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逃げ道は塞がれた


 私が魔法を感知できると確信して、王様の私を見る視線が「胡散臭い小娘」から「意外と凄い小娘」に変わった気がする。果たしてどっちがマシかなー?


 そんな変化があったからか、王様の特別な魔法とやらの正体を教えてもらえることになったんだけど。


 しょぼい王様は持ちネタもしょぼかったと言わざるを得ない。


 あのね、王様ってね。

 相手が嘘をついたら魔法で分かるんだってさ。


 なんとびっくり! 王様は嘘発見器だったのだあーー!!


 ……で、本命は? って聞いたら、「それだけだ」って。

 どうよ、しょぼくね?


 王様の立場としては便利な魔法かも知れないけど、完全に私が使う《読心》の下位互換だよね。なんなら魔法使わなくても誤魔化せそうで嘘発見器としての能力すら疑問が残る。


 嘘が分かるって、要は相手の思考を読んで()()()()()って本人の認識を受信してるとかでしょ? それって魔法の修練でよくやってる「私はできる子! 使えない魔法なんて無いのだー!」みたいな自己暗示系に完全に無力だよね。


 本物の嘘発見器も普段から嘘ばっかりついてる人には効果がイマイチだって聞いたことあるし、なんとも微妙で羨ましくない魔法だった。



「すまなかった」


 とりあえず王様が謝罪したことでお母様の怒りは収まったものの、余計なことに時間を取られ過ぎたせいで本来予定していた段取りを説明する為の時間が残り僅からしい。


 とにかく少しだけでも! とお兄様に説明を聞いていたのだけど、それほど特別なことはなさそうな感じ。


 現実の王様を間近で見て「王様なんて最上級に偉い人相手に粗相があったらどうしよう……!」という懸念も無くなったわけで、割と心は安定している。これなら大丈夫じゃないかなと根拠の無い自信が出てきたのはきっといい事だと思う。


 それから少しして。


「……なんか緊張してきた」


 謁見の間に続く大扉を前にして、現在、孤独を感じているわけなんですね、はい。



◇◇◇



 いや、あのね。

 そもそも私、目立つのとか別に好きじゃないんですよね。


 そりゃ気分が乗っちゃってはっちゃけることもあるけど、基本的には人畜無害な平凡ガールと申しますか。

 周囲の空気に迎合するのを良しとする極々一般的な無個性ジャパニーズと申しますか。


 あと格好ね。


 家から着て来た聖女(笑)服は一種のおふざけというか、父の願望を叶える優しい娘としてのプロモーションといいますか。王様の前に出るんだから、それ相応の服装に強制的に着替えさせるのが普通だと思うじゃないですか。真っ当な理性ある大人なら当然その選択肢を選ぶと思うじゃないですか。


 なんでこの服でゴーサイン出すかな。


 私はこれから、この純白でふわふわひらひらの、幼女の夢が詰まった様な割と露出高めの服を着て、大勢の人達の前に姿を晒す。


 これ世間一般では拷問とか公開処刑とか言うんじゃないですかね。


 今ではあのお粗末すぎた王様の行動も、私が反対する時間を奪うためにお母様と結託して仕組んだ罠だったのではないかと疑っている。


 そしてまんまと罠に嵌った私は、こうして逃げ出せない状況に追い込まれ、いつもどおりグチグチ言いながらもお母様の思惑通りに働かされるのである。

 お母様にはやっぱり悪魔の素養があるんじゃないかな。


「そろそろお時間です」


「はい」


 扉を開ける係の人が動き出すのを見て、深呼吸をひとつ。


 ……まあ、気に入らないこともあるけれど。

 これも聖女のお仕事と考えれば、将来の為に我慢するのも致し方ないとも思える。


 聖女になったら、結婚免除……。

 聖女になったら、お菓子食べ放題……。

 聖女になったら、部下を働かせて楽ができる……。


 ………………。


 ………………………………いや、この条件、冷静に考えたらありえなくない?


 こんな自堕落な働き方、お母様が認めるわけないじゃん。なんで今まで疑問に思わなかったんだ。


 これ確実に騙されてる、と私が真実に至ると同時に扉が開き、その向こう側からは聖女の誕生を讃える数多くの野太い声が空間を揺らした。


「――彼女こそは女神様の使徒様がお認めになられた新たなる聖女、ソフィア・メルクリス!! 我らが王国に祝福を!!」


「「「「「王国に祝福を!!」」」」」


 めっちゃ帰りたい。


「ロランドの悪事は全て私のせいにされるのですから、少しは自重なさいな」

「母上には感謝していますとも。そのお礼というわけではありませんが、アネットから近々新作の化粧品が届くはずです。ご確認を」

「……一体誰に似たのやら」

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