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絶好調なウォルフ


 ――ウォルフの調子が良い感じらしい。



 騒ぐ男子を見て、そんな話があったのを思い出す。


「今日も絶好調だったな! マジでどうしたんだよお前!」


「お前、実は偽物のウォルフだろ? そうなんだろ? 本物をどこへやった今すぐに吐け!」


「新しい家庭教師でも雇ったか? いい加減教えろよ」


 ウォルフがまた何かやったらしい。


 ネムちゃんと共に魔法実践の授業から戻ったら、既にこんな感じになっていた。


 ……でもぶっちゃけ、ウォルフの事ってあんまり興味わかないんだよね。


 浮かぶ感想といえば、「君らが騒いでるその時間に頑張ったから、ウォルフだけ結果出してるんじゃないのかな」とか、その程度だ。もちろん言わないけど。


「おうソフィア」


「ん、カイル。どうしたの?」


 話に混ざる気もないし、次の授業の予習でもしようかなと準備してたら、カイルが声を掛けてきた。


「ウォルフのこと知ってるか?」


 カイル、お前もか。


 まあ勉強の邪魔にならないなら話くらいはいいか。どうせ暇だし。


「最近頑張ってるみたいね」


 ウォルフは最近、クラスで注目の的になってる。


 勉強の成績だけは変わらないみたいだけど、剣術の授業では一部の達人だけが使える衝撃波の紛い物みたいのを出して一躍時の人になってたし、魔法の授業の方でも、私は一緒に受けてないから詳しくは知らないんだけど、なんか先生に褒められてたってのは聞いたような気がする。


 頑張るのは良い事だ。


 こないだミュラーが「また新しい婚約話を勧められた」なんて愚痴も零してたし、タイムリミットとか色々と大変なこともあるんだろう。これからも精進するといいと思う。


 そんなことを考えていたら、不意に教科書に影が落ちた。……っていうか、カイルの顔が近付いて来てた。


 勉強の邪魔なんですけど?


「なに?」


 不機嫌な声を出しても気にした様子もなく、そのまま耳を貸すよう仕草で示すカイル。


 ……仕方ないな。


 周囲に声が拾われないくらい寄ったところで、カイルは本題を口にした。


「……ウォルフのアレ、お前が関わってるってホントか?」


「はあ?」


 アレ、というのは急に成績が伸びたことだろう。


 まるで別人のようだ。と噂されているのは知っているが、それと私を結びつける理由がわからない。


「なんで私?」


 なんでもかんでも私のせいにするのやめてくれませんかね。


 カイルは私との付き合いが長いせいか、理不尽や訳の分からないことがあると「あれはきっとソフィアのせいだ」と、とりあえず私のせいにする悪癖がある。


 非常に迷惑極まりないので止めて欲しいのだけど、本人曰く「半分くらいは当たってるじゃん」だそうなのでイマイチ文句も言い難い。

 なんてことは無いけど、言っても聞かない。


 言うだけ無駄って分かってるけど、でも不満に思ってるってことはちゃんと表明していかないとね。また根も葉もない噂を広められたりしたら堪らないし。


 まったくカイルってば、本当に迷惑極まりないんだから。……と思ってたんだけど。


「ウォルフがそれっぽいこと言ってた」


「はああ?」


 今回の諸悪の根源はウォルフらしい。


 訂正しよう。男子って迷惑極まりない。


 完全に事実と異なる。

 断言するが、私がウォルフ相手に剣や魔法を教えた事なんてない。


 唯一近いものがあるとすればこないだの勉強会だけど、あの時はほとんどカレンちゃんに任せてたし……。

 あ、あとはあれか。見て盗んだとかそういうやつかな?


 確かに私は他の生徒とは違って、先生に「魔力の流れを見られる」ことを前提に動かしてるから魔法の構築や発動時の魔力の流れは人一倍綺麗で見やすいはずだし、その美しさはもしも魔法の授業に芸術点があったなら文句なく満点が取れる水準であると自負してはいるけれども。


 あっ、ていうかウォルフって確か魔力視できなかったんじゃないっけ? いつの間にかできるようになってたのかな。


 んー……。まあどうでもいいや。


 ウォルフがどうやって私から学んだにしろ、私には関係ないからね。


 それよりも私は予習がしたい。


 昨夜も予習したとはいえ、リチャード先生の授業で答えられない問題が残る可能性は極力排除したいんだ。あの人やたらと私に答えさせるし。


「よく分からないけど、だったらなんだっていうの?」


「俺にも稽古付けてくれ」


「ヤダ」


 なにそれ。ていうかウォルフにも稽古なんてつけてないし。


 カイルは私をなんだと思ってるんだろうか。


「ウォルフだけずるい!」


「ウォルフにも何もしてないってば」


 勢い込んできたカイルにそう返せば、まるで肩透かしを食らったみたいに言葉に詰まってた。


 そのまま巣へ帰れ。男子たちの巣へ。


「で、でも、俺にも魔法……」


 ぷぷっ、勢いだけで押そうとしたの失敗して混乱してる。

 めっちゃ情けない顔してる~あはは。


 あ、いいこと思いついた。


「ネムちゃん、ちょっといい?」


「なーに?」


 お菓子の礼だ。この天啓を形にしてあげよう。


 私に感謝するんだね、カイルよ。


「カイルがネムちゃんの弟子になりたいんだって」


いいこと≠いいこと。

いいこと=(ソフィアにとって)面白そうなこと。

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