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聖女服は好評でした


 聖女のイメージに合った服を着せられた私は、さながら可愛らしいお人形。


 いいよね、分かるよ。だって私も大好きだもん。

 ただし、他人に着せるのは、という注釈が付くけれどね。


 可愛い服の似合う娘がいたら飾り立てたくなる気持ちは、私にも理解できる。


 だから親孝行のつもりで、自分で選んだらまず着ることは無いだろうこんなメルヘン全開なロリロリしい服だって着て来たんだ。


 人の目に触れるのも当然、ある程度は覚悟してたよ。


 実際にその段になって心折れそうにもなったけど、服なんて着てれば慣れるっていうか、自分で着てる服とか鏡でも見ない限りそうは目に入らないから、次第に気にならなくなってた。



 でも同級生にこの格好してるの見られんのはキッツイんですわ~〜〜それも男子!


 普段関わりのない大人に見られるのは諦めもつくけど、最近関わりがないだけの男子同級生に見られんのはキツイ。しかもイケメン。


 顔を赤くしなかった自分を褒めてやりたい気分ですわ。


 穴があったら逃げ込みたいね。


「ソフィア、褒められたぞ。良かったな」


 私の心情を知らないお父様が小声で報告してきた。


 いや社交辞令でしょ……。

 内心では「あっははははは!! 気合い入りすぎだろこの女! つか俺と同い年でこんな子供っぽい服似合うとかありえねー! こいつ実はアーサーと同い年なんじゃね!?」なんてことまではさすがに思ってないだろうけど、似たようなことを全く考えなかったとは思えない。


 本気で悔しいけどさ。


 私の身長だと多分、ランドセルとか超似合うよ。


「お父様の選んでくれた服のおかげですね」


 心を殺して笑み返した。


 実際、ホントによく似合ってると思うよ。そりゃもう悲しいほどにさ。


 私の言葉を聞いたお父様がにま〜っと嬉しそうな笑顔を浮かべ、「ふふん。そうだろう、そうだろう!」と言わんばかりのドヤ顔になるのを生暖かく見つめてたら、ちょっとは溜飲も下がった。


 人の笑顔は伝染する。


 願わくば、私も心からの笑顔を浮かべたいものだ。


「――おほん!」


 お父様と王妃様、保護者二人の笑顔が咲いてすっかり和やかムードになったところに、場の空気を乱す咳払いが投じられた。


 その犯人は、ちょっとやりずらそうな顔をした王様だった。


「よくぞ参った、ソフィア・メルクリス。此度の要請を受けてくれたことに感謝をしよう」


「勿体ないお言葉です」


 うわぁ、やめてぇ。私に話しかけないでぇ。

 私の全権はお母様に移譲してるんでそっちで話し合ってくれないかなぁ。王様と話してるだけで知らないうちに失敗しそうで怖いよ。


 とか思ってたら。


「そして……。無言の魔女、アイリス・メルクリス」


「はい」


 お? 心の中で願ったことが叶った。


 これは凄いぞ、きっと私の普段の行いが良いからだな。

 どーぞそのままお二人で実務の話を進めちゃって下さいな。


 このまま私の役目も終われば最高なんだけどなーとことの成り行きを見守っていると、王様はお母様の顔を難しい顔で見つめ、言いにくそうに口を開いた。


「…………何故、ここにいる」


「私がいては何か不都合でも?」


 お? おおぉぉぉぉお?


 お母様って王妃様だけじゃなく、王様にも強いの? こりゃびっくりした。

 お母様ったら一体何者なんでしょうね。


「問題は無い。ただ、今は外に出ていて、王都にはいないとの報告を受けていたのだがな」


「あらそうですか。ですがご覧の通り、既に戻っておりますので気遣いは不要です。差し出がましいようですが、情報の伝達には信頼の置ける者を配するのをお勧めしますよ」


「賢者殿の忠言だ。有難く受け取ろう」


 ……なんつーか、この二人コエーわ。


 よく考えてみれば、王様って言わば貴族のトップなわけで。王様が王妃様並みに口が達者でも何の不思議もなかった。


 でもお母様の言葉を受けて何故かジト目でお兄様の方を見てたのは不思議だったけどね?


 まさか王様が男色家で、お兄様をロックオンしたわけでもあるまいに。


 もしも王様が性的な目でお兄様を見てたら私が絶対に勘づくからね。恋する乙女の直感的なやつで。

 だからその心配はしていない。


 まあ、お兄様の魅力は最近ますます磨きがかかっているから、見蕩れちゃうのは分かるけどね。


 学院でも男性ファンがそれなりに増えてきたとか聞いたし。

 お兄様の魅力を理解する同胞が増えるのは大変に喜ばしいことだ。


 お二方の腹の探り合いが終わったところで、王様の視線はまた私に戻ってきた。


 日頃の行いシールドにはもっと仕事を誠実にこなして欲しいものである。


「では改めて話をしたい。だがその前に」


 止めて。こっち見ないで。と言えたらどんなに楽か。


 でも私はお母様とは違って、王様に生意気を言うような非常識さは持ち合わせていないので、大人しく王様の好き勝手に付き合わされる他に道は無いのだ。


 ――そう。例えそれが、どんな理不尽な要求であったとしても。


「ソフィア・メルクリス。今すぐに、今使っている全ての魔法を停止せよ。これは命令である」


 ……これ、やばくね?


王家の末子、アーサーくん。

ソフィアに気付かれない記録更新中。

現在の隠れ場所は王妃様の背後、ソファの裏側である。

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