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ヒューイさんは話がわかる


 友達が倒れている時に別の友達の父親に発情する非常識な女がいるってマジ? そんな人いるわけないよね。


 ……いないよ!



「お前が本気で治療行為を行うつもりなら、止めるつもりは無い」


 何事も無かったかのように、真面目な話が始まった。


 大人な対応でとても助かる。

 ……うっかり好感度が上がったりなどしない。


「結論から言うぞ。状況を聞いた限りだと、あいつは少なくとも五年は起きないと思っていた方がいい」


 ヒューイさんは何人もの喪神病の患者を見てきたらしい。軽度なものであれば見れば分かるのだそうだ。


 そしてウォルフは、軽度ではなかった。


 その見立てを聞いてもあまりショックを受けなかった私は、自分で思ってるよりも薄情な人間なのかもしれない。


 どれだけ重い病気だろうと後で治すつもりだとはいえ、ここまで冷静でいられるとは自分でも意外ではある。


 ……ミュラーが私の分まで動揺してるからってのと、あとはやっぱり、ウォルフとは仲があんまり深くないってのがあるんだろうな。一対一で話すことってほぼなかったし。


 でも、友達だ。友達の大事な人だ。

 捨て置くつもりは無い。


 カイルにも頼まれちゃったしね。


「俺の知ってる限り治療法はない。どれだけ偉いやつだろうが、なったら終わり。目が覚めるのを待つしかない。それが俺の知ってる喪神病だ。それでもお前は、あいつらを助けられるってのか?」


「助けますよ。必ず」


 お母様には申し訳ないけれど、今回は自重するつもりは無い。


 治療法のないはずの病を治すということがどれだけの波紋を広げるかは分からないけれど、治さないという選択肢はない。


 必ず治す。

 これだけは決定事項だ。


 私の覚悟を感じとったのか、ヒューイさんは意外な申し出をしてきた。


「そうか。なら任せる。何か必要なものはあるか? 部屋に二人きりにするだけでいいのか?」


「……必要なものは、ありません、けど」


 あまりにもスムーズに話が進んで気持ちが悪い。


 私の知る大人ってのは、もっと面倒というか、過保護というか。子供に他所の家の子供の治療を任せるなんてことは渋る人種だ。


「ん、どうした。遠慮なく言えよ? こう見えても俺、顔広いから。大体の物は用意できると思うぞ」


「いえ、そうではなく。あの。なんでそんなに協力的なのかなって」


 素直に聞いてみると。


 ヒューイさんはとても楽しそうな笑顔を浮かべた。


「え? ああ成程な。いやなに、簡単なことだよ」


 くっくっ、と無邪気な青年のように……って、くそ。なんかこの人、色気あるんだよな。どうにも変な気分になりやすく困る。


 顔には出さないように平静を整えた。


「そりゃお前がただの娘の友達ってだけなら期待もしねぇけどさ。お前、親父殿を倒しちゃったんだろ? 剣聖なんて呼ばれてるのは伊達じゃないんだぜ? あれを倒せるような非常識なやつ、常識の枠に入れるだけ無駄だろってな」


 どうやらバルお爺ちゃんに勝った一件を知っているらしい。


 ならまあ納得、……できるのか?

 それでも違和感は残るけど、こちらの要望を受けてくれると言うのだから、今はそれでいいことにする。


「なら遠慮なく。ええと――」


 とはいえ、必要な「物」はないんだけどね。


そろそろ非常識って言われるの慣れてきてる。

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