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休憩>勉強


 学力。


 それは学生である以上避けられない評価基準。


 別に勉強ができなくたって特別困ることはないけど、親や友達に「頭、悪いんだ?」と言われる屈辱は甘んじて受けることになるだろう。


 そもそもの話。

 勉学というものは、誰にだってできるのだ。


 各分野への興味や適性、記憶力などに差がありはするものの、「知識を蓄える」という行為は人が生まれながらに備えている機能の一つである。


 だから、できないわけがない。


「うう、もうダメ……」


 これは「できない」のではない。「やらない」のだ。


 やりたくないからできないと偽り、駄々をこねているだけなのだ。


 その証拠に、さっきの「もうダメ」は大体三十回目くらいだったと思うけど、その前の「もうダメ」から三つの問題を解かせることに成功している。


 ミュラーの「もうダメ」は結構余裕があると見たね。本気でダメな時は口数が少なくなるタイプじゃないかな。


「はい、おつかれさま。少し休憩しようか」


 とはいえ本人的に頑張ったのは事実だ。


 飴と鞭。

 厳しくするだけではますます勉強が嫌いになってしまう。


 そのギリギリのラインを見極めつつ、言葉巧みに勉強させるのが良い教師じゃないかと思うね。


 ちゃんと理解してくれると嬉しいし、ミュラーを教えるの楽しくなってきたかも。妙な達成感があるわこれ。


 休憩を宣言した瞬間でろーんと机に伸びたミュラーを見て、思わず笑みが零れた。


「する……。休憩……、ずっとする……」


 ずっとはさせない。私が次の教育方針を定めるまでだ。


 私たちのやり取りに気を取られたのか、真面目に勉強に勤しんでいたカイルがふと顔を上げてミュラーの方を見た。


 よほど集中していたのだろう、未だ真剣さを残したその表情は私から見てもドキリとするくらいだが、残念ながら視線の先にいるのは力尽きたミュラー。


 悲しいかな。イケメン度五割増状態のカイルの瞳に映し出される光景は、机に両手を投げ出して「もう勉強したくない」と全身で表現するだらしのないミュラーの姿なのだ。


 私の予想通り、そんな女の子としてちょっとはしたないミュラーの姿を認識した瞬間にカイルの表情は一瞬で呆れ顔に変わった。


 私は今、人が失望する瞬間を見たのかもしれない。


「……ミュラーずっと休んでねぇ?」


 あ、気付いちゃいました?


 そうよねー気付いちゃうよねー。だって勉強してる時間より休んでる時間の方が長いんだもんね。


「ミュラーさ、真面目にやってるか? 特別クラスのトップスリー……あーっと、優秀なヤツが直接教えてくれてるんだから、ちゃんと勉強しようぜ。ウォルフと一緒に出来ないのは不満だろうけど、こんな機会めったにないんだからさ」


 同じ勉強を教わる側としてなにか思うところでもあったのか、カイルが割と辛辣だ。


「そんなこと考えてないわよ……ちゃんと真面目にやってるし……」


 対するミュラーも口では否定しているものの、思い当たる節があるのかぷいと顔を逸らしている。


 私がいくら同じことを伝えても柳に風状態で全然気にとめてもくれなかったのに、カイルの言葉はちゃんとミュラーの心に届いているように感じる。やるじゃんカイル。


 ミュラーも案外打たれ強いみたいだし、この際もっと言ってやって。ほどほどにズタボロに言ってあげて!


 この子に足りないのは危機感なんだよ!!


「そういうカイルはどうなのよ」


 ……ほら、聞いた? あんなこと言っちゃうんだよ?


 本当に危機感ないよね。


 カイルさん、ミュラーが今どれだけ危機的状況なのか、いっちょ教えてやってくださいよ!


女の子には強く出れない(つもり)のソフィアさん。

嫌な役目は人に押し付けるの巻。

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