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違和感


 お兄様と学院内デートしました。


 体感時間では瞬きしてる間に終わったくらいの感覚だけど、それでも幸福な一時でした。まる。



 だからソフィアは、午後も頑張れるのです。


「では、お兄様」


「うん。またね」


 ……頑張るけどぉ。


 それでもやっぱり名残惜しい。

 今まで近くにあったお兄様の温もりが離れるだけで、心に冬が到来したみたいな気分になる。


 まあ、冬って結構好きなんだけどね。

 寒い寒い言ってりゃ合法的にお兄様に抱きつけるし。


「ああ、そうそう」


 お兄様のお見送りをしようと待っていたら、お兄様はなにかを思い出したようにその動きをとめた。


 そして「いいかい、ソフィア」と少し真剣な顔付きになって、私の瞳を覗き込む。


 フェイントお兄様やばいって。


 もう家に帰るまでお兄様と会えないのかあ〜寂しい〜でもがんばる〜とか思ってたところにこれだもん。飢えさせといてこれだもん。ハートがどっきんこしちゃいますよ。


 これを狙ってやっていたとしたら、私の心はもうお兄様に完全に掌握されてるってことになっちゃいますね。


 お兄様の好きに弄ばれる私……いいかも。


「エロイナさんは男性よりもむしろ女性の方が好きな人だから、もし会うことがあるならくれぐれも気をつけるんだよ」


「はい、お兄様」


 そして真剣な顔をしたお兄様はいつだって私の事を考えてくれているんだ。


 はあ〜〜〜好き。やっぱ好き。すっごい好き。


 心配しなくても私の心はいつだってお兄様のものですからねっ♪


 ……な、なんならその証明として、身を捧げる覚悟だっていつだって出来ていますから!

 お優しいお兄様は私のことを案じて自分から言い出すことはしてくれないだろうけど、それでも受け入れる準備はいつだって、出来ていますからっっ!!


 ……それこそ、今夜に突然夜這いをかけられたって……きゃっ、お兄様ったら大胆♪


 とか妄想してるうちに、お兄様の姿はいつのまにか見えなくなっていた。


 去っていく後ろ姿とかは覚えているから、ちゃんとお見送りはしたんだろうけど……ちょっと損した気分になった。




 放課後。


「ソフィアって本当にお兄さんのことが好きよね」


「大好きだよ」


 友人からしみじみ言われた言葉を間髪入れずに訂正した。


 強い肯定に面食らってるみたいだけど、驚いたのは私だって同じだ。


 お兄様への愛情は「大好き」という言葉ですら足りないくらいなのに、「大」すら忘れるとは何事か。

 私たち兄妹のやり取りを見ていてその程度の軽い愛情しか感じられなかったというのなら、その感度の低い感性は今後頼りにすべきではないと忠告してあげるべきだろうか。友人に直接「見る目が無いね」と言うのは大変心苦しいのだが、友人だからこそ伝えられる言葉もあると勇気を出すべきだろうか。


 ……いや、でも、その考え方自体が間違いなのか?

 お兄様の立場からしたら、誰の目から見ても明らかに「実の妹とただならぬ関係にある」と読み取れる空気を(かも)してしまうのは問題があるはずだ。私たちが兄と妹という関係にある限り、責任を取るのはいつだってお兄様で、その結末は「兄妹の離別」という最悪の形を迎えかねない。


 ……って、別に私とお兄様は、実際には大したことしてないんだけどね。幼い頃のお風呂だってあんまり一緒に入ったことないし。


 本当はねー、お兄様の眠れる獣欲をこの身で感じてみたぁいとか思ったりもするんだけどー。貪るように求めて欲しいって言うかー。


 クールなお兄様ももちろん素敵なんだけど、あまりにクールすぎて時々自分が女の子として見られてないんじゃないかって不安になるというかね。


 勇気をだして胸を押し付けてみたり、ちょっと服をはだけてみたり、その、キ、キスを、誘うようなことをしてみたりもしたんだけどね。


 お兄様マジ精神力つよすぎ。


 気付いてない訳じゃない。

 ちゃんと私の誘惑に気付きながら、華麗にスルーされちゃうのだ。


 私に魅力が足りないのかと思ってカイルで試した時には簡単に慌てさせることが出来たから、多分お兄様が特別なんだ。


 それでも胸さえあればきっと……あとお尻? とか、身長とか、セクシーさとか……。……、なんか色々足りないな……。


 でもいいんだ、別に。

 お兄様と一線を越えたいって気持ちは当然あるけど、今のままでも大事にされてるのは分かるし。


 私はお兄様を困らせたい訳じゃないからね。


「そういえばエロイナさんから話って聞けたの?」


 昼の失敗を思い出し、お兄様の話題は避けることにした。


「そうそう、そうなのよ! ねぇ聞いてよ、実は――」


 勢い込む友人の姿を見ると、自然と楽しい気分になってくる。

 やっぱり楽しいのが一番だよね。


 だが話に集中しようとした思考に、ふと。


(……? エロイナ、さん?)


 なにかが引っかかる。なんだ?

 聞き役に徹しながら、感じた違和感の正体を探る。


 ……そういえば、去り際にお兄様が。


『エロイナさんは――』


 あれ? あの時の私って。


 ――お兄様に、エロイナさんに会いに行こうとしてたってこと伝えたっけ?


〜兄が妹の行動を知るまでの流れ〜

妹「エロイナ!」→妹のペット「エロイナ!」→兄「エロイナ!」

家・学院を問わず妹の行動は兄に全て筒抜けなのです!スゴイナ!

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