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新しいの、すごいでしょ!


 甲冑を動かしてたのはネムちゃんでした。


「ネムちゃん、私は怒っています」


「ごめんなさい」


 ぺこりんと頭を下げるネムちゃん。


 素直に謝れるのはいいことだよね。

 だが今回ばかりは許さん。


「今回のイタズラは度が過ぎてたと思うの。あんな重さの物が倒れてきたらそれだけでも危ないし、もしかしたらケガをするかもしれなかったでしょう?」


「はい、ごめんなさい……」


 そ、そんなにかわいらしくしょんぼりしたってダメなんだからね!


「ソフィア。そのくらいでいいんじゃない? 幸い誰もケガはしなかったんだし」


「むぅ」


 まぁ、ミュラーがそう言うなら……。


 私の方も腰を抜かしてる姿を見られただけで、粗相をしたことはバレてないはずだし。

 被害が軽微のうちに証拠を完全に隠滅できたから実質何も無かったのと変わらない。というか何も無かった。うん、粗相なんてしなかった。


 何も被害がなかったのならいつまでもネムちゃんに怒ってるのはおかしいことになる。


 仕方ない。許そう。


「ちゃんと反省してね?」


「反省してます!」


 元気いいね。


 私も結構いい性格してる自覚はあるけど、ネムちゃんも中々のものだと思う。


 まあネムちゃんの場合は口だけの私とは違って、いちおう本当に反省はしてるんだろう。ただすぐに反省したことを忘れちゃうだけで。


 怒るだけ無駄って感じよね。羨ましい性格である。


「それで、ネフィリムさん。さっきのは魔法なんですか? あんな、鎧を動かすなんて……」


 ミュラーが動かなくなった甲冑を撫でながら尋ねると、ネムちゃんは目を輝かせて自慢げに話し出した。


「すごいでしょ! あれね、ネムと先生がメリーちゃん真似しようと頑張ってできた新しいのなの! でもでも、ソフィアみたいには上手く動かせなくて……。やっぱりソフィアはすごいね!」


 話さなくていい事まで。


 我が家のぬいぐるみが動いてしゃべるのは秘密なんですけど?


「……メリーちゃん? それにソフィアみたいに、って……」


「メリーちゃんはね、ソフィアの、っイタイ!」


 なおもよく回ろうとする口を、手の甲をつねることで無理やり止めた。


「なにーソフィア。いたいー」


「…………秘密だって言ったのに。もォ~~~」


「あ」


 忘れてた! って顔に書いてあるけど、そう簡単に忘れられると困る。


 まぁ最悪、ミュラーになら知られてもいいけどさ。さっき助けてくれたしね。


 ミュラーは細かいことはわからないまでも話の大筋は理解したらしく「ふーん」と私の方を見た。


 んー、これは。

 呆れ半分、納得半分ってとこかな?


「びっくりしたけど、よく分からないすごいことにはやっぱりソフィアが関わってるのね。つまりこれって、ソフィアのせいってことなの?」


「全然違うよ!?」


 ひどい冤罪を聞いた! なぜその結論に至ったし!


「そもそも私だってびっくりしたんだから! 中身のない甲冑からはなんか変な声が聞こえるし、ネムちゃんの気配も全然感じなかったしで本当にオバケが出たと思ったんだから!」


「そうよね。腰も抜かしてたみたいだしね」


 その時の姿でも思い出したのか、くすくすと笑い出すミュラー。

 恥ずかしいから思い出さないでぇ。


 こーゆー時は、話を変える!


「っていうか私も聞きたい。ネムちゃんどうやって隠れてたの? 魔力の反応とかが一切なかったんだけど」


 そもそもね、あれがオバケの仕業と勘違いしたのは()()()()()()()()()()からなのよ。誰かいたならすぐにその人の仕業かなって疑えたのよ。


 なのにねー。

 まさか魔力系の探知が全部無効化されてるなんて思わないじゃん。いや甲冑が動き出したあとにもちゃんと調べておけばすぐに分かったんだろうけど。


 ぽわんと一発、探知魔法を使うだけでどこに誰がいるのかすぐに分かる便利さに慣れすぎてて、足元をすくわれた形だね。帰ったら改良しなきゃ。


 こうしてまた私の常用魔法がどんどん進化していくんですよねー。便利って素敵。


「ふふん、すごいでしょ!」


 私の質問に、ネムちゃんは胸を張って答えた。


「あれも先生と考えた新しいのなの! あのね、身体の魔力を外の魔力とおんなじにすると魔法が好きなだけ使えるかも? っておはなしだったみたいなんだけど、それはできなかったの。でも外の魔力のまねっこすると気配がしなくなるって言ってたから、かくれんぼにいいかなって!」


 あのおっさんは本当にろくな事をしないな。


 にしても、自身の魔力の質を自然界にある魔力の方に寄せるってのは面白い考え方だな。言わば世界を自分の身体であると意図的に誤認する訳? はー、スケールでっか。


 中々興味深い話だけど、これも帰ってからゆっくり考えよう。


 で、それはそれはいいんだけど。


「かくれんぼ?」


 まあ暗いし物も多いし、かくれんぼ向きの場所ではあるけど。


 泣いてるミュラーが入ってきてとっさに隠れたとかかな?


「うん! ヒューイとかくれんぼしてたの!」


 誰だヒューイって。


アドラス(ネムちゃんの先生兼師匠)としては自身の研究の一環で試しにやらせてみただけで、新魔法として教えたつもりはないし当然使用禁止&口止めもしている。

だがネムちゃんにそんなものは関係ないのだ。

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