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女の子に弱いお爺ちゃん


「あれ、ネムちゃんとカレンは?」


 ミュラーが「みんな来た」って言ってたのに人数が少ないことに気付いた。それも成績優秀な二人が。


 最悪一人でも三人くらいなら見れるだろうけど、教師側が多いとその分一人一人に丁寧に教える時間が取れる。多い方が良い。


「ああ、あの二人なら……ええと」


 ミュラーの視線を追えば……ああ、いた。


 二人してミュラーのお爺ちゃんと……あれはなんだろう。おしゃべり? してたみたいだ。


「お爺様ったら……」


 バルお爺ちゃん、若い娘に囲まれてデレデレですやん……。


 というか、なんだか傍目にも楽しいことになってる。どういう状況なんだろうあれ。


 とりあえず聞き耳立てるよね。


「やはり筋肉も大事なんですね……。ミュラーさんも、しなやかな筋肉をお持ちですものね」


「おおー、これが聖剣……」


 ある意味予想通りというか、なんというか。


 カレンちゃんはまだ分かる。

 言葉の聞こえないこの距離からだと腕を撫でる動きが色っぽく見えちゃってたけど、筋肉を触ってるんだろうなってのは分かってたし。なんなら私も意外と逞しいバル爺ちゃんの腕にちょっと興味でてきたくらいだし。


 でもカレンちゃんが触ってるその腕にぶら下がってるネムちゃんはなんなの。


 お猿さんのようにぷらーんと……しかも意外と大人しいし。


 どんな会話の流れがあればあんな状況が生まれるのか。謎すぎる。


「我が愛剣バルハザード。数多の魔物を葬ってきた相棒よ」


 お爺ちゃんは剣自慢か。


 やっぱり数多の魔物とか葬っちゃうんだね。

 騎士団はわざわざ魔物の領域まで遠征して討伐してくるらしいけど、お爺ちゃんほどの腕前があれば一騎当千の活躍とかしたんだろうな。


 というかネムちゃんよ。

 剣ばっか見てないでお爺ちゃんの話も聞いたげて?


 愛剣に夢中な姿を見てお爺ちゃんも満更じゃなさそうだけど、それにしたってめっちゃ聞いてほしそうなオーラ出してるからさ。


 あとそのポーズは淑女としてちょっと。他の門下生っぽい人達の視線がね。


「ほら、二人とも。お爺様の邪魔をしたらダメじゃないの」


 見かねたミュラーが口を挟みに行ったので、私もなんとなく着いてった。


「なぁに構わんさ、今はちょうど休憩中でな。おお、ソフィアもこの剣に興味があるのか? 我が家の宝であるこの聖剣バルハザードは……」


「その話はまたの機会に。お爺様」


 ミュラーのすげない返事に「……そうか?」なんて残念そうにしちゃうバルお爺ちゃん。


 覇気とか全然ないの。


 剣聖恐るるに足らず。

 もうただのお話好きなお爺ちゃんにしか見えない。


 二人は私らが来るまでの短い間にどうやってこの元気なお爺ちゃんの牙を抜いたんだろうか。


 ミュラーたちが来るまでは鬼の形相で「なっとらんッ!!」なんて激飛ばしながらビシバシ教官してた人がただの好々爺になっちゃってるじゃん。


「あ、そうだった。勉強会するんだったー」


「あの、お邪魔をしてしまって申し訳ありませんでした。もし剣聖様さえ宜しければ、また色々と教えて頂けましたら幸いです」


 じゃーねーと軽い挨拶で済ますネムちゃんと頭を深々と下げたカレンちゃんの対比がすごい。


 ネムちゃんなんかかなり失礼な気がするんだけど、バルお爺ちゃんに気にした様子はない。ネムちゃんの人心掌握術すごいな。


「うむ。前途ある若者を導くは老骨の務め! カレン・ヴァレリーよ。お主には既に心構えが出来ているようだ。足りぬ技量を鍛えたくばいつでも儂を頼るといい」


「ありがとうございます!」


 うわぁ。カレンちゃんが見たことないくらいキラキラしてる。


 やっぱ剣聖ってのは武に関わる人にとっては特別な存在なのかねー。私にゃわからん。


 ってヤバ。

 カレンちゃんにデレデレしてたお爺ちゃんがいつの間にかこっち見てんじゃん。


「ソフィア・メルクリス! お主も――」


「それではお兄様! 私が見ていなくても頑張って下さいね~!」


 休憩中って言ってたもんね! と遠慮なしの大声で呼べば、お兄様が笑顔で手を振り返してくれた。キャー! お兄様は休憩中ですら素敵ですぅ!


「……ソフィアって本当にお兄さんのことが好きよね」


「当然!」


 愛してますので!! ライクでありラブでもあるので!


 私の声を区切りと見たのか、カイルたちもこちらに寄って来た。


「いいから行こーぜ。勉強する時間減っちまうよ」


「あ、ごめんなさい……」


「え? あ、いやカレンに言ったんじゃなく、ソフィアにだな」


「カレン、気にしなくていいよ。ちょっとカイル。女の子にはもっと優しくしなさいよね」


「いやだからお前に……、はぁ。悪かったよ、カレン」


「……カイルも大変なんだな」


「はーやーくーいこー! あんまり遅いと先に……あれ? どっちからきたんだっけ?」


「ネフィリムさん! そちらは更衣用の――」



 わーわーぎゃいぎゃいと、賑わいを増しながら。


 今日も楽しい一日になりそうだった。


失礼だろうと迷惑だろうと邪魔をしようと。

かわいい子なら、許される!!……たぶん!

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