表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
370/1407

後遺症の原因


 ウォルフの魔力が増えた。


 その言葉を聞いた時から想像はついていたが、ネムちゃんに説明された事は、つまりこういう事だった。


「つまり私がウォルフの喪神病を治した後から、ウォルフの魔力が増えていたと」


「そう!」


 ……まあ、魔力直接流し込んだしね。


 生命活動に支障が出かねないほどに魔力が減衰してたから、せめて日常生活が送れるくらいにはしないとなーと思って私の魔力を渡して、混ぜて、馴染ませて、って色々したけど、確かにウォルフが起きた後にわざわざ流し込んだ魔力を抜いたりした記憶はない。


 そっかー、増えちゃったかー。

 数日も経てば私が渡した過剰分は抜けると勝手に思ってたけど、残っちゃったかー……。


「それ多分私の魔力だ。どうしよ、今から無理やり抜いた方がいいと思う?」


 念の為ネムちゃんに聞いてみたら、意外なほど強く否定を示された。


「ダメ! ダメだよ絶対! 危険!」


「だよねぇ」


 危険か。


 まあ魔力って本来、そう簡単に入れたり抜いたりするもんじゃないからなぁ。空っぽにしたら多分死ぬし。

 急に減らしただけで目眩とかするもんね。


 でもそんな大事な要素だからこそ、身体には防衛機能として余剰な魔力は勝手に抜けたり、足りない時には魔素の収集効率を高めることで対処したりするような機能がついてるはずなんだけどなぁ。


 そう思ったから放っておいたのに、抜けてないとは。


 うーん……。


 ウォルフの治療の時の記憶って、魔力の異常な通りやすさのインパクト以外だとウォルフの意識を引き戻すために即興で作った「思い通りの夢を見させる魔法」のことくらいしか大して覚えてないんだよね。あの夢の世界構築するの結構苦労したし。そのせいで大分疲れてたし。


 てーか基礎魔力が増えちゃったってことは、ウォルフの根幹に関わる何かを知らずに弄っちゃった可能性が高いよねー。


 そんな危なそうなことするわけないと断言したいとこだけど、現実さんに裏切られてるわけで。


 なんか変なことしたっけなー。

 自己流ではあったけど治療に必要な行為しかした覚えはないんだけどなー。


 魔力生成のメカニズムは全部解明できてるわけじゃないとはいえ、それにしたって…………あ。


 もしかして、あれかな。

 ウォルフの身体の中で魔力動かしてる時に、ついでに流れを良くしたやつかな?


 ウォルフの身体の中に元からある魔力の通り道が、あんまりにも狭くて細くて流れが悪くて「ああもう! ちまちましか魔力送れないの面倒くさあ!」って焦れったくなってつい拡張しちゃったけど、アレは起きてからも影響あるよね。だって普段から魔力流してるトコなわけだし。


 んで流れが良くなった分、とーぜん基礎消費量も増えるよね。そしたら魔力の生産量だって増やさないと追いつかなくなるよね。


 はい解決ー! 見事に私のせいでしたー!


「うん。ネムちゃんの指摘通り、どうやら私のせいっぽい」


「ほらみろ。だから最初からそう言ってるじゃん」


 ぐぬぬ、カイルには言ってないし。


 でも悔しいけど言い返せないぃぃ。

 悪いのは私じゃないもん。あまりにも貧弱だったウォルフの魔力に問題があるんだもん! と心の中だけで反論しておいた。(むな)しい。


 ……まあ、なんだ。

 増えてた魔力が私の魔力じゃなくて良かったと考えとくべきかな。


 あの後、帰ってから気付いたんだけど、例の魂の件とか考えると人の魔力って記憶とか意思とか含んでそうだから「もしかしたらウォルフに変な記憶見られたかも」みたいな不安がちょぴっとだけあったんだよね。


 でもウォルフの増えた魔力は私が渡したやつじゃなくて、私が広げた隙間に適応する為にウォルフ自身の身体が増やした魔力だったと。


 つまりウォルフの魔力だね。


「まあ私のせいではあったけど、問題ないよね? ウォルフも喜んでるみたいだし」


「うん……そうかも」


「問題あるぞ!!」


 あれ、ネムちゃんから同意が得られたのに何故か全力で異論を唱えてる人がいるぞ?


 魔法に秀でる魔族な賢者に師事してて、かつ本人も優秀なネムちゃんからは同意が得られたのに、魔法学の成績の話なんか一度も聞いたことないような、魔力視すらできない人が、なにか、吠えていますよ??


「俺との差が開いた!!」


 子供か。と思ったら子供だった。

 まさか目の端に涙を貯めるほどに悔しがっちゃうなんて思いもしなかったよ。


 ……なんか悪いことした気分になってきた。


「えーと……。頑張れ?」


「俺の魔力も上げてくれ!」


 適当にエールを送ってみたけど無視された。今日はスルーされる日なのかな。


「カイル的に、ズルいとか思わないの?」


「ウォルフだけズルい!」


 素直すぎるでしょ。


 でもカイルの言うことも確かなんだよねぇ……。どうしようかな。


純粋な気持ちでぶつかられると弱い。弱いけど、カイル相手には素直になれない。

結果→とりあえず焦らす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ