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喪神病ってヤバい


 ヒューイさんにみんなを連れて行ってもらい、寝たきりのウォルフと改めて対面した。


 悪意を抜かれたからだろうか。


 怒りも、憎しみも。その表情には窺えない。

 ただ穏やかな顔で眠り続けていた。


 ……本当に眠ってるだけなら良かったのにね。


「それで、どうすればいいの?」


「そうね……。自然な方法を選ぶのなら、今は意識が脆弱になって回復に専念している状態のはずだから、その回復を早めるのが良いんじゃないかしら」


「ふむ」


 なるほど。精神向けの回復魔法が適切と。さすがリンゼちゃんは頼りになるね。



 ――ウォルフの治療をするにあたって、まず最初にしたこと。


 それはリンゼちゃんを呼び出すことだった。


 ヘレナさんと行っている、「誰にでも扱えるアイテムボックス」の研究の過程で遠くの場所と一瞬で行き来ができる魔法はだいぶ試す機会があったからね。安全性は確認済みだ。


 とはいえその利便性以上に危険性を正しく認識しているお母様には「口外禁止」と厳しく言い渡されているし、そうでなくても生活圏の広くない私がわざわざ移動に魔法を使う理由もない。他人に使う理由なんてもっとない。

 そもそも私のトンデモ魔法のことを知っていてそれを頼りにしてくるのなんて、お母様くらいのものだ。


 でもリンゼちゃんなら、私の魔法のことは知ってるし。


 万が一、いや億が一。魔法が失敗して時空の狭間的な空間に閉じ込められちゃったりなんかしちゃっても、リンゼちゃんなら無事に帰ってこれそう。なんてったって女神様だし。


 普通に呼んでも良かったんだけど、急ぎだしね。密室だしね。


 ささっと治す知恵を貸してもらって、ささっと帰せば問題ないよね。


「精神の回復。感情の刺激? 楽しい~とか、嬉しい~って記憶を刺激したらいいのかな? どう?」


「そうね。良いと思うわ」


 お墨付きいただきました。


 なら精神に働き掛ける系の魔法を……え~と、どうするかな。


 よし、決めた。


「『ウォルフ、ミュラーとの結婚が遂に認められたんだって!? おめでとう! ミュラーもとっても喜んでたよ!』」


 言葉に魔力を乗せて直接相手の精神へ。


 ウォルフの意識があれば思わず飛び起きる言葉を選んだつもりだったけど、反応はなかった。


「ダメか」


「当たり前でしょう」


 そうなの?

 何がダメだったんだろう。なかなか良い案だと思ったんだけど。


 聞いてみれば、意識が無いのだから言葉が届かないのは当たり前で、呼び掛けるのではなくもっと直接的に相手の精神と同調する必要があるらしい。


 同調。同調ね。


「ん~……」


 眠るウォルフの額に手を当てて、ゆっくりと深呼吸。意識を深く沈めていく。


 精神……。同調……。と念じながら魔力の糸をそっとウォルフの中に伸ばしていけば、驚くほどすんなりと魔力が通る。本気で無防備な状態だった。


 今はやりやすくて助かるけど、これ怖いな。人に魔力を流してる感じがしない。


 違和感に耐えながらも自由に動けることを利用して、あっちへこっちへと魔力の糸をうにょうにょと動かす。


 意識ともなれば触れれば分かる。寝てても分かる。


 さすがに喪神病の相手に試したことは無いけど、寝てるフェルを相手に試した時にはゴリッゴリの塊の感触があった。コツンと魔力の糸で触った瞬間に悲鳴をあげて飛び起きたんだよね。あれは悪い事をした。


 ……ていうか、んー。


 ないよ? ない。ウォルフの意識が欠けらも無い。こんなにないもんなの?


 魔力視で視た時から違和感はあったけど、ヤバい。


 これ想像以上にヤバい病気だ。


 この状態で放置して魔力が拡散し切ったらそれこそ命に関わるっていうか、ほぼ永眠でしょ。仮死状態なんて生易しいもんじゃ、っと………………んん? 今の、なんか……もしかしてこれかな?


 一回は素通りした感触をもう一度撫で回す。


 ……もにゅっとして柔らかいし、めちゃくちゃ小さい。なんだろ、感触は卵の黄身? みたいな頼りない感じ。

 そこそこの強度はあるけど、やろうと思えば簡単に壊せそうで怖い。


 フェルのとは大きさも硬さもだいぶ違って、とても同じものとは思えない。けど、それっぽいのも他にないし。


 へー、強度はまだしも、大きさも変わるんだ……。へー、へー。


 なんかこれ撫で回してると変な気分になるな。


 人の弱点で、大きさと固さが変わるとか、なんかアレっぽいというか。


 ……うん。


(やだ……ウォルフくんの、ちっちゃい……)


 みたいな。



 ……私の頭もそろそろダメかも知れないね。


エロが止まらない。

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