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カイル視点:黒歴史


 ソフィアが女子たちに連れてかれると、入れ替わるように男子が俺のとこに集まってきた。

 まあ、女子もいるけどな。


「おうおうカイルくんよ。説明してもらおうか」


「で、マジ? どこでヤってたん?」


「やるねー、カイルくん。わざと見せ付けたんだ?」


「なんもやってねーから」


 まったく……。どんな話を聞いたんだか。


 顔を突き合わせるくらい、俺とソフィアの間ではよくある事なのにな。


 何考えてんのかはしらねーけど、アイツすぐボーッとして反応薄くなるからな。ああして起こしてやってるってだけだ。


 ……普通に起こそうとすると、関節キメてくるからな、アイツ。


 ソフィアの常識外れな行動を思い返して苦笑していたら、男子の壁の隙間から、一人の女子が顔を出した。


「なにもってことはないでしょー? 人目を忍んでごそごそしてたでしょー? あたしはこの目で見たんだからねっ!」


 それはソフィアが取り逃した女子だった。


「あれ? お前ソフィアの方行ったんじゃないの?」


「行かないよ!? 今ソフィアのトコ行ったらあたし怒られちゃうじゃんっ!」


 怒られるようなことした自覚はあるんだな。


 じゃあ、あれ? あっちにいるのって……。


 俺はソフィアが連れて行かれた方を見た。


 ぐったりとして抵抗を諦めたソフィアの肩を掴んで楽しそうにしているのは、目の前の女子と瓜二つの顔。

 ……ならあっちが双子の逃げてない方か。ソフィアはよく見分けがつくな。


 俺は正直、人の顔覚えるのって苦手なんだよな。


 改めて目の前の顔を見ても……うーん。


 女子らしい、長いまつ毛。

 パチリとした蒼い瞳は快活そうで、美人とも、可愛いとも評して問題は無い整った顔。


 だけど当然、双子だから二人とも同じ瞳の色だし、同じ髪の色だし、声だって似たようなもんだ。並べて比べれば違いがあるのは分かるだろーけど、どっちがどっちかなんて分かるわけない。


「……え。な、なに?」


 っと、ずっと見てるのは良くないな。


 気が付けば、机に顔の半分を隠すようにして覗いた目から、抗議する視線を向けられていた。


「わり。なんでもないよ」


「……そう? 本当はあたしにムカついてるーとか、そんなんじゃない?」


「ないって」


 そんなに心配なら初めからやんなきゃいいのに。


「ソフィアはずっと文句言ってたけどな」


 親切心でソフィアの様子を伝えると、「それはいいの」と軽く手を振られた。


「大丈夫だいじょーぶ。ソフィアは怒っててもかわゆいからね!」


 ……ついさっき「怒られる!」って怖がってなかったか?


 やっぱり女子の考える事はよくわかんねーや。

 ソフィアの怒りが可愛いって時点で俺とは相容れないな。


 と、そんな会話をしていたその時。突然ずしりと、背中に誰かがのしかかってきた。


 暑い。重い。むさ苦しい。


 この三重苦と共に現れる男。

 ソフィアが好きなくせに告白もしねーで、何故か俺を目の(かたき)にしてくるめんどくさい奴だ。


「おい? おいってばおいカイルくん様ぁおい? 俺の事無視して女子とイチャコラしてんじゃないよ? 当て付けかコラ」


「まとわりつくな、鬱陶しい」


 ったく、放っておいてもどーせ絡んでくるんだから放置するに決まってんだろ。


 てかなんでこいつもこっちにいんだよ。ソフィアに構ってもらいに行けよ。


「お前、今日はソフィアに優しい言葉かけてもらわなくていいのかよ。いつも朝の挨拶してんだろ?」


 いつもだったら女子が集まっていようと構わず突撃して話に混ざってくるくせに、なんだって今日は俺のとこに来たんだ?


 そんな俺の素朴な疑問は、わかりやすい一言で説明された。


「……今日は、無視されそうな気がして……」


「気がして、ってお前……」


 挨拶くらい普通にすればいいのに。どんだけ気が小さいんだ。


 ……まあ、俺の目から見ても、今日のソフィアだったら無視するかもとは思うが。


「で」


「そんなことより」


 話の切れ目に、ずずいっと割り込んで来たのは剣術の授業でよく相手をするヤツらだ。

 勉強が苦手な仲間でもある。


「ソフィアとの話、聞かせろよ」


「つってもなぁ……」


 どうしたもんか。


 素直に「でことでこくっつけて、押し合いしてた」なんて言ったところで信じてもらえねーだろうし。


「まぁ、いつものおふざけの延長だよ」


 ふざけたお遊び。それが事実ではあるんだが。


 いや、なぁ。

 先にでこを押し付けた俺が言うのもなんだけどさぁ。


 ……ソフィアって、俺と身体触れるの、あんま嫌がらないんだよな。


 あれって、もしかして――。


()()()だとぉ!?」


 ああ、こいつうるっせぇ……。

 男に顔近付けられても不快感しかねーわ。


「お前もうソフィアんとこ行けよ。そろそろアイツもほとぼり冷めたろ」


 そう思ってソフィアの方を見てみれば、案の定だ。


 既に立ち直って――、ん?

 その割には、なんか動きが……。


「エロイナの――」


 ――え? 今あいつら、エロイナって言ったか?


 ……おい、嘘だろあの女。

 まさかあのこと、誰かに喋ったってのか!? 信じらんねぇ!!


エロの伝道師、エロイナ。

彼女の口はとーても軽い。と思いきや案外軽い。いや普段は軽い。……大体軽い。

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