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ロリコンは嫌です


 さて、問題です。

 私は何をしたのでしょーか?


「貴女が呼ばれた理由が分かりますか?」


「わかりません」


 ここはお母様の執務室。通称、研究室。


 今日も今日とて身に覚えのないことで呼び出しを受けた私は、しかし大分ご機嫌だった。


 左手をぎゅっと握る。

 すると、お兄様がぎゅっと握り返してくれる。


 右手を右肩に持っていけばフェルが。左肩に持っていけばエッテがじゃれついてくる。


 お兄様はともかく、この子らの同伴を認めてくれる時点でお叱りでないことは確信している。


 ならもうお母様の話なんてどうでもいい。

 私はお兄様の手の感触とお兄様の反応を堪能するだけだ。えへへーにぎにぎ。うぇへへへ。


「先日、貴女達が学院にいる間に、ヴァレリー家当主が単身で乗り込んできましたね。内容はソフィアへの感謝ということで」


「そうですね」


 にぎにぎしてた手をもぞもぞと動かして、こっそり恋人繋ぎにしてみた。


 やーん、これやばーい。照れるぅー。

 なんか身体が火照ってきた。心臓の鼓動がゆっくりと大きくなっていくのを感じる。ふおーー!


「そして本日。今度は騎士の息子を連れて、また前触れなくやって来ました。要件はソフィアへの求婚だそうです」


「そうなんですねー」


 どうしようこれ、密着感がすごい。

 もしかして恋人繋ぎってかなりえっちなことなのでは? これだけくっつくなんて、これもうキスとかと同じくらいすごいことなのでは!? つまりキス同然。お兄様と、キス! 同然!!


「……ロランド」


「ソフィア、ほら。ちゃんと話を聞こうね」


「ああん」


 はっ! 私は何を……。

 いけないいけない、お兄様との触れ合いが幸せすぎて我を忘れるところだった。


 あーん、でも手は繋いだままでもいいんじゃ……話聞くだけだし……ダメかな? ちらっ? 妹のかわいーい上目遣いでちらちらっ?


「ソフィア。問題がないのでしたら私の方で今回の話を受けておきましょうか。相手の男性はとても評判の良い方みたいですよ。年齢は貴女の倍はありますが」


「ごめんなさい嫌です」


 ロリコンは嫌なのー! 年上よりかは年下が趣味なのー! もちろん至高はお兄様だけどね!!


「そうですか。私としてもソフィアが望まぬ形での婚姻はできるだけさせたくないと思っています」


 うん知ってるー。

 なんせお母様が恋愛結婚した人だもんねー? 恋とか愛とかだーいすきな人だもんねー♪


「故に聞きます。今、気になっている相手はいるのですか?」


 なーんだ恋バナかよー恋バナがしたかったのかよーぅ。


 それならそうと言ってくれれば、子供特有の初々しいのから子供に似合わぬどぎついの……はちょっと口にするのは恥ずかしいけど、現役学院生の赤裸々な恋愛事情を色々とお教えしちゃいますよー?

 教師編も楽しそうなネタがちょこちょこありますし!


 でも私の話はノーセンキュー。


 強いて言うなら、お兄様みたいに優しくて気が利いて格好良くて落ち着いていて冷静で頼りがいがあっていつも私のことを気にかけてくれていてそれでいて適度な距離で接してくれて困った時にはすぐに駆けつけてたちまち問題を解決してくれちゃうような血の繋がっていない人がいたら、ちょっとは気になるかもしれないけど。そんな人いないからなぁ。


「気になってる人はいないです」


 って答えになるよね、自然と。

 お兄様との禁断の愛……って響きにも惹かれるけど、リスクとかも考えるとねぇ。私から分離した同一個体とも言える先生さんがお兄様と結婚するってことで意外と満足できちゃってるし。


「結婚をしたいとは思っていないのですか?」


 結婚ねぇ。

 そもそもこの歳で結婚とか早すぎるでしょってのもあるけど、女の子って基本的に、結婚したら相手の家に入るんでしょ?


 そしたらお兄様と離れ離れになっちゃうじゃんね。そんなの嫌に決まってる。


「思ってないです」


 私はこの家が気に入ってるからねー。

 使用人のみんなとも仲良しだし、リンゼちゃんもいるし。

 お父様にチヤホヤされて、お母様と魔法の研究やおしゃべりして、お兄様とイチャラブする生活。こんなの最高でしょ。


「そうですか」


 私の返事を聞いたお母様は、何故かお兄様の方を見て頷いた。それにお兄様も頷いて返す。

 え、なにそれお母様ズルい。私もお兄様とアイコンタクトしたい。


 ……って、あれ?

 今気付いたけど、左肩に乗ってたエッテがいつの間にかいなくなってる。服の中にもいない。


 フェルはいるのに。どこ行ったんだろ。


「ですが貴女は貴族家の一員。結婚は、いつかはしなければならないことです」


 あ、なんか嫌な流れ。そーゆーの聞きたくない。ってかヘレナさんだって結婚してないじゃんー! そっち先に相手見つけてあげればいいのに!


「……本来であれば」


 お? あれ?


 これって、もしかして?


「一生結婚する必要が無い。もしもそんな立場があるのだとしたら――」


 コンコン、と軽い音。


 部屋の扉から、ノックの音が響いていた。


「――ソフィアはその道を選びますか?」

  

ヘレナさんはほら、結婚しないんじゃなくてできないだけっていうか、お見合いはしてるんだけど運がないというか……。


……そのうちいいことあるよ。きっと。

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