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どうせこんなのが好きなんでしょ?


 リンゴーン。リンゴーン。


 教会の鐘が鳴る。


 どこまでも広がる晴天と暖かな陽射しは、今日という日を天が祝福しているかのよう。


 今日はめでたい結婚式。


 ウォルフとミュラーの結婚式だ。


「おめでとう!」


「おめでとう! おめでとう!」


 集った参列者達はみんな笑顔で祝福の言葉を送る。


「みんな、ありがとう!」


 応える新婦の顔にも溢れんばかりの歓びが見て取れた。


 だが、新郎の姿が見えない。


 いったいどこへ行ったのだろうか?


「ウォルフ? どこ?」


 愛する人に、着飾った自分の姿を見て欲しい。褒めて欲しい。


 その想いからミュラーはウォルフを探し始めた。


 彼は家に居た。


 あろうことか、未だに眠り惚けていたのだ。


「うふふ、寝顔かわいい」


 大事な日に寝坊だなんて、とんでもないことだ。


 それでも彼を愛する花嫁は微笑んで受け容れた。


 器の大きい素敵なお嫁さんを貰えた新郎は間違いなく幸せ者だろう。


「ほーら、ウォルフ。そろそろ起きて」


 ゆっさゆっさと身体が揺さぶられても、彼は起きない。


「……まったくもう。しょうがないんだから」


 そんなところも愛おしい。


 そう言わんばかりに優しく表情を緩めたミュラーは、少しばかりイタズラを仕掛けることにした。


 眠り続ける愛しい人の耳元にそっと唇を寄せて――。


「――いま起きてくれたら、キスしてあげるのになぁ」




 ガバッ!!


「そんな大胆な!!」


「わ、びっくりした」


 ミュラー効果すごい。ホントに起きた。


「……あれ? ここは……」


 今まで見ていたのが夢という認識はあるのか、キョロキョロと辺りを見回すウォルフ。


 しかし夢と同様、ベッド脇に誰かがいることに気付いたのか。喜色を浮かべた顔をこちらへと向けて――私と目が合うと同時に、その動きがピタリと止まった。


 そのまま、たっぷり数秒。


 不意に目をそらしたかと思えば、これみよがしに大きな溜め息を吐かれた。

 ミュラーじゃなくて悪かったね。


「ここはミュラーのおうち。ウォルフ、意識はちゃんとある? 直前の記憶は?」


 若干イラァっとはするけど相手は病人。私、お医者さま。


 精神的に弱ってる相手の失礼な態度なんて気にしませんとも。ええ、大人ですから。


「意識? ああえっと、俺はたしか……、ッ!」


 考え出してすぐ。

 それまでぼやっとしてた顔が一瞬で引き締まった。


「ソフィアッ! 今日、何日だッ!? あれからどれだけ経った!!」


「わぅ、ちょっ、離してっ」


 突然に袖口を引っ張られバランスを崩す。

 そのままベッドに引き倒されると、耳元で叫ぶ様な大声で捲し立てられた。


 耳が死ぬから大声やめて。


「……まだ一日も経ってないよ。ウォルフが倒れたのもついさっき。分かったら手、離して」


「………………は?」


 だぁ、うぅ。耳がァ。耳が痛い。


 私の妄想流し込んだ時に使った魔力糸も意識繋がったままブチ切りされたせいで地味にダメージ残ってるってのに、追撃とか。病人相手でもそろそろ怒るよ。


 呆けてるウォルフの手をぺいっと振りほどき距離を取った。


(大丈夫っぽい。ありがと、送るね)


(ええ。お友達、無事で良かったわね)


 この隙にと、ウォルフの視界から隠れてたリンゼちゃんをこっそりと転移魔法で送り返した。


 帰ったら改めてお礼しないとね。



 ……さて、と。


 未だ混乱の最中にあるウォルフを見る。


 改めて言うことでもないけど、同級生が医者の真似事してるってだいぶ異常だよね。


 しかも許可した覚えもないのに勝手に患者さんにされてるというおまけ付き。

 その恐怖はいかほどか。訴訟されたら負けそう。


 ……結果的に治せたんだし、許してくれたりしないかな。なんか怒ってたし難しいかな。



 ――この状況をどうウォルフに説明したものかと、私は暫し頭を悩ませるのだった。


リアルお医者さんごっこでベッドに連れ込まれるも今回は発情なし。無差別に発情してるわけではないらしい。

……やっぱ、顔かな。


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