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健全な成長を期待したい


 成長期だから、成長するのは当たり前だ。


 身長が伸びて、身体が大きくなって、女性らしい体つきになって。


 体積が増すのだから当然、体重だって増える。


 だからね。


 私が言いたいのは、たった一つ。

 本当に、これさえ守られるのならあとはどうだっていい、ってくらい大切なこと。


 あのね。


 ――肉がつくなら胸に付けろや。



「……? 今変な顔してなかった?」


「気の所為です」


 ヘレナさんからの疑惑を華麗にスルーし、脳内で行っていたカロリー計算からの消費エネルギー量の算出作業に区切りをつけた。


 後悔先に立たずとは言うけど……それにしたって、今日は少し調子に乗っちゃった自覚がある。


 でもしょーがないじゃん! ムシャクシャした気分はムシャムシャ食べることで発散するのが一番周囲への被害が出ないし!


 しかもネムちゃんたら見てるこっちが我慢できなくなるくらいめっちゃ美味しそうに食べるし! 実際めちゃくちゃ美味しいから食べてる間は他のこととか忘れられるし!

 それに一度食べ始めたら止まらないのは私のせいじゃなくてお菓子が美味しすぎるせいだから! 私悪くないもん!!


 そうとも。美味しいお菓子を前にして食べないなんて選択肢を選ぶことは用意してくれた人、作ってくれた人全てを侮辱することに他ならない。


 ただ目の前の美味に集中し舌鼓を打つことこそが、礼儀と礼節を弁えた淑女の取るべき正しい姿なのだ。


 ……だから、いいんだ。


 体重とか、ぜい肉とか。

 美味しいに付きまとう悪魔の呪いには後日別口で対応するから。


 明日からしばらくの間は朝の日課を一時間ほど早く起きて普段以上に運動すれば済むだけの話だから、いいんだ。


 もしもそれで腹肉据え置きのうえ胸だけ萎んだ〜なんて結果にでもなったらその時はもう最終手段、禁忌の人体改造魔法でも使って体型整えるし。


 魔法に頼って胸を豊かにするのは明らかなズルで、その後一生「魔法に頼っていなければ、私の胸は未だ貧乳だったのかもしれない」という(カルマ)を背負い続けることになるかもしれないけど、元々の体型に戻すだけなら不正は無いもんね。

 その後ナイスバディに成長するのは私の遺伝子の力。魔法によるズルはない。


 よし、おっけー。理論武装完了。


 これで少しは気が楽になった。

 過ぎたことをいつまでも悩んでるのは不健全だからね。


「それで、ネムちゃん。これ何の用事だったの?」


 これ、と言って、例の芸術性溢れるお手紙を取りだした。


 私が広げた紙を見て「絵? 箱?」とヘレナさんが首を傾げ「なぞなぞ……でしょうか?」とシャルマさんが疑問符を浮かべているが、その真の答えを知るのはネムちゃんだけなので、私からは口を挟むのはやめておいた。


「んむー?」


 そのネムちゃんはクッキーをもむもむしていて、とても喋れる状態ではなかったみたいだけど。


 ていうかネムちゃんどんだけお菓子食べるの。

 私もかなりお菓子好きな方だと思ってたんだけど、ネムちゃんたら私以上の健啖家じゃない?


 さっきからやたら静かだからもちろん認識はしてたけど、知らない人に囲まれて食べる以外にすることが無いにしても、ちょっとハイペースすぎると思う。


 お茶を飲んでいない時は常にお菓子を口に含んでいるかのようなこのペースに引きずられて、私もかなり食べちゃったんだよねえ……。


 いや、分かってる。別にネムちゃんが悪いって訳じゃない。


 誰が悪いと言うなら、それは「美味しいお菓子が悪い」という事になるだろう。


 更に言うなら、美味しいお菓子を美味しく頂ける量だけ用意し、お菓子と合う紅茶を用意し、一息ついたところですかさず別のお菓子を用意してくれちゃうシャルマさんが悪いのだった。


 幸福で包み込んで気付かぬうちにぶくぶくに太らされちゃうなんて、シャルマさん、恐ろしい人だよ……!


 とか妄想してる間にネムちゃんの思考タイムも終わったらしく、頭の上に「!」の感嘆符が見えるほどに目を見開いた。


 いちいち動きがかわいいんだよね、ネムちゃんって。


「そうなの! ソフィアに魔王になってってお願いするんだった!」


「さっき断ったやつだね」


 図らずも用事は終わってた模様。


 思わず一瞬で切り捨ててしまったせいか、ネムちゃんはパニック状態になってしまったようだ。


「う? う〜〜……言った……言ってた……あれ? どうしよう……?」


 どうしようと言われても。


 私に選択権与えたら、好きなようにしちゃいますよ?


「用事は済んだみたいだし、もうちょっとここでのんびりしてく?」


「あのねぇソフィアちゃん……」


 ままま、ヘレナさん。そう慌てないでいただきたい。


 ここはヘレナさんの研究室。

 子供の遊び場ではないと、もちろん理解しておりますとも。


「ねえヘレナさん。実はネムちゃんってあの【探究】の賢者の弟子なんだけど、知ってた?」


「へっ?」


 ネムちゃんは、案外お役に立つと思いますよ?


そろそろ寸胴お子様体型から脱却したいお年頃。

ペットのフェレットと同じ体型とか笑えませんので。

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