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罰したい×罰せない


 カイルくん。

 悪いことしたら、めーっ、だよっ!



 って(おど)かしてたら、なんかカイルがお兄様の名前出して来たんだけど。


 カイルさあ。アンタお兄様の名前まで出して、それ嘘だったらマジ承知しないから覚悟しとけよ? わかってんだろうな?? あん?


 という絶許(絶対許さん)の精神をたっぷり込めた視線でおもいッッきり睨みつけてやったのはいいんだけど。


「――そう。お兄様が、ね……」


 お兄様に頼まれた、とカイルは言った。


 これ対応間違えると私が死んじゃうやつだね。


 もしカイルの言葉が嘘だった場合の対処は実に簡単だ。

 今までの私がどれだけカイルに優しかったのかということを、とりあえず体感時間100倍+絶対に気が狂わない措置を施した上で骨の髄まで物理的に叩き込んで、そのあとはやっぱり体感時間を引き伸ばした上で精神的にも負荷をかけて、毎夜夢に見るほどの極上の悪夢を嫌ってほど刷り込んでやるだけで済む話なんだけど。


 現実世界では一時間未満の時間で完全にカイルの肉体と精神を叩き直して、産まれてきたことを後悔させてやるくらいは簡単にできるっちゃできるんだけど。でも。


 ……もしもお兄様に頼まれたってのが本当だったとしたら、これカイル悪くないよね?


 悪くもない人を問答無用で再起不能な程に壊したりなんかしちゃったとしたら、いくらお優しいお兄様でも、私を見る目が変わる可能性も……。いやお兄様に限って私を嫌うなんてことがあるはずはない! そんなことはないとわかってはいるんだけど!


 でもちょーっぴりだけの可能性しかなかったとしてもお兄様に嫌われる可能性が僅かにでもあるのは困るからね!

 本当にそれがお兄様の望まれていることだというのなら、カイルに面倒かけられるくらいはどうってことないからね!!


 というわけで、問題はどうやって拷問……ちがう。尋問……でもなくて。


 現時点ではあくまで特級の容疑者(ただしお兄様から免罪符を得ている可能性アリ)という難しい立場にあるカイルから、詳しいお話をお聞きするかということなんですが。


 ああもう、カイルがお兄様の協力者かもと思っただけでいつもみたいに雑に扱うのにすごく勇気がいるな。


 私って普段はカイルとどう接してたっけ?

 呼び方は普通に「カイル」でいいんだっけ? 「カイルくん」とかじゃなかったよね? なんか混乱してきた。


「えと……カイル、さ」


 ……これどう聞いたらいいんだ。


 単純に「お兄様に頼まれたって本当?」と聞いたところで答えなんかひとつしかない。


 本当にお兄様に頼まれていたなら素直に「本当だ」と答えるだろうし、私を騙そうとしているなら「本当だ」と息を吐くように嘘をつくだろう。


 なんかこんな話どっかで聞いた覚えあるな。


 たしか嘘つき村への道は二本の道の内どちらを進めば良いのですかって嘘つき村の人と正直者の村の人に聞く話だ。


「こっちが嘘つき村だよ」「こっちが嘘つき村だよ」と別々の道を示す二人はどちらがどちらの村の人かはわからない。片方が真実を、片方が嘘をついているという前提での思考ゲーム。


 嘘つき村の人は嘘しかつかない。

 正直者の村の人は本当の事しか言わない。


 この条件で欲しい情報を聞き出す為の正しい質問は、たしか……。


「カイルが正直者かと尋ねたら、あなたは『はい』と答えますか?」


「は?」


 うん、この聞き方で会ってたはず。


 えーと、答えが「はい」の場合は……って今、「はい」じゃなくて「は?」って言った? ちゃんと「はい」か「いいえ」で答えないとかずるじゃん!?


 ダメだこれ。やっぱりなんの参考にもなんない。


 そもそもこれ、カイルが嘘か本当かのどちらかしか喋らないなんて保証はどこにもないんだし、初めからやる意味なかったよね。なんだかそんな気はしてたんだ。


 混乱極まる状態で考え出した方法なんてまともな訳がなかった。


 誰か私を落ち着かせてください。


 もうカイルを拷問して情報を吐かせた後「お兄様には告げ口しないでね(はぁと)」ってやる方が早い気がしてきた。


 ……いや、それならいっそ魔法で直接頭の中を覗いた方が確実かな?


 でもなー。それだとお兄様の意思に反しちゃう可能性があるしなー。


 お兄様があらかじめ私に伝えておかなかったってことは、カイルがお兄様に頼まれ事をしているという情報は本来、私が知るべきじゃなかった可能性が高い。


 お兄様からの秘密の指令だったろうに、うっかり口を滑らせたカイルのせいで面倒なことに……ん?


 ……ってことは、これやっぱりカイルが悪い? おしおきくらいなら許される? むしろお兄様の手間を省けて褒められる?


 カイル粛清方面に舵を切るのもありかと考え始めたところで、誰かがこの場所に近付いて来ているのに気づいた。


 いや、誰かが、ではない。


 この足音は――。


「やあ、ソフィア」


「こんにちわお兄様。偶然ですね」


 やっぱり、お兄様だ!!


 わー、わー。お兄様だ。お兄様に会えた。

 どうしているの? ソフィアに会いに来てくれたの?


 もうカイルとかどうでもいいや。お兄様〜♪


同行者の女の子たちには「カイルと話があるから」と言って先に行ってもらった結果、後にクラスでは「カイルはソフィアの尻に敷かれている」という噂が広まったとかなんとか。

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