表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
454/1407

ネムちゃんのいない剣術


 教師に話を聞いたところ、やはりネムちゃんはお休みらしい。

 というか、しばらく休むとの連絡が既に入っており、復帰がいつになるかは学院側では分からないとのこと。


 想像以上にがっつり休んでた。


 なんだろ、インフルエンザ……があるのかは知らないけど、似たような感染症だったら私と会えた理由が無いし、家族旅行の為、なんてほのぼのな理由も同様の理由で却下。

 だとすると、そこまで酷い病気ではないけれど、念の為療養中、とかが無難、かな……? あのバクバクお菓子食べてたネムちゃんが? ないよね。


 休んでる理由は不明だけど、元気なのは確かっぽいからいっか。戻った時にでも本人に事情を聞くことにしよう。


 しかしこれは困ったことになった。


 ネムちゃんがいないとなると、教室の賑やかさに欠けるだけではなく、あらゆる場面で普段とは違った対応が求められる事になりそうだ。


 普段からどれだけネムちゃんと一緒にいるのかがよく分かるね。


 さしあたっての問題は、次の授業が剣術だということだろうか。


 問題と言うほどのことじゃないと気楽に構えていられればいいんだけど……見つからないように端っこにでもいれば大丈夫かな……?


「あれ、ソフィアまだ教室にいたの? 早く着替えないと!」


「うん、今行くー」


 ま、あれこれ考えてたって、なるようにしかならないよね。


 クラスメイトの声に促され、着替えを持って教室を出た。



◇◇◇



 私は神に愛されているのではなかろーか。


 まさかこんな完璧なポジションが取れるとは夢にも思わなかった。


 ミュラーたちと先生。

 そのどちらかには捕まるだろうと考えてたのに、まさか両方から視線を切れる位置取りに成功するとは。これは普段の行いの勝利と言えよう。


「あ、カイル。あんまりその位置から動かないで。先生から見えちゃうから」


「……邪魔するようなら先生に報告するぞ?」


「ごめんなさいそれだけはやめてください」


 まあ、壁のひとつが生意気なのは減点だけど。


 今日も剣術の授業は実践あるのみ。

 戦って戦って戦って、疲れ果てても戦って、倒れたら起き上がってまた戦う。

 それこそが強くなる唯一の道だと信じて疑わない先生による熱血指導が、今日もまた始まっていた。


 しかし、「でも〜、私ってほら、か弱い女の子だから〜。そーゆー汗だく系はちょっと〜」みたいな女の子は結構いる。というか、殆どの女子はそうだ。

 結婚相手を探しに学院に来ているというのに、わざわざ男子の前で必死に汗水垂らす姿を見せたいなんて思う女子がいるわけがない。むしろ目的はその逆をゆくもの。


 大多数である彼女たちは自分たちに良い所を見せようと必死になってアピールしている男子たちを物色し、気に入った男子がいたらタオルを差し出し「お疲れ様。カッコ良かったよ♪」と自らの存在をアピールする為だけにこんな汗臭い授業に出ているのだ。


 もちろん真面目に剣術の腕を鍛えてるミュラーやカレンちゃんを筆頭に、護身術程度にはと頑張ってる子たちもいるけどね。


 私から言わせれば男子と女子のありがちなやりとりは見ているだけでそれなりに楽しいし、アピールの仕方にも個性があってこれはこれで勉強になる。


 あと、そのね。クラス全員が私基準では美形ってのも評価が高いっていうかね。


 やんちゃざかりの男子たちの、髪が汗で張り付いてたり、襟元を引っ張って仰いでたり、赤い顔で息を荒くしてたりとかする姿ってのは……その、いいよね。なんか、うん。ちょっと込み上げるものがあるよね。ちょっとだけね。


 別に変な意味は無いんだけど、汗ってほら、異性を寄せ付けるフェロモンでもあるわけじゃん?

 多少はそんな気分にもなるというか、普段はネムちゃんと女子グループのトコにいるから気付かなかったというか、男子とはいえこれだけ近くで運動してると、その熱気がダイレクトに伝わるというか……ううむ。なんとも変な気分だ。


「……ソフィア、どうした? 気分が悪いのか?」


 顔が赤くなってないかと俯いたりしていたからだろうか。

 心配した様子のウォルフが模擬戦を切り上げて声をかけてきた。


「や、大丈夫。なんでもないよ」


 うん、なんでもないなんでもない。

 あろうことか運動して少し上気したウォルフの顔に色気を感じてしまっただなんて、そんなことあるわけない。ドキドキなんてしてないったらしてないんだから。


「そうか? 無理はしないようにな」


 身体に不調は無いことを強調すると、それだけ言い残してウォルフは去っていった。


 ふう、助かった。いや助かったってなんだ。

 私は少しあの、なんだ。そう、男臭いのに当てられて、変な気分になってるだけだ。


 この位置ダメだわ。他のグループから視線が通りにくいのはいいけど、風下なせいで男子の臭いが全部来る。


 カイルのグループから離れて別の場所に移ろうと少し移動したところで、ミュラーがこちらを見て、手招きしているのに気がついた。


 目が割と据わってるように見える。


 ……ウォルフとのやりとり、見られたかな?


熱血教師に目をつけられた生徒はその授業中、片時も休憩時間が与えられないとか。

「限界を超えた先に筋肉は微笑むッ!!」らしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ