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一番楽な授業中


 朝のお遊びは、始業開始と共にお開きとなった。


 とりあえず、聖女という呼び名が広がるのは阻止出来たと思う……思いたい……できてたらいいな……。


 うやむやになった感じではあるが、今まで通りの呼び方がいいと主張はできたので、あとは優しいクラスメイト達のことを信じるとしよう。


 当然、ある程度の対策はさせてもらうこと前提だけどね。



 っはあー、しかし朝から疲れた。


 まさか王妃様が大好きな聖女ちゃん呼びがクラスにまで広がってるとは思わなかったからなあ。あの人の情報拡散能力はどうなってんだか。

 王妃様は私の精神をゴリゴリと削る天才ではなかろーか。


 これはもう、カレンちゃんに癒してもらわなければやってられませんよー……。


 とはいえ真面目に勉学に勤しむカレンちゃんの邪魔をする気はさらさら無いので、先生が別の資料を取り出している僅かな時間を狙ってそっと紙を差し出すのみに留めた。


 紙には暇を持て余した私がこの授業中に描いた「四コマうさぎちゃん」シリーズの最新作が描かれている。


 今回の内容は、主人公であるうさぎちゃんがお友達のくまちゃんと遊ぼうとやって来たものの、肝心のくまちゃんはお休み中。揺り起こそうとしたら寝ぼけたくまちゃんに手を食べられそうになってびっくり仰天、というものだ。


 カレンちゃんは、私の渡した物が四コマうさぎちゃんだと分かると嬉しそうな顔でこちらを見てニコニコし、四コマ漫画を読み始めると目を見開いて驚き、次いでほっとしたように微笑み、その後に一息ついて「面白かったよ」と笑顔と共に小声で感想を伝えてくれた。

 ころころ変わる表情といい、可愛らしくてとても癒されました。


 カレンちゃん、このくまちゃんが好きなんだよね。怪力なところに親近感が湧くのだとか。


 理由はちょっとアレだけど、私のあまり上手とは言えない絵でも喜んでくれるのは素直に嬉しい。カレンちゃんはやっぱり天使だと思う。


 さて、カレンちゃんのお陰で元気が出たし、私もそろそろ真面目に授業を受けるとしますか。


 黒板に所狭しと書かれた問題を……順番に暗算で解いていって……と。


 よし、勉強おーわり。やっぱり算数レベルじゃ五分も使わないや。


 あんまり舐めすぎてると気付かないうちに知らない事を聴き逃したりするんじゃないかと考えてた時期もあったけど、幸か不幸か、この一年近くでそんな事態は一度もなかった。


 私にとっての授業の時間ってもう新しい魔法のイメージを明確にする時間になっちゃってるんだよね。


 でも今日は、もうちょっと癒されてたい気分。

 折角新作の漫画も描いたことだし、後でこれみんなに見せて感想でも聞こうかなー。ネムちゃんとかもこの四コマ気に入ってくれてたもんなー。


 うむ、実にいい案だ。ぜひとも採用しよう。


 そうと決まれば、休み時間になったらすぐにネムちゃんの元に……と、そういえば今日はネムちゃん見てない気がするね?


 改めて教室中を見回してみたけど、やはりネムちゃんの姿は見当たらない。


 これは休みか。お休みですか。

 ネムちゃんの無邪気パワーは抜群の癒し効果をもたらしてくれるというのに、またお休みなんですか。


 てかネムちゃん最近休みすぎじゃないかな?

 こないだおっさん(アドラス)の研究室でめちゃくちゃインパクトのある会い方したけど、その前からずっと休んでたみたいだし。


 ……ネムちゃんってああ見えて、結構勉強好きだったはずなんだけどな。


 あんまりにも長く休みが続くと不安になってくる。

 まさか変な病気にかかってたりするんじゃないか、なんて……まさかだよね?


 毎日家で病人の人を見てるからか、どうにも悪い方へと考えがいっちゃうな。


 たとえネムちゃんが珍しい病気にかかってたもしても、ネムちゃんの師匠はあの【探究】を冠する賢者なんだから。病気の治療法くらいいくらでも知ってるに決まってるのに。


 だからまあ、この不安は、私の考えすぎだ。


 あの災厄の魔物に危ない一撃食らいかけてからどーも悪い方に考えちゃう癖がついちゃったみたいなんだよね。


 最悪を想定する慎重さは元からと言えば元からなんだけど、前はもっと淡々と、最悪も想定できてたんだけど……。ううむ。自分のことながら情けない。分からないことをうじうじ悩んでたって無駄でしかないのに。


 どうせならもっと楽しいことを考えよう。


 うーんと、そうだなー。

 楽しいこと、楽しいこと……。あ、そうだ。


 今日のおやつはキャラメルシロップを垂らしたパンケーキにしてもらおう。


 甘味は幸せの味だからね。うふふ。


四コマうさぎちゃんを初めて書いた日にはフェルからの抗議が凄かったとか。

その日の晩はメリーとフェルの喧嘩が今までで一番激しかったとかなんとか。

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