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痴女じゃないよ!


 朝起きても、胸の痛みは続いていた。


「痛い」


「キュイ?」


 思わず呟けば、エッテが心配そうに見つめてきた。


「我慢出来る程度にはなったから大丈夫だよ。何回もありがとね」


「キュイ~」


 実際、昨夜はエッテにだいぶお世話になってしまった。


 治した先からすぐに新しい痛みが生まれるせいで眠りにつくのもだいぶ遅れちゃったし、睡眠時間も削られた。

 朝からこんなに不機嫌なのは寝不足なせいもあると思う。


 だが、そんなことより。


 今も地味ーな痛みを伝えてくる胸を押さえながら、時が来るのを待つ。


 魔力を耳に集中させれば、この部屋に向かってくる規則正しい足音が待ち人のものだと分かる。


 軽い足音。


 成人のものではありえないその音が近づくのを、今や遅しと待ち構え。


「ソフィア様。おはようございます」


「おはようございます!」


 来たか! 待ってましたよリンゼちゃん!


 思わず立ち上がった私を完全にスルーしたリンゼちゃんは、いつも通りの深い礼。その後扉をしっかりと閉めて、改めて私に向き直った。


「それで、どうしたの?」


「よくぞ聞いてくれました!」


 さすがリンゼちゃんは話が早い!


 早速とばかりに服の裾を捲り上げ、リンゼちゃんの前に滑らかな白い肌を晒した。


「見て!」


「……言われるまでもなく、良く見えているわよ」


 捲り上げた服のせいで顔が見えないけど、なんだか呆れられている気がする。


「気付かない?」


「いつもにも増してあなたがおかしいことにはすぐに気付いたけれど」


 も~、そーゆーのじゃなくて~。


「ほら、もっとよく見て!」


 ぐいっとお腹を突き出した。


 リンゼちゃんの目の前には今、私の裸身が広がっているはずだ。


「……ああ、そういうこと」


「分かった!? 分かっちゃうよね!」


 だよねーだよねー! やっぱり一目で分かっちゃうよねー!


「開き直って痴女になることにしたのね」


「違うぅぅぅう!!」


 なんでそーなるの!


 痴女とかそーゆー悩みは昨日だけでお腹いっぱい! もう忘却の彼方にポイしました!


 ……でも改めて自分の姿を想像すると、たしかに淑女としての慎みには欠けてたかもしれないね。ちょっと反省。


 持ち上げていた服の裾を離すと、なぜか扉に手をかけたリンゼちゃんの姿が目に入った。


「あれ、なにか忘れ物?」


「ソフィアの頭がおかしくなったとアイリス様に報告しないと……」


「やめて」


 おかしくなってないよ。


 とりあえずリンゼちゃんの逃亡は阻止しといた。


 でも、まあ、うん。

 テンションが高かったのは認めよう。


 てかしょうがないじゃん。長年の夢が叶うかもしれないと分かればテンションも上がるってものさ。


「もー、しょうがないなー。にぶちんなリンゼちゃんにも分かるように教えてあげるよ」


「いえ結構よ」


「まま、そう言わずに」


 何故か距離を取ろうとするリンゼちゃんの手を捕まえて、そのまま私の胸に触らせた。


「ほら。どう?」


「……なにが?」


 もー、リンゼちゃんったら焦らすのが上手なんだからー!


「上からだと分かりにくいかな? もっとこう、揉んだりとかすると分かりやすいんだけど」


 ほらほら、とリンゼちゃんの手を使って胸を揉ませる。


 まあまだ揉む程はないんだけど!


「……」


 なすがままに揉み続けるリンゼちゃん、


 ……なんかいつもより目が冷ややかな気がするんだけど。気のせいだよね?


「どう? 分かった?」


「…………この子を聖女にしたの、早まったかしら……」


 なんか小声で言ってるけど、どうやらまだ欲しい反応はくれないみたいだ。


 焦らしプレイもそろそろ飽きてきたんだけど。


「もー! 意地悪しないでー。本当は気づいてるんでしょ? あっ、それとも、もしかして羨ましいとか? 大丈夫! リンゼちゃんもこれからだからね!」


「……私は断じて、痴女になんてなるつもりはないわ。あなた一人でやっていなさい」


 ……んー、これはもしかして、本当に気付いてない?


 だとすると今の私って、メイドさんに性的サービスを強要してる変態お貴族様みたいに見えてたりするのかな?


「私は痴女じゃないよ?」


「あらそう。最近の淑女は無理やり自分の胸を揉ませるの。なら後でアイリス様にも同じことをさせたらいいんじゃないかしら」


「怖いこと言うのやめてー」


 気付いてないね。これは気付いてませんわ。


 あーあーショックだなー。

 リンゼちゃんならこの喜びを分かち合えると思ったんだけどなー。


「本当に分からないの?」


「さっきからなに? 何に気付いて欲しいの?」


 本気でわからない様子のリンゼちゃんに、正解を教えてあげることにした。


「胸。膨らんでるでしょ?」


「え?」


 お、リンゼちゃんが呆気に取られておる。わーいレア顔~。


 リンゼちゃんはゆっくりと、自分の手が置かれている場所を見て、私の顔を見て、もう一度胸に目をやって。


「気の所為じゃない?」


「気のせいじゃないわー!」


 なんてことを言うんだ! ホントに気のせいだったらどうしてくれる!!


 人の希望を一言で砕こうなんて、リンゼちゃんは恐ろしい子だよ!


貧乳にコンプレックスでもあったんですかね。

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