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素敵な担任


「そろそろダンスの練習しなきゃなぁー」


「あー、私も本命の相手がほしいー」


「例の彼とはその後どうなの?」


 今日もグダグダとクラスの女子たちとだべっていたら、ちょいちょいと肩をつつかれた。


「ソフィア、呼ばれてるよ」


「うん? ありがと」


 このパターンは新しい。一体誰だろうと入口の方を見て、軽く目を見開いた。


 なんとも珍しい人に呼び出されたようだ。




 教室から徒歩三秒。


 人目もあり、かつ話ができないほどの騒がしさではない。そんな廊下に待ち人の姿はあった。


「来たか」


 立ってるだけで女生徒の目を引く、我が特別クラスの担当教師。


 リチャード先生である。


「呼び立てて悪いな」


「いえ。それより、どのような御用件でしょうか」


 この先生、はっきり言ってめちゃくちゃいい先生である。


 もちろん私にとって都合が良いという意味で。


 初めて見た時はとても厳しい人かと思ってびくびくしてたけど、リチャード先生って話してみるとすごくドライで付き合いやすいんだよね。


 授業とかでも質問にはすごく丁寧に答えてくれるし、教え方も上手。


 普段から「うるさい。話しかけるな」とか言いそうな顔してるくせに、授業へついていけてない生徒は黙っていてもきちんと認識していて、授業後に「ちゃんとその時に質問しろ。他の生徒への説明にもなる。躊躇(ためら)う必要は無い」なんてフォローまでこなしちゃうまさにイケメェン。

 そのギャップに恋に落とされた女子は数知れずという話も頷ける。


 真面目な子には優しい反面、やる気のない生徒への関心は限りなく低くて、いっそ清々しいレベル。


 直近ではとある女子が一番前の中央席。まあ端的に言えば「先生の顔が一番近くで見える席」に陣取って、授業時間中ずーーーっと先生を見てたりもしたけど、先生はその子に一瞥もくれなかった。注意もしない。まあいつもの光景ではあるんだけど。


 つまりはやる気のある者には手助けをするが、やる気のない者を奮起させようとはしない人なのだ。


 女子が口を揃えて「超イケメン!」って言うほど顔面偏差値が格別優れているとは私には思えないけど、口うるさくない大人はそれだけで素敵だとは思う。


 まあそんなリチャード先生だから、私との関係は良くもなく悪くもなく。健全な教師と生徒の間柄である。


 どこかの異世界の教師みたく「暇そうだな、この教材を運ばせてやろう」とか言わない良い先生なのだ。


 だからこうして呼び止められるのはとても珍しい。初めての経験じゃなかろうか。


「そう固くなるな。すぐに済む」


 お、笑った? なんかそんな気がしたけど、んー。気のせいかも。


 お母様の無表情なら読めるんだけど、リチャード先生とはあんまり話さないからなぁ。読めん。


「カレン・ヴァレリーの件だ。先程本人から問題は解決したとの報告を受けた」


 あ、その件ね。


 そういえばカレンちゃんが体質云々は、カレンちゃんが特別クラスをやめるってところから始まった話だったもんね。


 で、私に声をかけるってことは。


「その際、メルクリスの貢献の話も聞いてな。私からも感謝を伝えさせてもらいたい。ありがとう、メルクリス」


「どういたしまして」


 先生ったら真面目だねーわざわざそんなこと伝えに来るなんて。


 いいってことよ! と心の中で親指を立てた。

 現実? 清楚な笑みを浮かべてますよ、淑女ですから。


「用件はそれだけだ。邪魔をしたな。…………ただ、悩みが解決したあとは足元が留守になりやすい。良ければ、気にしてやってくれ」


「はい。気遣って下さりありがとうございます」


 本当にすぐ済んだ。だからリチャード先生好きだよ。


 っていうか意外だね。リチャード先生は去るもの追わずなイメージだったんだけど、カレンちゃんはやたらと気にかけてる様に見える。


 カレンちゃんは学年一の秀才だし、やめようとしたのだって病気が原因みたいなものだし、そこら辺が理由かな。

 まさか孤高のリチャード先生が一生徒に惚れてえこひいきなんてしないだろうし。


 ……あるわけないな。

 やばい、私もクラスの恋愛話に毒されてきたかも。


リチャード先生のストーカーちゃんも、他の先生の授業では真面目な子なんだけどね……。

愛は盲目ってやつかな。

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