表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
427/1407

お茶菓子付きの尋問とか天国です


 酷い目にあった……。


 知ってるかい? リバースってのはね、感染するんだよ。


 あくびとかと同じでね。

 目の前でこう、おえってなって、ぶちまけてるのを見ちゃうと、近くにいる人もおえってなるの。


 私以上に食べてたネムちゃんの目の前で私が決壊してたらどうなってたと思う?


 ……私、がんばったんだよ。



 そんな割とピンチだった状況から脱した後、さりげなくぶつけた苦情も聞き流され、今はヘレナさんによる強制尋問を受けている真っ最中なのである。


 はあ〜〜〜……。


 温かいココア美味しい。


「アイリスの無言の魔法、あるでしょ? あんな風に特別な魔法を使えるようになる人が稀にいるのよ」


 まあヘレナさんの尋問なんて可愛いもんだ。


 逃げようとすると肉体的に拘束してこようとするのが難だけど、本気出せばいつでも抜け出せるという心の余裕があるのは大きい。


「固有魔法、なんて呼ばれたりもするわね。固有といいつつ親と子に同じ魔法が発現した例もあるから、私はこの呼び方はあまり好きではないのだけど」


 お母様の尋問なんて、地獄よ?


 そりゃ私が本気の全力で逃げようとすれば逃げることは出来るとは思うけど、その後が怖すぎて無理。考えただけでも身体が震えちゃう。


 っていうかお母様だったら、そんなことをちょっと考えただけでもどうやってか察知して「……ソフィア?」とか人を殺せそうな声で脅してくるからね。


 あの人無言の魔女とか呼ばれてるけど、その名前って黙ったままで人を睨み殺しちゃった時に付けられたんじゃないかって少し疑っていたりする。


 あの鋭い眼光、心臓弱い人だったら耐えられないでしょ……。


「一度しか使えない人もいれば、アイリスみたいにその時の感覚を覚えていて、自分の魔法として何度も使えるようになる人もいる。詠唱をしないで使えるのもオリジナルの魔法の特徴ね」


 そもそもお母様は私に対して、最近ちょっと厳しすぎるんじゃないかな?


 もっと小さい頃はよく膝の上に乗せてくれたりとかしたのに、そーゆーの全然しなくなったし。

 何かと口うるさいし、命令とかしてくるし、叱る時も一方的で私の話なんて全然聞いてくれないし。


 そーだよ! 昨日だって今日の朝だって、お母様のお姉ちゃんを必死に看病してたのに大した感謝の言葉もないなんて酷くないかな!?


 そりゃ頼まれてしたことではないし、私が勝手にやったことにお礼を言えって強要するのも変かもだけど、でもお母様からは本当に一言くらいしか感謝の言葉を聞いていないような……これって人としてどうかと思いません!?


 もっと私に感謝して、なんならここ数年分ご無沙汰だった甘やかしを全部まとめて支払ってくれてもいいんじゃないかな! この機会に私に甘々なお母様にジョブチェンジしてもいいんじゃないかな? かなっ!?


 お母様はもっと私に優しくすべきだーッ!! と心の中で気勢を上げるのと同時に、ヘレナさんの独り言……じゃないや。私への演説も佳境を迎えたみたいだった。


「でも複数なんて例は聞いたことがないわ! ソフィアちゃんはアイテムボックスなんていうただでさえ理解不能な現象を起こす魔法を使っているのに、そのうえ別のオリジナル魔法も使えるだなんて、ありえない! ありえないのよ!! 一つ使えるようになるだけで私がどれだけ苦労したと思ってるの!? やっぱりアイリスの娘だからそんな真似ができるようになったの!? 私もアイリスの娘だったらソフィアちゃんみたいな天才になれたの!!?」


 佳境、っていうか……峠かなこれ。人生を踏み外す峠。超えちゃいけない系のやつ。


 さっきまではお母様に対してちょっと怒ってた部分があったけど、友人が娘になりたがってるお母様を思えば、逆に私が優しくしてあげた方がいいのかもと思い直した。


 ヘレナさんって情緒不安定なとこあるよね。


「一つでも使えるんだから、ヘレナさんだって天才ですよ! だってお母様と同じなんですよ? それってもうヘレナさんも賢者みたいなものですよ〜」


 でもまあ、放っておくわけにもいかない。


 感情の昂り。嫉妬。羨望。


 当然であるはずのそれらの感情が、身の危険に直結することを知っているから。


 ……こっちの世界の人って、普段から我慢しすぎて爆発しやすくなってないかな?


 幸いにもヘレナさんには私のよいしょが効いたみたいで、うるさく喚いてたのは止まっていた。

 うんうん、褒められると嬉しくなって、恥ずかしくて言葉が出なくなるんだよね。わかるわー。


「……私の高濃度魔法は、三回しか成功したことがないのよ」


 全然違った。

 なんかゴメン。


「……」


 ……えっと、どうしよう。

 明らかに落ち込んでるヘレナさんにかける言葉が見つからない。


 ……恥ずかしくなくても言葉が出ないやアハー☆ とか言える雰囲気じゃないよね。


 どうしよう?


 救いを求めてさまよわせた視線が、ネムちゃんを捉える。


「もむもむもむもむ」


 お菓子の食べすぎでリスみたいになってた。


 ……この空気の中でも己を貫けるその胆力。


 頼ってもいいかな?


めんどい話は聞き流し。困った時には人任せ。

甘やかされて育った子供がこちらになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ