「大人しく罪を認めるんだー!」
ここに裁判を開廷する!
罪なき少女を見つめ続けることによって辱めた三人の被告は、直ちにその罪を認め、行動に至った理由を明示すべし!
と、ゆーわけで。
証言そのいち。
「ソフィアを観察しようと誘われました。居心地悪そうにしているソフィアは可愛かったです」
証言そのに。
「んとー。カレンがね、ソフィア見てたからどうしたのかなーって思って。聞いたら『なんでもないよ』って言うから、本当になんでもないのか見て確かめてたの!」
証言、そのさん!
「…………み、見てないよ?」
「「それは無理がある」」
カレンちゃん、無駄な抵抗はよすんだ!
「見てたよね? 朝から見てたよね? ずーっと見てたよね? いくらなんでもその言い訳は通らないよカレン?」
「……うう」
まさかバレていたなんて……!
とでも言いたげにくねくねしてるけど、バレてるよ? 完全に完璧にバレてるよ?
隣りに座ってる時もチラチラ見てきてたし離れたところにいてもずーっと見てたしそもそもバレたくなかったら私の後ろの方の席に陣取るべきだと思うの。
わざわざ私の視界内でこっち見てるから「言いたいことがあるけど恥ずかしい……ソフィアの方から声を掛けてくれないかな……ちらちら」なパターンだと思ってつい焦らしちゃったじゃないか。でもバレてなかったと思い込んでたカレンちゃんもぽんこつ可愛いから許そう。
「あ、あの……実はね」
「うん」
ああ、これよこれ。カレンちゃんはこのもじもじがかわいいの。
最近のカレンちゃんってばミュラーと暴れ回ってる印象の方が強くなりつつあるけど、私が惚れたカレンちゃんはこの守ってあげたくなるカレンちゃんなのよ。
そのカレンちゃんが、熱い瞳で私を見ていた理由はなんだろなー?
「実は……ソフィアのこと、ずっと見てました。ごめんなさい……」
「それは知ってる」
うん、そうじゃなくてね?
「どうして私のことをずっと見てたの?」
それが知りたい。そこが聞きたい。
カレンちゃんが私をじーーっと観察していた理由。それは一体なぜなんだぁーっ!
と、一人で内心盛り上がっていたら、ちょいちょいと手招きされたので耳を寄せる。
内緒話ですね、まかせろ。
こう見えて私は内緒話が得意なんだ。
得意なのは人の内緒話の傍聴だけどね。てへり。
「……ソフィアには感情がない、って聞いたから、今日はよく見てみようと」
「うひゃひゃ」
カレンちゃんのひそひそ話ゾワゾワするぅ! 変な声でちゃうぅ!
「あっ、ごめんね」
「いや、あはは。いい、大丈夫、だよ」
はー、ぞくっとした。
それはそうと、感情がないってなんだ?
この天使の微笑み、エンジェリックスマイルのソフィアちゃんを捕まえてなんてことを言うんだ。自分で言うのもなんだけど私はかなり感情豊かな方だと思うよ!
「カレンもそう思うの?」
だとしたらちょっとショックだなーと思って聞いてみたら、すごい勢いで否定された。
「ううん、ううん! そんなことない! そんなことないけど、でもソフィアって時々大人っぽい顔するから、そういうのかなって」
え、大人っぽい顔してる? 私が?
いやーそうか。分かる人には分かっちゃうかーこの内面から溢れ出る大人の女としての魅力が!!
だとしたらカレンちゃんは何も悪くない。
悪いのは私。
カレンちゃんはただ、私の魅力に当てられただけの一人の被害者だと言えるだろう。
「まぁね。私は大人の女だから。仕草も自然とそうなっちゃうんだよね」
ふぁさりと長い髪を靡かせてみたりして。ふふ。
「そ、そうなんだ」
うんうん、さすがカレンちゃんはよく分かってる。と一人頷いていたら、傍聴者が我慢出来ずに吹き出した。
「ひぃ、ひぃーっ! ソフィアがっ、大人の女!! ソフィアが!! おとなの! おんなぁぁ!!」
「なにか文句でも?」
笑いすぎでしょ。
多少のウケは狙ったけど、いくらなんでも笑いすぎでしょ。
「そ、ソフィアがげほっ、おとな、大人のごほっふ。あは、あははははは」
「わははははは!」
「あははー」
そっかー。息が出来なくなるほどおかしかったかー。あははー。
笑いすぎでしょ? そろそろ怒るよ?
あとネムちゃんも、便乗して笑わないの!
あと近くで聞き耳を立ててるそっちの男子二人と反対側の女子!吹き出したの聞こえてるよ!
そこのグループは含み笑いしてるの見えてるからねっ!?




