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運命のランデヴー


 お昼休みに、約束もしていないのに。


 お兄様と出会った。


 これはもう運命なのでは?



 学院で見るお兄様は、背景が違うせいかいつもとはまた違った(おもむ)きがある。


 家でのお兄様ももちろん最高だけど、外で見るお兄様もイイね。なにより偶然の出会いってのがいい。


 これぞサプライズお兄様。


 今日が最高の一日になるのが約束されたようなものだった。


「邪魔してごめんね。何か話してる最中だったかな?」


「いいえ、今ちょうど終わったところです」


「……」


 ああ。学院でお兄様と会えるの、いいなぁ。幸せだなぁ。

 私も成績は優秀なはずだしお兄様と同学年に飛び級とかさせてくれてもいいと思うんだけど、リチャード先生はそういう融通利かないからなぁ。


 もうすぐ学年が変わる。

 それはつまり、お兄様が学院からいなくなってしまうということだ。


 はーーー憂鬱な事は考えないで今はお兄様に甘えてよっと!


 空気を読んで口を閉ざしたカイルを完全に放置して、私はお兄様に甘えることにした。


「学院でお兄様に会えるとは思っていなかったのでとっても嬉しいです」


 まあ、私はプロの甘えニストなので。

 甘えると言ってもただ単に精神年齢や引き下げてくっつくだけじゃ芸がない。毎回同じ甘え方も悪くは無いのだけど、折角なら色んなバリエーションで甘やかしてもらいたい。


 今はお兄様の方から「超甘えたくなるオーラ」を出してもらってそれに誘われて甘やかされたい気分だったので、こんな間接的な言い方でお兄様の「妹甘やかしたいゲージ」にガンガンポイントを注ぎ込んでいるのだ。

 ソフィアちゃんたら策士〜ぃ。


 それにね、お兄様にはああ言ったけど、本当は会おうと思えば一応、いつでも会えるんだよ? お兄様のクラスの人たちも歓迎してくれるし。


 でもあそこ行くとみーんなが私たちに注目しちゃうからお兄様に甘えるにも気をつかうっていうか、なんか逆に疲れちゃうんだよね。


 お兄様の膝の上は常に安らぎを与えてくれる空間であるべきと考える私にとって、お兄様のクラスはお兄様に甘えに行く場所ではなく、お兄様のクラスメイトとおしゃべりするための場所なのだ。


 ……そういえば最近はあまり行く機会がなかったけれど、妹さんとの仲を改善したがってた彼は元気だろうか。

 最後に聞いたのが「おやつ作戦、大成功だよ! 最近やっと受け取ってくれるようになって、それどころか毎日買ってくるようにっておねだりまでしてくれるようになったんだ!!」って喜びの声だったけど、未だにあの作戦続けてたらそろそろ彼の財布か妹さんの体型に影響が出そうだ。


 今度またお兄様のクラスに――


「――ああ。僕もソフィアに会えると、とても元気が出るんだ」


 っはああぁぁぁぁ〜〜〜そんな素敵な笑顔で面と向かって言われたら私死んじゃう。


 今のってプロポーズかな? 間違いなくプロポーズですよねならすぐに式を挙げましょうお兄様ソフィアはお兄様が相手ならいつでも歓迎ウェルカムですので!!!


 お兄様の言葉を聞いた瞬間に頭の中で鳴り響くチャペルの鐘。


 いくらなんでも気が早いと頭の片隅から声がするが、赤く染まる顔と高鳴る鼓動の対処に追われては冷静な思考なんてできるはずはなかった。


「……お兄様っ!」


 がばちょと抱きつき顔を隠す。

 結局このパターンに収まるのかと思わないでもないが、恥ずかしげもなく赤面するような台詞を繰り出すお兄様が相手なら仕方ない。


 恋は惚れた方が負けなんていうけど、こんなに幸せになれるならずっと負け続けてもいい。


 お兄様が望むのなら女戦士風のコスプレをしてくっ殺(くっ殺せ!!)なイメージプレイも辞さない覚悟だ。


「ふふ。ソフィアは甘えん坊だね」


 はきゅ〜ん。お兄様の頭なでなで好きぃ。ソフィア甘えん坊になっちゃうぅ。


 心も身体も(とろ)かされて、頭が思考を放棄した。


 もうどうにでもしてぇ……♪


「カイルくん」


「えっ、はい!?」


 あー、お兄様の匂い好きぃ。声も好きぃ。

 なでなでされてる頭はほわ〜ってなるし、抱きしめられてる背中とお兄様の腕がくっついてるところは燃えてるみたいに熱くなってお兄様を直接感じられてとっても好きぃ。もぉぜんぶ好きなのぉ。


「話は終わっていたみたいだし、ソフィアを連れて行っても問題は無いよね?」


「え……。あ、いえ、ハイ。どーぞ……」


「うん。それじゃあね」


 ぼんやりしたままの身体に力が加えられ、抵抗なく身体が動く。


 ……あ、移動するんですか? お兄様が連れて行ってくださるなら例えベッドの上でも……あれ、えっ、肩抱いたままでもいいんですか!? ここ学院内ですけど!? これ誰かに見られたら誤解されちゃったりとかっ、もちろん私は大歓迎なんですけどっ!


 普段とは違う何かが琴線に触れ、一瞬だけ覚醒するも。


「ん、ソフィア? ……肩を抱かれるのは嫌だったかい?」


 そんな言葉とともに、「もっとこうしていたい」と伝えるように力を込められたら……。


「……いえ。このままで……」


 力が抜けた。


 もう何処にでも連れてっちゃってください……。


「アイツの兄姉やたら怖ぇんだよな……」

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