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家族よりも強く、深い


「もしやソフィアさんが手を繋いだことのある男性は、カイルさんだけなのでは……?」


 声が通る人って怖いよね。

 ただの思いつきの発言が、さも「世界の真実に気付いた!」みたいに受け取られちゃうんだからさ。



 ……でも、その言い分には不満がある。


 カイルとの仲をからかうのはいい。私たちを振り回して楽しむのも許そう。

 でもその勘違いだけはいただけない。


 私は断固として否定した。


「お兄様とも手を繋いだことはあります」


 カイルとだけ? そんなことは有り得ない。


 私の全てはお兄様のものだ。


 はじめてのおふろ……は覚えてないし、はじめて手を繋いだのだって多分、家族の誰かだとは思うけど、お兄様が相手だという確証はない。


 それでも私の意思としては、私の全てはお兄様のものなのだ。


 カイルのことは嫌いじゃないけど、カイル()()なんてものがあってはならない。あるわけない。あろうことなど許されない。


 だから私は胸を張って言うのだ。

「カイルとだけじゃない」と。


「いや家族は別でしょ」


 ……間髪入れずに反論されようとも、私は負けない。


 知っているかい? 恋とは障害が大きいほど燃え上がるものなんだよ。


 兄妹だからなんだい。

 それって男と女ってことじゃないのかい。


 他人の兄と付き合うのは問題ないのに、自分の兄とはダメだなんておかしな話ではないか。


 人類みな平等。

 たとえ兄と妹だって、兄妹である前に一人の人間なんだから恋くらいするさ。


 その恋愛の相手に自分の家族を求めるのは、広い世界から見れば珍しいかもしれないけど、でもね。思考をフラットにしてよーく考えてみてごらん?


 ――幼い頃から常に一緒に育って。


 ――どんな時でも一番に私のことを気遣ってくれて。


 ――嬉しいことがあれば共に喜び。悲しいことがあればすぐに慰めてくれて。


 ――あと単純に顔が好みとか中性的な雰囲気がどストライクとか色々あるけど。


 まあ惚れるよね。

 世界で一番私をお姫様扱いしてくれる理想の男性だよ? 惚れるよね。


 同じ親から生まれたって点にさえ目をつむれば、兄妹なんて幼馴染みの一種だと思う。


 だから兄に恋をするのは当たり前。普通の感情。むしろ兄に恋しない妹がいる方がおかしい。


 妹とはすべからく、兄に恋するものなのだ。


 ……とまあ、私にとっては今更確認するまでもないこの基本的な考え方を説明し始めるとお昼の休み時間が終わってしまうので。


 大変に不本意ながら、分かりやすいように一言でまとめてみた。


「お兄様は家族ではないので」


「えっ!? そうだったの!!?」


「嘘をつくな」


 驚く女の子たちにカイルがすかさず、鋭いツッコミを入れた。……ツッコまれたのは私か? まあいいや。


「嘘じゃないもん」


 全く失礼な。

 カイルは本当に、私の発言にばっかり反発して。


 円滑なコミュニケーションは相手の言葉を受け入れることから始まるのだということを知らないらしい。実にお子様である。


 そんなお粗末なお子様であるカイルは、私とカイルのどちらの言葉を信じればいいのかと混乱を続ける女の子たちを見て、これみよがしな大きなため息をついてから、私に向かってズビシッと指を向けてきた。


 こーゆー行動もお子様である。


「何が嘘じゃないのか言ってみろ。ちなみに俺はお前の家族全員から、お前ら兄妹は確かに血の繋がりがあるって聞いてるぞ」


 何聞いてんだこいつ。

 新手のストーカーかな? なんか背筋がゾワっとしたぞう。


 ……カイルがとんでもないカミングアウトをしたというのに、それでも何故か場の空気は未だカイル側に優勢だった。


 なんか納得いかなーい。


 それでも「説明プリーズ!」と求める目に押されて答えちゃうんですけどね。てへ。


 お兄様を語れる機会を逃す私ではないのだ。


「家族の定義については(はぶ)くけど、まず何よりも知っていてもらいたいのはお兄様は一般的な兄の枠組みには収まらない存在だということ。理想の男性で、理想の家族で、理想のお兄様なんだよ。家族とか兄妹とかそんなレベルの話じゃないの。初代の王様とか同じ人間だけど神様みたいに崇められてるような人がいるでしょ? 私のお兄様は正にそんな感じで、家族の前にお兄様なの。家族ではあるけどお兄様なの。私の兄として生まれるべくして生まれたお兄様で、私と相思相愛になるべくして――」


「もういい、わかったから」


「――運命の元に導かれた、私だけの為のお兄様なの。だから家族と言うよりは」


「もういいって!!」


 なんだようるさいなあ。今から説明しようと思ってたのになんで邪魔するんだ。カイルが言えって言ったんじゃんか。


 せっかく気分が乗ってきたところだったのに、水を差された気分だった。


「いくらなんでも飛ばしすぎだろ。みんなびっくりしてるぞ」


 カイルの指摘を受けて、周囲に目を向ける余裕が出来た。


 みんなって……ああ!


「お兄様の素晴らしさ、わかってくれた?」


「ちっがう!!」


え?父親はお姫様扱いしてくれないのかって?

あの人は幼い頃にソフィアの負担を考えずに連れ回した(見世物にした)過去があるから点数低いみたいだよ。

顔も「好みじゃない」って言ってた。

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