表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
432/1407

改めていざ……って、なんじゃそりゃ!


 改めて考えてみれば、単純な話だ。


 ヘレナさんは普通に魔法が使える。

 普通にならば、何の問題もなく魔法が使える。


 普通とはつまり、「詠唱をすれば」魔法が使えると、そういうことだ。


 過去には無詠唱でできたらしいが、むしろそちらがイレギュラー。

 なんらかの要因による偶然というよりは、ヘレナさんの執念が引き起こした三度きりの奇跡とかなんじゃないかと私は見ている。


 ……三度も起きたら奇跡じゃないかな?


 まあ過去のことなんて今はどうでもいいんだ。


 今大事なのは、ネムちゃんと私の強力タッグで、ヘレナさんの面白そうな魔法を成功させることだ。


 そのためなら何度ヘレナさんの心が折れようと、その度にツギハギしてくっつけてあげる所存である。


 さあはりきっていこう!



 ――と意気込んではみたものの。


「偉大なる光の精霊よ。その御力を持ちて、暗闇を照らす光をここに。《光よ来たれ》」


 室内御用達。光源を生み出す魔法。


 ネムちゃんのアドバイスに従って詠唱をしただけで、問題は簡単に解決した。


「わあ、おめでとうございます、ヘレナ様!!」


「ありがとうシャルマ。でも、これ……昔に出来た時よりも、効果が低い気がするのよね……」


 解決したけど、ヘレナさんには不満が残る結果だったらしい。


 その話もちょっとは気になるけど、今はそんなことよりも、目の前の現象が気になって仕方がない。


 ヘレナさんが生み出した光源。それを構築している魔力。


 あの、暗い魔力。


 なにこれすごい。


 なにがすごいって、まず魔法の安定感がパない。

 魔法って普通なら構成してる魔力の一部を削ぎ落とせばバランスを崩して自壊したりするのに、この魔法は多分、それがない。半分ほど構成消し飛ばしても光り続けるんじゃないかと思う程の抜群の安定感を見せている。魔力に揺らぎが無さすぎて実は知らない魔法なんじゃないかと疑いたくなる。


 あと持続。持続時間も長そう。ていうか既に長い。

 ヘレナさんが魔力の供給切ってから何秒? もう五秒くらいは経った?

 術者が魔力の供給を切ったのに魔力が拡散しないで発動直後と変わらない効果を持ち続けてるだけでもありえないのに、それがこんな、こんなに安定して……ッ!? 私にも出来ないよこんなの!!?


 うがー!! なんかすごい悔しい! なにこれずるい! チートだ! チートだよこの魔法!! こんなの使えて満足してないとか高望みが過ぎるよヘレナさん!


 あまりに悔しいから早速真似してみよ。


 えーっと……でもどうすればいいんだろ? とりあえずあの暗い魔力を見様見真似で作ってみる?


 本当なら同じ条件でやるのが一番なんだけど、ヘレナさんと同じように身体の中でやるのはちょっと怖いから……手の上でやるか。


 では早速。


 暗くなれ〜、暗くなれ〜と念じながら魔力そのものに働きかけてみる。じっくりころころ手のひらのフライパンで炒め物をする感覚で。

 どうかな? そろそろ変化がでるかな? と期待しながら魔力を見守っていると、ある時を境に突然、みるみると光を失った魔力が一瞬で暗い色を通り越して黒ずんだ色に変わったあと、なんと重力に従い手を滑り落ちて、床に滴っては溶けるように消えていってしまった。


 ……なんだ今の。


 えっ、と……?

 とりあえず黒い液体になった魔力が手に触れた時、ピリピリというか、ゾゾゾというか。なんだか変な感触がしたね?


 なんかヤバい物を作っちゃった気がしないでもないけど、でもなんとなく感触は掴めた。


 ……もう一回くらいなら……いいかな?


 周囲を確認してみても、みんな偉業を成し遂げたヘレナさんを褒め称えるのに忙しいらしい。私に注目している人はいない。


 これは神様が私に「もっかいやれ」って言ってるね。

 ではお言葉に甘えて。


 今度は念の為、さっきよりも狭い範囲に。

 先程と同じ手順で魔力に干渉し、光量に変化が見られた一瞬を見逃さずに魔力の変化をストップ!! ……としたはずが、変化は止まらず。

 先程よりはだいぶ緩やかながらもやっぱり徐々に光が弱くなっていき、最終的には落ちて消えるところまでをスローモーションで再生するだけの結果となった。


 うーむ、わからん。

 わからんけど、私がどうやら失敗したらしいのだけはよく分かった。


 めっちゃ悔しいんですけど。


「これでヘレナ様も、念願であった『賢者』の称号を(たまわ)れるのではないですか?」


「え? いえ、そんな、これくらいで………………えへへ。イケると思う?」


「もちろんです。ヘレナ様は既に完成された形であると思われていた魔法を、更に先へと進化させたのですから! これから魔法を習う子供達が魔法と共にヘレナ様の名前を覚える日も近いのではないでしょうか?」


「まさかそんな……うふ。うふふふふ」


 シャルマさんがめっちゃヘレナさん持ち上げてるし。


 ぐぬう。私もシャルマさんにもてはやされたい。

 でも喜ぶヘレナさんも……まあ、これはこれで。かなりアリというか和む光景というか。


 かわいくていいよね。


 ……賢者っぽくはないけど。


主人の心と身体を支える奉仕の達人。それがメイド。

……元気になった主人にまた心無い言葉が掛けられないよう未然に防ぐのも、メイドの務めである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ