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帰還、そして


 家。


 それは癒しの空間。


「おかえり、ソフィア」


「ただいま戻りました、お兄様っ」


 胸に向かって飛びついた私を、しっかりと抱きとめてくれるお兄様。


 兄。


 それは活力の源。


 お兄様の愛さえあれば、私はなんだってできるのだ。



 ――だから帰ってすぐ、休む間もなくお父様の執務室に呼び出されたって頑張れるもん。


 全く、信じられないね。


 あれだけの長時間馬車を操っていたのに平気な顔をしてるお母様は、実は人間ではないのではなかろうか。お尻とか痛くならなかったんだろーか。もはや人類の域を超越してるよね。


「ソフィア」


「はい」


 ほら! ほらぁ! 私が変なこと考えてるのに超反応で注意してくるのもおかしいんだって!!

 だって今こっち見てなかったのに! なのになんで分かるんだよぅ! 頭の後ろに目でもついてるのか! それともエスパーか! なんなんだ! ほんともう、なんなんだ!!


 はあ……。今回の呼び出しはどうせお父様が叱られるのがメインだと思ってたけど、これは油断してると私も叱られる羽目になりそう。


 気を引き締めていこっと。


 今度はちゃんとこちらを見て私が姿勢を正したのを確認すると、お母様は満足そうに頷いて本題に入った。


「道中ソフィアに聞きましたが、改めて確認を。……陛下から連絡があったというのは事実ですか?」


 お母様の真面目な声に、お父様も気持ち姿勢を正して答えた。


「ああ。ソフィアを正式に聖女としての任に就けると俺のところに連絡が来た。謁見は明後日だったからな、間に合ってくれて本当に良かったよ」


「……そうですか」


 どうでもいいけど私らってお母様にめっちゃ弱いよね。それとも単に、お母様が強すぎるのか。


 別にお母様を従わせたいとか思ってるわけじゃないけど、たまにはこう、お父様が男らしいところを見せて、お母様が胸キュンしてる様なシーンを見たいような気も……いや、ないな。ないない。お父様にそんな甲斐性あるわけなかった。


「ソフィア」


「はい」


 ごめんなさい嘘です何も考えてません。

 お母様がお父様に「俺が愛する妻を守るのは当然のことだろう」とか言われて「あなた……っ!」なんて乙女モードるんるんの面白……おかし……か、かわいらしい姿になってるところなんて全然想像していませんから!!


「ソフィアは最近、陛下とお会いになってはいませんね?」


 あ、良かった。声をかけられてびっくりしたけど、心の中を読まれたわけじゃないみたいだ。

 嫌な汗かいたよ……。


「はい。直近だと、確か学院入学時の挨拶の時に……あ、いえ。夏の生誕祭の折に、壇上にお見かけしたのが最後かと」


 にしても、陛下か。


 改めて思い返してみると、王様が出るパーティーにはそこそこ出席してる記憶はあるのに、直接挨拶したのって幼い頃の一回だけじゃないか?


 うちの貴族としての格を考えるとおかしな事でもないけど、他の家の子達はもう少し機会が……って、あれかな。私がそーゆーの好きじゃないって知ってるから、お父様もお母様も、私が休んでる間に挨拶を済ませてくれてるだけか。


 優しい両親を持って私は幸せだなー。


 なんて気楽に考えたいけど、お母様の難しそうな顔を見ると、複雑な大人の事情とか色々あるんだろうな。


 大変そうだけど、そこは全幅の信頼を寄せるお母様の領域。


 優しいお母様を持って私は幸せだなー。


「……ソフィアの件は分かりました。では次に、アリシアの部屋に寝かせているアイラの件ですが――」



 その後もお母様の話は続いた。


 アイラさんの治療を頼まれたりしながら、いつお父様が叱られるのかと待ってたけど、結局最後までお父様が叱られる場面は来なかった。


 良かったねお父様!


叱られるかビクビクしながら聞く話はいまいち集中できなかったそうな。

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