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お説教中


 お爺様にお母様のところに案内してもらった。


 え? その後?


 ………………めちゃくちゃ叱られました。



「ソフィア。また聞いていませんでしたね」


「痛っ、イタタッ。耳引っ張らないでくださいぃ」


 っていうか、現在進行形で叱られている真っ最中。


 早く終わらないかなー、むしろ現実では既にお説教は終わってて、これは私のお説教嫌いが見せてる夢なんじゃないのかなー、なんて現実逃避をしていたら、すぐに現実へと引き戻された。


 常時発動してる防護魔法のおかげで実際に痛みを伴うことは無いが、身体を直接動かされるとどうしたって意識は取られてしまう。


 するとどうだ。

 延々と終わらないお説教地獄へと早戻りだ。


 話を聞いても怒られる。聞いてなくても怒られる。


 これもう詰んでない?

 こんなんどうしようもないよね。はーめんど。


 ――なんて考えてたら、頭をがっしと掴まれた。


 あ、しまった。油断した。


「話を。聞きなさいと。言っています」


 ぐるんと。ぐるんぐるんと。


 両手でしっかりと固定された頭を、首がめきゃめきゃ鳴るくらい好き勝手に振られまくった。


 外傷には耐性つけてるけど身体的な能力は今は人並なんだ。あんまりやられると首が壊れちゃう、っていうかその前に酔う。やめてやめて、目が回るぅぅぅ。


「あ、あああ。お、お母様。あ、頭を揺らさないでぇぇ~」


 頭を掴んでいる手を叩きながら許しを乞う。


 しかしお母様は動きを止めてはくれず、今度は前後に揺さぶり始めた。がっくんがっくん視界が揺れる。

 あああああああ。


「私も、話を聞きなさいと、何度も言いました。ソフィアは聞き入れましたか? 無視される側の気持ちが分かりましたか?」


「わ、わかりました。わかりましたからぁ~」


 だからこの揺れを止めてぇ、と情けなく白旗をあげると、お母様はようやく手を離してくれた。


「全く、貴女は……」


 うう、ぐるぐるする。

 防護魔法で護られた私に的確なダメージを与えるなんて、流石は私のお母様……。


 うう、でもお母様だってさも呆れた風に言ってるけど、私の頭を揺らしてる時、実は結構楽しんで……、あ、ダメだ。まだ世界が揺れてる。さ、先に回復しよう。回復~。


「そもそも、私の許可なく街を越えての移動はしないようにとあれほど……」


 あ、またお説教が始まった。


 このままでは無限ループだ。何とかせねば。


「あの、お母様。お爺様もお待ちですし、そろそろ……」


 あまり効果は期待的なさそうだが、お爺様を引き合いに出してみた。


 が、話の途中で口を挟んだ抗議か、ジトリとした目を向けられるに留まる。


 これは選択肢を誤ったかな。

 フェアリーズエデンのお菓子を出すのが正解だったか?


「貴女が反省すればすぐにでも終わらせるつもりはあります。なのに貴女ときたら、人の話は聞き流し、反省どころか悪いとすら思っていない。違いますか?」


「ちゃんと反省してますよぅ……」


「どうだか」


 うう、全然信じてもらえない。


 自分としてはちゃんと「叱られて反省している少女」を演じ切れてるつもりなのに、どうしてお母様にだけは通用しないのだろうか。


 お父様相手なら妄想の世界に逃げ込んでる時だって「よしよし、しっかりと反省してるな」としか認識されないのに。


「……今、『どうしたら反省したと思ってもらえるだろう』と考えているでしょう」


「…………」


 お母様、やっぱり私の心読んでないかな。


「反省というのは、叱っている相手に満足してもらう為にするのではありません。貴女が、自身の行いを反省しなさいと、叱られるような悪い事をしていると自覚なさいと言っています」


 えー。でも私、悪い事とかしてないしー。


「……今、『でも私は叱られるような悪い事はしていない』と考えているでしょう」


 ――精神防御の魔法に異常なし! お母様はどうやって私の心を読んでいるんだ!?


 内心の驚愕すら筒抜けなようで、お母様は私の声無き声を聞いて、頭を抱えていた。


「本当にこの子は、もう……。……私との約束を破ったことについては、どう考えていますか?」


 む、それを言われるとちょっとつらい。


 半ば押し付けられた形とはいえ、「街を出る時にはお母様の許可を得る」という条件は一応、双方が納得した上で約束したものだ。


「それについては、ごめんなさい」


 なのでそれは素直に謝っておいた。


 それは、というのがポイントである。


「……謝れない訳では無いのが、せめてもの救いかしらね」


 謝罪の言葉が聞けたからか、お母様のお説教モードが収まっていくのを感じる。ああ、やっと解放される!!


 面倒な自覚はあるけど、無駄に謝るのって好きじゃないんだ。ごめんねお母様!


「あ、そうだ。お父様からお手紙を預かっていたんでした。はいこれ」


「……お説教が終わりだと言った覚えはありませんが?」


 あれ、ちょっと先走った?


 まあいいや。押し通しちゃお。


「何か重要な事が書いてあるかもしれませんよ? はい」


「……」


 胡乱な目で見られはしたが、手紙は受け取ってくれた。


 よし、お説教おーわりっ。


暖簾に腕押し糠に釘。

ソフィアに説教。

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