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この王様、雑魚いわ


「ソフィア、父上が済まない。父上は昔から心配性でね」


「いえ、陛下の心配は当然のことです」


「聖女ちゃんからは当然あるはずの魔力が全く感じられないから、慣れていない人は驚いちゃうのよね。いつもその状態なのよね?」


「そうですね。これはもう体質のようなものだと受け入れています」


「ソフィア、なにか新しい遊具は無いのか? 新しいお菓子でもいいぞ?」


「今日は用意してないんです。ごめんなさい、アーサー様」


 王様の追求を退けた後。


 私は何故かヒースクリフ王子の隣りに座らされて、王子、王妃様、アーサーくんの三人に囲まれたハーレム状態になっていた。


 なんか可愛らしい動きをしてたアーサーくんを見つけてまんまと釣られた先が、たまたまヒースクリフ王子の隣りだったともいう。

 この私を策に嵌めるとは、やるなアーサーくん!


 一方、私の家族たちは。


「……なあ、ロランド。ソフィアとヒースクリフ様の距離が近すぎると思わないか? あれは父として注意しても問題ない距離じゃないか?」


「心の距離は遠いので問題ないでしょう」


 私がお兄様以外の男の近くにいるという事実に慌てるお父様と、強い信頼から全く心配せずにお父様を宥めてくれているお兄様。


 そして。


「あれが、お前の言っていた……」


「ええ。自慢の娘です」


 王様と静かに語り合うお母様。


 ……あそこに混ぜられるくらいなら、王妃様に弄られてた方がマシかな?



 そう覚悟を決めていたのだが、お父様の我慢に限界が来る方が遥かに早かったらしい。


 お父様の介入で無事に王族側のソファから開放された私は、お兄様の横で、お母様と王様の会話の成り行きを見守っていた。


 話はどうやら私の待遇に関する事のようで、「危険」だとか「責任」なる言葉が飛び交う辺り正直気が気じゃない。

 でも終始お母様ペースみたいだから、そう悪い結果にはならないだろう。


 ……お母様が「今までは甘やかしすぎました。この機会にスパルタ教育に切り替えましょう!」なんて変な気を起こさなければ。


 いざとなったらあの辺り無音空間にするか。


 密かに警戒していると、そんな空気を敏感に感じとったお兄様が安心させるように、私の手を優しく握り締めてくれた。


「ソフィア、大丈夫だよ。そんなに緊張しなくても、陛下が僕達を害することは無いはずだから」


 はわわ〜、お兄様に手を握られてるだけで、ソフィア幸せになっちゃう〜。


 でも警戒してるのはお母様なんだけどね。

 王様はなんかもう、驚異にならない気がしてきた。勘だけど。


「それはどういう意味かな? 父上が君たちを害するなんてありえない話だ」


 だが私とお兄様のまったり幸せなふわふわタイムを邪魔するべく、お兄様の発言に因縁をつけてくるやつがいた。


 空気が読めるくせに空気を読まない筆頭、ヒースクリフ王子だ。


「ああ、気に触ったならすまない。だが陛下の先の命令は、(いささ)か言葉選びが悪かったからね。ソフィアの勘違いを正しておこうと思っただけさ」


「勘違い……? ソフィア、君は父上の発言をどう受け取ったというんだ?」


 お兄様を厳しく見つめていたヒースクリフ王子は勘違いという言葉を聞いて気勢を弱め、その質問の矛先を私へと変えた。


 どうって言われても、言葉通りだけど。


 でもお兄様が勘違いって言うなら何か勘違いしてたのかな? だとしたら素直に答えたら失礼に当たる?


 どう答えるべきでしょうかお兄様、と視線を向ければ、「ソフィアの思った通りに答えればいいんだ」と強い頷きが返された。

 お兄様がそう言うなら。


「『魔法を止めろ』と言われたので、何か魔法を使っていると不都合なことをされるつもりなのかと。……その、私たちに向けて、魔法を、とか」


 ぱっ、と手のひらを広げて、魔法を放つような仕草をしてみた。


 その直後に、ドン!! と大きな音がしたから間違ってなんか魔法使っちゃったかと焦ったけど、そんなことはなかった。


 音の発生源は、テーブルを強く叩いた王様の手だった。


「魔法で人に攻撃だと!? 魔法は魔物に向けて放つものであろうが! そんな事するわけが無い!! そんな危険な真似を思い付くなど、キサマやはり悪魔の子か!?」


 悪魔の子て。言い草酷くね? つかやはりってなんだよ失礼極まる。


 だが王様のこの反応はみんなにも不評だったらしく、私の家族どころか王様の家族からも非難の視線が殺到していた。やーい自爆してやんの〜。


 なんて笑っていられたのはそこまでだった。


「今の発言は、陛下はずっと私を悪魔だと思っていたと。そう受け取って良いのでしょうか?」


 うわやべ。ゾクってした。お母様がマジ切れ寸前じゃん。


 王様もようやく自身の失言に気付いたらしく、慌てて発言を撤回した。


「いや、すまぬ! そんなつもりではない!! 悪魔とは言葉のあやで、あの預言の……」


 なんかあたふた言い訳し始めたけど、それよりさあ。


 ……これ言っちゃダメなやつかな?


 王様さっき、私に向かって魔法使ってたよね。

 バレてないと思ってるのかな? バレバレでしたよ。


「怒ったお母様は悪魔といい勝負だと思う」

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