自分でやった方がマシ
リンゼちゃんの仰々しい言葉は儀式用の雰囲気重視で、言葉の内容は気にする類のものじゃないということはよぅく分かった。
つまり私は、聖女になったら楽ができる。
約束通り面倒な求婚はぜーんぶシャットアウトできるし、偉い立場だからお仕事は全部部下に丸投げで問題なし。権力バンザイ。
リンゼちゃんを信じるなら、そういうことになる。
……やっぱり話がうますぎないかな? 念の為、後でお母様に確認しとこ。
――で、それはそれとして。
「王国に祝福を!」
「「「「「王国に祝福を!!!」」」」」
リンゼちゃんとのお話が終わって時の流れを正常に戻し、宣誓の儀とやらをちゃっちゃと済ませたまではいいんだけどさ。問題はその後よ。
王様から「災厄の魔物を退けて欲しい」ってお願いされて、これ流れ的に断れないんだろうなーと思いつつ引き受けたらこの騒ぎよ。
みんなして「王国の憂いを払う聖女様!」とか「女神様が見初めた救世主!」とか、言ってて恥ずかしくなんないのかねえ? 言われてる私としてはもう恥ずかしさを通り越して呆れてきてるくらいなんだけども。
いや、お願いされるのはいいのよ? 仕事はちゃんとするつもりだったし、災厄の魔物ってのもあれでしょ。前にリンゼちゃんが言ってた、私のせいで成長率が著しいことになってる悪意の集合体的なやつ。世界の端っこに捨ててたら集まっちゃって〜ってやつ。
どーせそのうち対処はしなくちゃならないと思ってたし、王様に直接お仕事として依頼されるのならお給料がもらえる分お得だし、真面目に働くつもりはあるんだけどさ。
でも今からすぐに仕事しろってのは聞いてない。
まだお仕事を丸投げすべき部下も付けてもらってないんですけど!? ってゆーかまだ私、成人前のお子様なんですけど!? せめてそーゆーのは学院卒業してからにしてよって話ですよ!!
これ早速契約違反じゃね? 今度こそ文句言ってもいいよね? と思ってリンゼちゃんを見たら、なにやら考える素振りをしながら目を閉じてた。その程度で見逃すとでも?
(おーいリンゼちゃーん? 聞こえてるー? 聞こえてるよねぇー? これさぁー、どーゆーことか説明してもらってもいいかなあぁぁぁ??)
念話を使って無理やり頭の中に言葉を叩き込むと、リンゼちゃんは見るからにビクッてなって地味に注目を集めてた。
やーい、驚いてやんの。
ちょっとは溜飲が下がった。
(ソフィア、いきなりは驚くから止めてちょうだい。それとこの件は、私も驚いているのよ? この国の王には災厄の魔物が出たらソフィアに任せれば簡単に解決するとは伝えたけれど、実体化に必要な悪意の量は魔物の出現によってかなり抑えられているはずで……)
ふんふんと聞いてはみたが、話が長い。
リンゼちゃんの話を聞いてるうちに式典での私の役目は終わり、部屋の外にいたメイドさんにまたさっきの小部屋へと連れられて王様たちを待つようにと言われたので、この空いた時間を使ってリンゼちゃんとの話をまとめておこうと思う。
まず、今から災厄の魔物とやらを倒しに行くことになったのはリンゼちゃんの預かり知らぬところらしい。っていうかリンゼちゃんは、その魔物が出現してることすら知らなかったとか。
で、その魔物が本当にいるのなら、人類がかなりピンチなので可及的速やかに対処するのが望ましいらしい。が、出現してある程度したら男の方の神様がやってきて排除してくれるはずだから最悪放置でもいいんだってさ。優秀な犬だね。
でもそれ絶対人類がかなり減ったあとですよね。神様の感覚とか信用ならん。
見知らぬ人の為に命を賭けるなんて柄じゃないけど、ちょーっと見に行って楽に倒せそうなら倒しとくくらいなら問題ない……よね? 所詮でっかいだけの魔物だもんね?
王様から詳しい話を聞く前に、軽く作戦だけでも立ててみるかな。
なおメイドさんに申請した着替えの要求はやんわりと却下された模様。
ロリータ聖女服、継続中。




