アリシア視点:妹を愛でよう
妹がかわいい。
弟が生まれたときは、弟がこの世で一番かわいい生き物だと思っていた。
すべての愛情を注いで、甘やかせるだけ甘やかして「ボク、おねえさまと結婚する!」と言われる日を夢見て可愛がった。
反抗期がきたときには、これがこの世の終わりなのかと絶望した。
あまりの嘆きっぷりに慌てて「ごめんなさい」って謝る弟が可愛すぎて昇天するかと思った。
弟は今でも可愛い。
素直でとても良い子だ。
だけど、4年前に生まれた妹はこの世で一番だと思っていた弟を遥かに凌駕するかわいさだった。
この世のかわいさじゃなかった。
言葉なんかじゃ言い表せないけれど、敢えて言葉で表現するなら、そう。
天使。
別世界から私のために現世に舞い降りた神の愛し子。
この世で最も可愛い弟と、神の世界で最もかわいい妹。
私、今満たされてる。
ぷくぷくお手々で私の指を掴んでた妹も4歳になり、色々なことに興味を持つようになっていた。
中でも本が好きらしい。
赤ん坊の頃から読み聞かせが好きだったから、母様と二人で色んな本を読み聞かせた影響だろうか?
私が本を持っているのを見つけると、トテトテと寄ってくるのだ。
かわいい。うちの妹かわいい。
女の子は男の子よりも成長が早いらしい。
弟のときと違って会話がちゃんとできるようになるのも、分別がつくのも早かった。
悪戯なんて全然しないし、字だってもう読める。なんて頭が良いのだろう。私の妹は天才に違いない。
最近は魔法に興味を持っているようで、暑い日に風の魔法を使ってあげるとキャーキャーはしゃいで「おねえちゃんすごい!」って飛び跳ねて喜んでいた。
かわいい。私の魔法の才能は妹を喜ばせるためにあったに違いない。
お父様が火球を出したときにはがっかりされたって言っていたけれど、お父様のことだからどうせまた余計なことでも言ったのだろう。
あまりにかわいかったから頭を撫でてあげた。手に頭を押し付けてくる。かわいい。嬉しそうな笑顔がかわいい。かわいい。
そのうち、魔法ってどうやって使うの? って愛らしく小首をかしげて聞かれたから、体内の魔力の感じ方や実際の発現の仕方なんかを手取り足取り教えてあげたらふんふん頷いてふぬぬって力んだりしだした。かわいい。
うまくできなくておねーちゃんって困った顔で呼ぶのもかわいい。
いつのまにか部屋のドアから姉妹のふれあいを羨ましそうに覗いてる弟に気付いた。なにあれかわいい。
手招きしてあげると「バレちゃった!」みたいな顔してたのに素っ気無さを装って入ってくる弟かわいい。
弟が来たことに気付いて笑顔になる妹もかわいいし、妹の笑顔に釣られて作ってた顔が崩れて笑顔になっちゃう弟も当然かわいい。
二人並んで魔法の練習をしながらふぬぬってがんばってるのかわいい。あぁかわいい。
今ではそんな毎日が続いている。
かわいい弟妹に囲まれて私は幸せだ。
「おねえちゃんもかわいいよ?」
「あぁかわいい!!」