表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
413/1407

怒りの理由


 愛とはなにか。恋とはなにか。


 哲学的なことは私には分からないけれど、それでも、一般的に「恋心」と呼ばれるようなものを実の兄に抱き続けていることだけは分かる。


 だから私は、誰にはばかることも無く。私の恋心が叫ぶままに。


 ――お兄様への愛を語るのだ。




 そりゃあね? 普段は私だって自重してますよ?


 お兄様への愛はいつだって溢れ出しそうなほど持ち合わせているけど、だからってそのまま感情を垂れ流しているわけじゃない。


 好きって言うのは大事だけど、あんまりにも言いすぎると言葉に重みがなくなる気がするし。


 どこかの誰かさんみたいに毎日好き好き言ってないと相手にされないわけでもなく、前世でよく見た「私〇〇くんが好きなんだー(だからあんたらは手を出すなよ?)」的な威嚇行動をとる必要も無い。


 なぜなら、私とお兄様は相思相愛だから。


 互いに、想い合っているから!!


 はーつらいわー。人生勝ち組でつらいわー。

 でもー別にー、人に自慢したいとかそういうのないしー。二人だけの世界で満足してるっていうかー、満たされてる? みたいな?


 でも聞かれたら答えるよね。


 だって言いたいけど我慢してるんだもん。

 兄妹での「好き」は誰もが認めてくれるけど、兄妹で「愛し合ってる」のは誰もが認めてくれるわけじゃないと理解しているからこそ、普段は口を閉ざしてるわけで。


 でもこの純粋なお兄様への愛を差し置いて、別の人を好きなんじゃないかと誤解されたら流石に黙っていられませんよ。


 そりゃカイルは好きだけどね。最近はドキッとさせられるような事も増えたけどね。


 でも私、前世でJK(女子高生)だったんですよ。


 精神年齢で言えばもうおばさんよ?

 いや心はまだまだ若いつもりですけどね?


 カイルなんて甥っ子ポジションというか、生意気な男の子好きだからついからかって遊んじゃうことはそりゃあるけど、でも恋愛とかではない。むしろペット的な? 友達の世話してる子供的な? そんな感じが近いかもしれない。


 懐かれるのが気分いいからって憧れのお姉さんポジを目指した時期なんかもあったけど、でもお兄様の魅力に気付いてからはそーゆーの全部やめたし。


 今は完全にお兄様一筋なので、そこを誤解されるのだけは困るのである。



 ……だというのに、ヒステリーを起こしたカイルは聞く耳を持たない。


「お前こいつらの顔見て何も感じないのか!?」


 うるさくてたまらん。

 てか女の子をこいつら呼ばわりすんなっての。


 それに顔を見て、って言われても……。みんな苦笑いしてるだけなんですけど?


「カイルが変に突っかかるから笑われてるんじゃない?」


 てかこれ、私とカイルのやり取り見て楽しんでるだけでしょ。

 なんかもう慣れてきた。楽しそうでいいことじゃん。


 そんなことより。


「カイル、自分から話せって言ったのになんで止めたの?」


 そこが何よりの不満だった。


 私がお兄様の素晴らしさをあまり人に語らないようにしてるのは、「お兄様の魅力は私だけが知っていればいいんだ!」な理由でも、ましてや理解が得られなかった場合にムカついて無理やり洗脳しかねないとか、そんな理由じゃない。


 片手間の話ではどうしてもお兄様の素晴らしさを満足に伝えられないからだ。


 これは私が未熟なせいなんだけど、もしも中途半端な説明をして「へーすごい人なんだー」程度の認識しかされなかったらと思うと、とても軽々しくお兄様を自慢なんてできない。


 お兄様は本来言葉では言い表せないくらいの完璧超人で兄として完全なスペックを有した理想も理想のザ・お兄様の頂点にあるような人なんだけど、それが私の拙い説明のせいで「ただの良い兄」なんて思われたらもう! お兄様に申し訳なさ過ぎて! 生きていけない!!! ってなる。そのくらいお兄様関連にはマジなんです。


 なのにカイルってばさあ……やってくれちゃったよね。


「なんでって、そりゃ止めるだろ」


 自分が何をしでかしたのか。私が何に怒っているのか。


 カイルは全く理解していない。

 そもそも説明にもなってないじゃないか。


「だからなんで? ねえなんで?」


 なんで止めたの? お兄様を褒め称えるのが気に入らなかった? それとも私が間接的にお兄様を侮辱する羽目になるようわざと止めたの?


 ねえ、オイ。

 黙ってないで、答えなさいよ。


「だから、それは……」


「それは?」


 どうやら私が怒っているとようやく気付いたらしい。


 見るからにタジタジになったカイルは言い訳がましく手を無意味に動かしていたが、やがて観念したように項垂(うなだ)れると、ボソボソと理由を呟いた。


「……お前の兄貴に頼まれてたからだよ」


 …………んん?


 お兄様が、なんだって?


ソフィアの理不尽な怒りを幼少期より受け止め続けたカイル君は本気怒り一歩手前を敏感に察知し即座に全面降伏する特殊なスキルを身につけているのだッッッ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ