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持たざる者の戦い方


 例えば、そう。人工呼吸。


 歴とした医療行為でありながらも、その被術者と施術者が異性で、しかも知人であった場合などは特に、それだけでは割り切れない想いが生まれるドキドキの救命行為。


 私がしたのもそれじゃないかと思うんだよね。



 謎の光が急接近してるのに気付いて、思わずお兄様を抱き寄せた。


 ……抱き寄せたんだ、胸に!!

 私の慎ましくも確かな柔らかさを感じさせる(はずの)胸に、お兄様の顔を! 強く!! 押し付けたんだ!!!


 お兄様の顔が見れない。


 顔から火がでそう。ってか出てる。これはもう確実に着火してるね。

 だって手がっ! 顔に触れてる手がちょーあっつい!! 顔ってこんな温度にならなくない!? ねえ!!?


 あああぁぁ……緊急時だったとはいえ、私はお兄様になんてことを……。


 これでもしお兄様に「今のって、胸……? だよね?」とか「あばらが痛かった」とか言われたら私、立ち直れる自信がないよぅ!

 せめてお兄様の頭を押し付けたのが下半身、お腹とかならまだ言い訳も……少しは……、………………。


 ……下半身に押し付けるよりは、胸の方がまだマシな気がしてきた。

 押し付けたのが胸でよかった……のか? んん?

 なんだか混乱してきた。


 ……そもそも! 妹の胸に顔を埋めたくらいでお兄様が恥ずかしがるかってのも微妙なとこだし、クールなお兄様ならスルーされるような気もするけどでも無反応だったらそれは流石に傷付くというか……っ!


 考え出したらもう、お兄様の反応を確かめずにはいられなかった。


 赤くなった顔は上げずに、ばれないよーに、ばれないよーにこっそりと……チラリ。


「………………」


 おや、お兄様も俯かれていて、なんだか気まずそうな……というか……。

 これは、照れてる? もしかして照れてらっしゃる? お兄様も照れていらっしゃいますね?


 だとしたら、私の貧相なおっぱいとも呼べないようなただの胸でも、多少は女を感じさせられたということだろうか。お兄様を恥ずかしがらせる程度の戦闘力はあったとみていいのだろうか。

 もしそうだったら……、嬉しいな。


 ……そっか。お兄様が、私の胸で。ふふ。


 ……ひゃーっ、照れる! これは照れるぅ!

 気にされないのも辛いけど、気にされるのもそれはそれで辛いものがありますよぅ!


 なんとも表現しがたいむず痒さを感じて、思わず身体をくねらせてしまう。


 いやー、でもそっかあ。お兄様が私の胸で……むふふ。


 小さい胸が好きなら好きと言ってくだされば、いつでもソフィアがサービス致しましたのにぃ。


 でもそーですよね! お兄様はただデカいだけの胸に惑わされるそこらの男どもとは違いますもんね!


 駄肉にしか目がいかない即物的な獣たちにはロリコンと罵られることもあるかもしれませんが、それでもソフィアはお兄様の選択が決して間違ったものでは無いと断言出来ます! だって胸なんて妊娠したらある程度は勝手に膨らむものを勘定にさえ入れなければ、若くて綺麗な子に惹かれるのは至極当然のことで……あれ?


 そこまで考えて、初めて気付いた。

 人には趣味嗜好があり、お兄様にも当然、好みの女性のタイプがあるはずだという当たり前のことに。


 そしてお兄様の好みが、いと小さき胸(ちっぱい)である可能性に……。


 こんな大事なことに今まで気が付かなかったなんて、私は本当にどうかしていた。

 もしもお兄様が真に持たざる者(ちっぱい)が好きなのだとしたら、私は絶大なアドバンテージを自ら投げ捨てていたことになる。


 小さい期間は有限だというのに!!


 私が成長してお母様やお姉様の様なナイスバディになったら、お兄様の好みから外れてしまうというのに!! 限りある時間を無為に浪費していたなんて勿体なさすぎる!!


 これは今まで気付いていなかった頃の分まで含めてお兄様に還元するしかないね。魅惑の妹ボディでお兄様をたっぷりと満足させてあげるのが正しい妹としての責務だよね。


 と、いうわけで。


「あ……、っと。お兄様すみません。魔法を使い過ぎて、少し疲れてしまったみたいです」


 ふらりと自然な形でお兄様にしなだれかかった。


 私が操作している魔法の力で空を飛んでいる荷馬車が現在も猛スピードで飛行中なのを気にしてはいけない。

 むしろ余計な小芝居をしているせいで視界に頼れず、その穴を埋めるためにただ飛ぶよりも余分に魔力を消耗することになっているなんて事実に突っ込んではいけない。


 私がお兄様に寄りかかるのは不可抗力なのだ。


「大丈夫かい? なんだったら途中、どこかで休んでも……」


 ああ、お兄様は優しいなあ。嬉しいなあ。

 その気遣いだけで王都までなら倍速で着けるくらいには元気出たけど、わざわざお兄様とのデート時間を減らすわけがない。


「いえ、大丈夫です。ただこのまま、肩を貸していてはもらえませんか……?」


 そっ、とお兄様の腕に手を絡ませてみたり……。


 うわわっ、これ思ったより恥ずかしいぃぃぃ。


「ああ。好きなだけ使うといいよ」



 その後帰り着くまで、私とお兄様はずっとくっついたままでいた。

 幸せな時間でした。


成長するのは確定事項らしい。

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