレナさんには話してもいいんだけどねー。

 アイテムボックスを移動手段にも使えるってことは、既に似たようなので見せたことあるし?


 でも今日は、私の魔法のことを何も知らないアーサーくんがいるからね。


 私はアーサーくんの前で一般的でない魔法を使うつもりは無い。


 アーサーくんにとっての私は、なんでも知っててなんでもできる、すごいきれーなおねーさん。これよ。

 訳わかんない魔法を使う人外枠になんてされた日には泣くわ。


 故に、ここは誤魔化し一択なのです!


「たまに着いてきちゃうんですよ〜。でもほら、かわいいでしょう?」


 一心不乱にクッキーを食べ続けてるフェルの尻尾を、ぷらーん。


 持ち上げてもー、降ろしてもー。左右にフリフリしたって無反応〜。どう、かわいいでしょう?


「なあ、ソフィア。そいつ触ってもいいか?」


 おや、アーサーくんが釣れた。これは嬉しい誤算だ。


「うーん。本当は許可してあげたいところなんだけど、でもアーサーくんにはさっきイジワルされたからなぁ。賢者様の事も教えてくれないみたいだしー?」


 フェルに触りたければ、どうすればいいか分かるよね? とチラチラ見てたら、呆れた溜息を吐かれた。


「分かったよ、教えるから。……ソフィアってガキだよな。大人げねーの」


 そして付け加えるようにぼそりと呟かれたアーサーくんの、その一言が耳に刺さる。


 ……ガキでごめんねぇ。


フェルを愛でつつ、クッキーの回収にも余念のないソフィアちゃん。

後でエッテにもあげないと拗ねちゃうからね。飼い主さんは大変なのだ。

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