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青兄様とお話しよう


 祖父が孫娘に勝てる道理などないのだ! ふはは!


 お泊まりの確約をもぎ取ってから、お母様とおじいちゃんの話し合いの場を作った。


 場は用意するが仲直りまで終身サポートする気は無い。

 子供の私はさっさと退散して、せっかくの機会なので青兄様とお話しようと探している最中なのです。



 で、やってきました。お姉様の部屋。


 初めはお兄様の部屋に向かったんだけどいなかった。


 あの二人がどんな話をしているのか興味があったんだけど、いないなら仕方ない。お姉様とフェレットをもふもふしようと思って来てみたら三人分の話し声がしたというわけさ。


「お姉様。フェレットさんたちと和みませんか?」

「大歓迎よ! 早く入って!」


 実に軽い挨拶と共に部屋に入れば、お兄様が苦笑いしてた。なんだろ? 青兄様も憔悴して見える。

 まあ、お姉様の部屋だからね。


「改めまして、ロイお兄様。末妹のソフィアです」

「先程は失礼した。ロイだ。よろしく、というのもおかしな話だが、仲良くしてくれると嬉しい」


 さっき会った時よりも幾分か柔らかな雰囲気。

 おじいちゃんがいないからか、それとも兄妹としての距離感なのか。私的には堅苦しく話されると息苦しいので適度に緩んでいて欲しい。


「それで、三人でなんのお話をしていたんですか?」


 実に当たり障りのない、凡庸とも言える質問を選んだのに返ってきたのは戸惑いだった。


 私が戸惑いたい。


「ロイの昔話だよ。面白い話もいっぱいあるよ〜」

「姉上……」


 いつの間にかエッテを抱きかかえてたお姉様が教えてくれた。


 楽しそうだけどこの空気。お姉様が青お兄様をからかってたっぽい。

 お兄様は優しいからそれに同情してたってところかな。


「その話もとても気になりますけど、ロイお兄様のお話も聞いてみたいです」

「ん、あぁ……」


 おや、助け舟を出したつもりが反応がよろしくない。なにか間違ったかな。


「ソフィア、ソフィア」


 青兄様の反応の原因を考えているとお姉様に手招きされた。内緒話みたいだ。


「ちょっと、『おにいちゃん』って言ってみて」

「え?」

「ロイって女の子に免疫無いから。面白い反応してくれるはずよ」


 それはちょっと見たいかもしれない。

 さすがはお姉様。私のツボまでよく心得てらっしゃる。


 せっかくの情報なのでありがたく活用させてもらおう。


 フェルをお姉様に預けて、私は青兄様の前に立った。


「な、なんだい?」


 お姉様の入れ知恵に明確な警戒心を浮かべる青兄様。


 だが残念。この攻撃は防御不可だ。たぶん。


 念の為、普段よりも甘めの声を出してあげよう。


「おにいちゃんっ」

「ぐうぅ!」


 呼んだ途端に胸を押さえて苦しみ出した。

 練習してたのかと疑うほどリアクションいいよね。うーん、楽しい。


「あらあら、どうしたのロイ? 『いくら可愛かろうと妹にトキメクなどありえない』んじゃなかったの?」


 お姉様がめっちゃ煽ってる。


 普段からSっ気があるけど今日は格別だ。

 蹲る青兄様の前で今にも高笑いしそうなほどふんぞり返っていた。


「さあ、潔く敗北を認め復唱なさい! 『ソフィアちゃんはかわいい!』」

「た、確かに、ソフィアがかわいいことは認めよう。だが!」

「だが、じゃありません! 言い訳なんて男らしくないですよ!」

「ぐうう!」


 青兄様はまたもダメージを受けていた。


「ソフィアはかわいい! ソフィアは天使だ! ソフィア愛してる! はい!」

「そ、ソフィアはかわいい……ソフィアは天使だ……ソフィアは……」


 私もダメージ受けそう。


 お姉様を止めてくれないかとお兄様を見れば、我関せずとフェルとエッテに囲まれてほのぼのしていた。

 私もそっちがいい。癒されたい。


 後ろで行われている謎の私賛美を意識の外に追い出して、お兄様の元に逃げだした。


硬派を気取るロイ少年は、妹至上主義の教祖アリシアによって無事、妹好きになりましたとさ。

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