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不治の病の治療法


 ソフィアちゃんは気遣いのできるいい子なので、お母様にショックを与えたくないのです。



 ――「貴女にしか救えない命がある。そう聞いても断ることに躊躇いはないのですか?」


 ――「私にしか救えない命ではありません」



 論点のすり替えっていいよね。



◇◇◇◇◇



「――喪神病は、患った本人が自らを奮い立たせることで立ち直ることができる病です。私の頑張りだけでウォルフを救えた訳ではありません。ウォルフが、自分で救われたのです」


 話しつつ、祈りのポーズを取ってみた。


 私の外見と併せて聖女っぽさがでるかなーと期待してみたんけど、お母様はこっちなんか見ちゃいなかった。「本人……、自分で……?」なんて呟きながら思考の海にダイブしていらっしゃった。いいんだけどね別にィ。


「それに、私は自分が誰をも救えるなどと傲慢なことを考えてはいません。喪神病は普通の病とは違い、治療する側と治療される側に深い関わりが必要なのです。いくら私が魔力の扱いに長けているとはいえ、見知らぬ人を喪神病から救い出すことは容易ではないでしょう」


 ということはしっかりと伝えておこう。


 まあ勿論、容易ではないだけで方法はいくらでもあるんだけど。


 ていうか知らない人を目の前に並べられて王様とかに「治せるだけ治せ」って言われたとして、「私がお役に立てるのならば喜んでー!!」なんて人種じゃないから。私。

 別にどっかの聖人さんみたいに奉仕精神に溢れてるとかないんで。


 いますぐ助けなきゃみんな死ぬ! って言うならともかく、あれ実質的に眠ってるだけだし。そんなに緊急性は……ああ、ひとつあったな。


「すぐに効果が出るというものでもありませんが、喪神病の治療には魔力の譲渡が効果的でしょう。真にその人を想う純粋な人の魔力を、量は少なくてもいいので定期的に。……えー、三日に一回程でしょうか? そうすれば喪神病が治るまでの期間は、従来の半分以下には減らせることでしょう。ええ」


 たぶん。


「そう、なのですね……」


 意識の回復にー、魔力の生成にー、あーあと魔力の質の変換もかな……。うん、魔力さえ確保できれば自然回復速度が段違いだし、期間の半減くらいは確実でしょ。餌さえあれば冬眠明けも安心、みたいな?


 まあ放っておいても問題はないんだろうけど、やっぱ魔力がないとどーしても回復は遅れるからね。


 少なくとも魔力が足りない内は意識もそうそう目覚めないし、万一意識が戻ったとしても起き上がることもできまい。魔力は全ての素なのだ。


 本来であれば他人に魔力を与える~なんてのは私でも手間取るくらい滅茶苦茶難易度が高い行為なんだけど、喪神病の人相手なら例外的にイージーモードだからね。

 倫理観を無視していいなら練習台に最適と言ってもいいくらい簡単。実に初心者向きと言える。


 ……ただ、魔力補充のデメリットがねー。


 喪神病にかかってる人って完全に無防備だから、悪意を持って魔力を供給したら簡単にあやつり人形に仕立てあげられちゃいそうなんだよね。


 とはいえ指向性を持った魔力なんて扱える一般人もそうはいないだろうし、『真にその人を想う心が喪神病の特効薬なのだ!!』ってことにしとけば変な問題も起こらないでしょきっと。

 うん、だいじょぶだいじょぶ。


 安全性を再確認してたら、お母様がとんでもないことを聞いてきた。


「つまりソフィアは、それだけウォルフという少年のことを大切に想っていた、と……?」


「私は例外です」


 まあ……みたいな顔しないでやめて本当に違うから!! とんっでもない誤解だよマジで!!


「純粋な気持ちというのは、あれです。親愛です。友人としてってことです。大体ウォルフには別に好きな人がいまして」


「あら……それは残念ね」


「いえ全然残念じゃないですこれっぽっちも」


 お母様の嬉しそうな顔久々に見たけどああああもうこの人笑うとかわいいんですよずるい!! 私のお母様かわいくてずるい! 普段が無表情な分ギャップがずるい!!


「お、お兄様は誤解していないですよね? 本当に違うんですよ?」


 ね? ねっ? と念を押せば、お兄様はニッコリと笑って――。


「大丈夫、分かっているよ。ソフィアはウォルフくんよりも、カイルくんの方が好みに近いんだよね」


「ふえぁっ!?」


「あら……まあまあ、そうなの?」


 なっ、なんっ、なんですと!?


「ちっ、ちがいます!」


 ひえぇぇぇ! なんでこんな話になるのォ!!

 私はいつだってお兄様一筋なのに!!


 いっそこの場で言っちゃう!? いやでもこの流れではマズいか!? 正解はどっちー!


「そんなに赤くなるなんて……。流石ロランド。ソフィアのことはなんでも知っているのね」


「それほどでもあります」


「あの、あのっ! 別にカイルとは本当に、そんなっ!」


 なにこのドヤ顔お兄様くそかわいいかよー!! こんなの文句言えないじゃん! ずるい! ずるいぃ!!


「お、お兄様っ!」


「あはは、ごめんごめん」


「うふふふふ」



 親子三人。

 仲良くきゃいきゃいしてましたとさ。


ソフィアの中でウォルフの好感度だけが明らかに低い。ダントツに低い。

これは攻略失敗してますわ。

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