幼馴染の恋を応援しよう
カイルという幼馴染の少年の話をしよう。
武門の家の子で運動が得意。それ以外は苦手。
冬の生まれで好物は肉。好きな季節は夏。父親の剣の腕は超一流。
他にも色々。覚える気もないのに覚えてしまった。
なぜこれだけの情報を知っているかと言えば、全部本人が喋っていたからだ。
私の後を付け回して、聞いてもいないのにべらべら話していたからだ。
実に鬱陶しかった。
カイルは私のことが好きなんだと思う。
男の子は好きな女の子にちょっかいをかけるってヤツ。それ、確実に嫌われるから止めなさいと全世界の男の子に伝えたい。
中身が大人な私でさえイタズラされすぎてカイルには苦手意識がある。
漫画でなら微笑ましくとも現実で、しかも自分の身に降りかかるとか迷惑でしかないと身をもって知った。
一人でいれば執拗に誘われ、誰かといてもイタズラされ、別の男の子に守ってもらえばキャンキャン吠え出す。
もういっそ女の子のグループ作って完全に締め出すかとも考えたけど、どうやらマーレがカイルのことが気になるようなので二人をくっつけることにした。是非とも手綱を握って欲しい。
とは言っても私の恋愛経験値なんてゼロだ。
しかも子供同士の恋愛。未知すぎて逆に興味が湧いてくる。
そんなわけでマーレにカイルの情報を明け渡し、カイル攻略の手掛かりにでもしてもらおうと思ったのに最初から躓いた。
マーレがヘタレだった。
私とカイルと三人で話しているのが楽しいから、今の関係を崩したくないと。
その関係を崩そうとしてるのがカイルなんだけどねっ!
普段はポジティブなのに恋愛は奥手とかカワイイからそのまま押せばいいのに、押さない。
カイルが私にアプローチかけてるの見てるだろうに、押さない。
でも一部の助言は受け入れて、手作りのお菓子を与えたりはしている。
もう何がしたいのか。
半端なことをしてないで、落とすならさっさと落としてほしい。
とはいえ、恋愛がデリケートなものであることも事実。
無責任に煽りまくるわけにもいかない。
でもカイルは引き取ってほしい。
そしてできれば私の手を煩わせないでほしい。
私の願いはそれだけなのに。それだけの事がなんて遠いのか。
そもそも面倒を他人に押し付けようとしたのが間違いだったのか。
私がカイルにはっきりと、「意地悪してくるから嫌い」と言えば良かったのだろうか。
マーレとの関係の悪化を恐れずに、二度と私に関わりたくなくなるようなことをカイルにすれば良かったのだろうか。
正解は分からない。
マーレを応援すると決めた以上、後戻りもできない。
これからも否応なしに関わされることになる幼馴染の恋愛に、ただ一つだけ言えることがある。
やっぱり恋愛って面倒くさい。
逃げられると追いたくなるのは本能




