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アーサーくんとはとっても仲良し


 脇腹を丹念に揉みほぐしてくれた愛すべきショタ、アーサーくんに、それはもうたぁっぷりとお礼をして「ごめんなさい」の言葉を引き出した後。


 二個目のケーキを堪能していた私を見て、ヘレナさんが呆れたような声を上げた。


「ソフィアちゃんって、アーサー様にも遠慮が全然ないわよね……」


「アーサーくんとは仲良しなので」


 さっきのは危うくやり過ぎちゃうくらいの仲良し振りだったね。反省反省。


 だってアーサーくんが中々ごめんなさいしないからさー。

 往生際悪くいつまでも暴れ続けるもんだから、こっちもつい熱が入っちゃって、みたいな?


 まあ最終的にはアーサーくんとも和解出来て、あれは正当防衛であり、アーサーくんが起こした行動による自業自得だということを納得してもらったから何も問題はないはず。


 はーあ、やっぱり適度な運動のあとの一杯はさいこーだよねー。


 ダージリンの味と香りを心ゆくまで楽しんでから、ケーキの最後の一欠片にフォークを突き立てた。


「ソ、ソフィアめぇ……」


 おや、アーサーくんが復活したかな?

 すっかりおやつモードに切り替わった私を見てなんだか不満そうにしている。これはいけない。


 おやつの時間は楽しくあるべきだ。


 美味しいお菓子に最大限の敬意を払い、目と舌で楽しむのは当然として、フォークを入れた時の触感と、鼻腔を抜ける香りに食べた時の音まで含めた五感の全てで。全神経をお菓子に傾け、甘味への感謝を捧げながら食べるのが本来のスタイル。

 美味しいお菓子が食べられることへの感謝を決して忘れてはいけないのだ。


 ……さっきまでその大切なお菓子様がピンチに陥るような、アーサーくんが暴れる原因を作っていた私が言うのもなんだけどね!


 ちゃんと机には被害が及ばないように気を付けてたからこうしてケーキも無事だった訳だし。過ぎたことに囚われすぎるのも良くない。


 大切なのは、今。


 疲れきって動くのもやっとな状態のアーサーくんを、どうやって可愛が……ごほん!

 どうやって労うのかということだ。


 アーサーくんだし、とりあえず餌付けでもしようかね。


「ほら、アーサーくん。あーん」


 睨んできてる目の前でむぐむぐお菓子食べてたら煽ってるみたいに見えるかなー、となんとなく食べづらかったケーキを、アーサーくんの目の前に差し出してみた。


 ソファの背に乗って今にも掠め取って行きそうな程に身を乗り出しているフェルを目だけで制し、ほーらほーらとアーサーくんのお口に入国申請を繰り返す。


 んー? 恥ずかしいのかなー?

 大丈夫だよ、食べちゃえばそんな恥ずかしさはすぐに忘れちゃうからねー。


 というか早くしてくれないとフェルの我慢が限界そうでやばい。


 折角のチャンスだったけどまたの機会にするかと諦めかけたその時。

 離れていきそうなケーキを見て、固く閉ざされていたアーサーくんの口が僅かに開いた。


「……あ、あー……む」


 おずおずと開かれたお口に、すかさずにケーキを投入。


 で、一言いいかな?


 くっっっっそかわええ。なんだこの生き物。

 あれかな? おねーさんとの関節キスが恥ずかしかったのかな? 降参するまで生意気な憎まれ口ばっかり叩いてたのに随分とまあ大人しくなっちゃって。おねーさんに襲って欲しいのかな? 恥ずかしそうに目を逸らす姿が誘ってるようにしか見えないんだけどそういうことでいいのかな??


 いいわけないよね。


 なんとか深呼吸をして高鳴る鼓動を落ち着かせた。


 これだからイケメンは。

 子供の癖になんて駆け引きが上手いんだ。これだからイケメンは!


 顔の火照りを冷ますためにお茶を飲みつつ、心の安定を図った。


 はー……。眼福でしたわ。


「キュウ。キューウ」


 あ、そうだったね。


 いつの間にか膝の上に移動してきてたフェルのおねだりで我に返った。


 アーサーくんの可愛さに当てられて、少し冷静さを欠いていてみたいだ。


「そういえばアーサーくんは、なんで急におねーさんのお腹をつんつんしてきたの?」


 フェル用のお菓子と私用のおかわりを頼みつつ、楽しいお遊戯の発端となった原因について尋ねる。


「ぷにぷにで柔らかそうだったから」とか言ったら次は泣いても止めないから覚悟しろよ。と心の中で呟いた声が聞こえたわけでもないだろうけど、笑顔の裏に忍ばせた不穏な気配は感じ取ったのか、気持ち背筋を伸ばしたアーサーくんがそれでも気丈に切り出した。


 この子私のツボ突くの上手すぎないかね。天性のいじられっ子オーラを感じる。


「ソフィア、【探究】の賢者こと知りたがってただろ? だから教えてやろーかと思って……」


 アーサーくんいい子すぎない?


 もう普段の生意気なポーズも私の気を引きたいが為にわざとやってるんじゃないかって気がしてきたよ。おねーさんを虜にしてどうする気だい? この悪い子めー。


「でもムカついたから、やっぱ教えるのやめた」


「あは」


 天然でこの駆け引き。やっぱり天才じゃなかろーか。


 アーサーくんが素直に教えてくれる気になるまで、また可愛がる必要がありそうだね?


そこの自称おねーさんや。

年上振るのは自由だけど、その態度がより子供っぽく見せてる事も自覚した方がいいんじゃないですかね。

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